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7.支部長の思惑

いつもタイトルに悩みます。

本文より悩むかもしれない。とりあえず捻らないタイトルに。

奇特な読者様がいらっしゃったらタイトル募集です。

 その部屋は三階最奥にあった。エルフの受付嬢マルファさんに連れられ部屋の前までやってくる。

 支部長に魔道具で連絡したところ支部長室へ来るように言われ、連行されたというわけだ。

 いや、別にしょっぴかれた訳では無いので「連行」とは言えないのだが、気分は連行である。

 ……エルフの美女に連行……いいかもしんない。


「支部長、先程御報告したコーキ様をお連れしました。」


 アホなことを考えていたら、マルファさんがノックして声をかけていた。イカンイカン真面目にどう誤魔化すか考えないと。


「入れ。」


 あり?爺の声を想定していたのだが。中から聞こえてきたのは張りのある女性の声だった。


 マルファさんに促されて部屋に入ると、扉を閉めたマルファさんは一礼すると去っていった。


 書棚にどっしりとして木目が美しい執務机、向かい合わせに並んだソファと間に小さなテーブル。いずれも落ち着いたダークブラウンにまとめられており、持ち主の人柄を窺わせた。…が、無駄に趣味だけはいいクソ社長の部屋を思いだして考えを改める。


「それで、コーキ君だったね。何故ここに呼ばれたか判るかね?」


 執務机について話しかけてきた女性は想定していた爺とは対極の存在だった。

 アップにまとめられた漆黒の髪は艶めいており、白磁のような肌はきめ細かく、パライバトルマリンのようなネオンブルーの瞳には吸い寄せられるような輝きがある。やや硬質な美は圧倒的で、ファンタジーらしく吟遊詩人でも居たら、一晩中でも彼女の事を歌うだろう。


「コーキ君?聞いているかね?」


 苦笑と共に再度声をかけられた。


「すみません、見とれていました。」


 こちらも苦笑と共に返す。


「何故呼ばれたか、でしたね。一言でいって不審人物だからでしょう。魔人で、異常な魔力を持った新人。」


「面白いな、君は。取り繕おうとは思わないのかね?」


 笑みを滲ませつつ返される。


「無い頭を捻って誤魔化すことを考えましたが、困ったことにサッパリ思いつきません。ましてや交渉に使えるようなカードも無い。そういう時は人を見て真正面から当たる事にしているんですよ。」


「ふむ、では信頼に応えてこちらも婉曲な物言いは止めるとしよう。まず魔人だ。君は魔族なのか?」


「すみません。そもそもの話、魔族の定義から私にはわかりません。つい一昨日まで私は魔法も魔物も存在しない場所で暮らしていて、もちろん私自身も魔法なんて使えませんでした。


…ここまで、信じられますか?誓って嘘は言っていません。」


「続けてくれ。」


 ん?こちらを真っ直ぐ見る支部長さんの瞳の色が少し深くなっているような。


「恐らくはこことは異なる世界からこの世界に落ちてきたのだと思います。何故魔法が使えたのかは解りませんが、この世界に来たときから使えていました。


また、先程言ったように、元の世界には魔族と呼ばれる存在は御伽噺や空想上の存在とされており、私もごく平凡な人間です。いえ、少なくともここに来るまではごく平凡な人間でした。


推測ですが、異世界転移、黒神の加護あたりが影響しているのではないでしょうか。


支部長さんがこちらに私を呼んだのは何かしら、私がギルド、街ないし国に悪影響を及ぼす存在かどうかの見極めをできる手段をお持ちなのでは?


例えば、固有スキルのようなものをお持ちとか。


もちろん、私はギルドや国家が私を害しない限り敵対するつもりは毛頭ありません。小心者ですから。」


 若干ハッタリ混じりではあるが…大外しは無いだろう。


「フッ、実に面白い。最後の小心者以外は全て本心か。君の推測通り、私には真実の瞳という固有スキルがある。私には偽りを見通し真実が見える、ということになっているね(・・・・・・)。


突拍子も無い話だが、君が嘘を言っていないのは分かった。


まあそれほど真剣に警戒していたわけでは無いのだがね。何しろ私の固有スキルは、今となっては近隣の人間は大抵知っているからね。


のこのこ真正面から潜入するような馬鹿な魔族は居ない。


ただ、魔人族というのは初めて耳にするし、君の為人(ひととなり)を直接確認しようと思ってね。


知力と魔力を除けば街の商人にも劣るが、その二つ、とりわけ魔力が規格外にも程がある。


まあ私は目的を達したし、傭兵ギルドは君を歓迎しよう。心配せずともギルド職員は誓約に縛られているし、私も漏らすつもりも無い。安心して傭兵の仕事に励んでくれたまえ。」


 そう言いながらニヤリと笑う。美形はどんな表情も似合うなー。眼福、眼福。


「ありがとうございます。一つだけ聞いてもいいでしょうか?」


「構わんよ。」


「魔族とはなんですか?先程説明した通り私には常識がありません。」


「新人講習は受けるのだろう?そこでも説明されるはずだが、まあ一言でいうなら敵だ。


魔族にも様々な種族がいることは判っているが、目的もどれくらいの数がいるのか組織的な行動をとっているのかも判らん。例外なく強力な魔法を使うことから黒神と契約しているのだろうが、そもそも黒神自体、謎の多い神でな。あぁ、そこも君がここに連れて来られた理由でもある。


判っていることは少ない。

大陸北方に多く存在していること。

人には襲いかかってくること。

言葉が通じないこと。

身体能力、魔法ともに強力であること。

おおよそ20年に1度大侵攻があること。

魔物ではない。


こんなところか。

後は新人講習で聞くと良い。


マルファに話を通しておくから、常識でもなんでも困ったときには相談するといい。」


「ありがとうございます。一つと言っておきながら申し訳ありませんが、何故そこまで気にかけてくれるんですか?」


 支部とはいえ、組織の長が善意だけで動くなんてありえない。もしそんな奴がいたら、その組織は駄目だ。短期的には良いかもしれんが、長期的には確実に潰れる。この人はそんな風には見えない。


「なんだそんなことか。簡単なことだよ。前回の大侵攻は18年前。もういつ大侵攻が起きてもおかしくない。戦力になりそうなものはキッチリ戦力に仕上げる。当然だな。」


 そんな気はしてたけど、お気楽極楽な傭兵ライフで美人の奥さんゲットみたいな流れが良かったよ!


「ハハハ、マジですか…」


 俺は乾いた笑いをあげるしかなかった。

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