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5.独習、豚鬼討伐

2013/4/3 最後の台詞が不自然だったので修正。ストーリーの変更は無し。

 街道を西に向かって、馬をひいて歩くこと3時間。だらだら歩いているので、キエフまではあと2時間程かかるだろう。

 もちろん庶民オブ庶民の俺が馬になんか乗れる訳がない。当座の生活資金とするために貰ってきたものだった。

 アンテさんに聞いた所、度量衡はメートル、グラム、リットルに近いようだった。キエフまで15リグと言っていたが、おおよそ15km位っぽい。

 夜明けからさほど経たずに出発したから、昼前にはキエフの傭兵ギルドへ行けるだろう。

 歩きながら、ギルドのこと、「魔術」のことを考える。


 ギルドといえば、なんと!ステータスを見る魔道具があるらしい。結果をギルドカードに転写でき、ギルド評価ではなく個人のレベルや能力値、スキルを見ることができるようだ。定番展開に胸熱だなー。早く見てー。

 ま、どうせ体力、腕力なんかの身体系はへぼいんだろうけどなー。


 うぐぅ…。


 いやいや大丈夫!俺には魔力チートがある!


 とは言っても、こちらも過信する訳にはいかないんだよなー。

 「魔術」の強さは魔力量にはあまり関係無く、術のレベルに依存するらしい。よりレベルの高い「魔術」を使うには神々と契約を交わす必要がある。契約は本人のレベルと祈りが最低限の条件で、神によっては「魔術」レベルによっては試練をクリアしなければならない。

 俺が使っていたのはどうも「魔術」とは違うらしく、この世界の「魔術」は決まった神と契約して魔力を糧に発現する奇跡で詠唱なんかも決まっている。

 俺が使ったのは奇しくも叫んだ通り「魔法」ということになる。「魔法」は「魔術」とは異なり、決まった詠唱が無く、消費魔力量に対して発現する効果も小さいが、発現する内容は術者の想像力次第となる。

 契約神は黒神。滅多に呼びかけに応えることがなく、契約して魔法使いとなるものがほとんどいない。だからといって他の魔術士より強いかというとそうでも無いのだが。

 とりあえず尽きる様子を全く見せない魔力量があっても、現時点の俺はそれほど強い魔法は使えない。魔力量が海のようにあってもその水を使うのに洗面器しか使えないようなもので、小規模な事象を継続する分には常識外れの魔法になるが、大規模な事象を起こす事は出来ない。

 初日に作った小屋も小さな資材をJava魔法で大量に作ってから接合しただけだからな。


 そんなことをぼんやりと考えながら歩いていると、不意に馬が騒ぎだす。

 もしやと思い森の方を見ると、豚鬼が出てくるところだった。

 俺より頭ひとつ分位でかい体躯に、豚面が乗っかっており、まさによくあるオークだ。腰布をつけたのみで手には馬鹿でかい棍棒を持っている。あんなので殴られたら間違いなく死ぬね。

 1匹ならともかく5匹とかゲームだったら間違いなくメーカーにクレーム殺到だよ…。


「予想していた(・・・・)とはいえ、マジかよー。初魔物戦はもうちょっとぬるい相手が良かったなぁ…」


 と、豚鬼の集団の中でも後ろにいた一匹がブグォオオオオオオッと雄叫びをあげ、それと共に一斉に20m程の距離を詰めるため駆け出す。


 鞍袋の中身をぶちまけ、詠唱を開始する。


「風よ、風よ、巻き上がれ、渦巻け、取り囲め、我が敵を取り囲め、風の檻!」


 ぶちまけられた粉末(・・)を巻き込み、風が走りくる豚鬼達を結界のように包み込んで視界を奪う。目をやられた者もいたようで怒ったように唸り声も聞こえてくる。そして狙い通りに一旦豚鬼達の足が止まる。


「炎よ!疾く(とく)彼の者を貫け!炎の、矢ぁ!!!」


 気持ちよく叫んだ後、即座に後ろを向いて地面に体を投げ出して伏せる。


 ドゴォン!という轟音と共に凄まじい爆発が起こり、豚鬼達を薙ぎ倒す。


「風よ、その身に纏いし衣を最も濃い一色にし、彼の者らを包み込め、死の風檻!」


 倒れながらも生きている豚鬼達に酸欠結界の魔法をかけて待つこと30秒。5匹仲良くお亡くなりになった。

 …若干焼き肉っぽい匂いがした。


「ええと、討伐証明部位は耳だっけか。あ!しまった…こんなことならアンテさんに一本でいいからナイフ貰っておけば良かった…。うぐぅ…。」


 結局、これまた魔法を使って切り落として鞍袋のポケットに突っ込む。


「教えてもらった通り、名前をつけた方が確かに魔法の効果が強い気がするな。それになんといっても気持ちいい!ただ思ったよりもというか想定通りというか、人型の生き物を殺しても忌避感が無いな。」


 いつからだろう、どうでもいい人間が石ころのように思えてきたのは。石ころに何を言われようがどうでもいい。石ころがどうなろうとどうでもいい。石ころによって感情が動くことはなくなった。

 今も自分が命を奪ったのに嫌悪も興奮も全く湧かない。


「それよりもだ!また逃げた馬探さないと…。しかし粉塵爆発の威力は素晴らしいな。とは言っても、資材の準備が面倒だからなぁ。気軽には使えないのはマイナスではあるよな。」


 魔法で大規模な事象を引き起こせないなら、純粋な物理現象の補助に魔法を使えばいいじゃない、ということで準備をしておいたのだ。具体的にいうと、そこらの木を切って適当な大きさまで細切れにし、乾燥させて粉末状にした。

 見ていたアンテさん達には当然呆れられた。こんな魔法の使い方をする奴はいないとか。知らんがな。

 ぶつぶつとぼやきながら、逃げた馬の蹄跡を辿って歩きはじめた。

まだ街に着かない…。

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