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3.野盗に聞く異世界入門

半ば説明回。中途半端です。


5/3 黄玉騎士団のところの文章がおかしかったので修正。

 テンプレって本当にあるものだなあ…。


◆◆◆◆◆


 布団を作らなかった事を背中や腰の痛みと共に悔やみながら、今日の行動について思いを巡らせていると、微かに悲鳴と怒号、馬?のような音が聞こえてくる。

 異世界に来て初めての人間遭遇を期待して、慌てて小屋から外に出る。

 音はどんどんと近付いており、石畳の街道に砂埃と音の発生源が姿を見せる。


「追われる荷馬車、馬に乗った野盗か。想定通りというか…

テンプレって本当にあるものだなあ…


おっと、呑気に感慨に浸ってたら、野盗が追いついちまう!」


 こちらまでおよそ30mというところで、どうやって凶行を防ぐか考えをまとめる。勝算はある。自分の命をベットして割に合わない勝負をするつもりは無い。


 街道脇でタイミングを計りながら深く呼吸をして集中する。

 荷馬車が駆け抜けた瞬間、追いすがる四頭の馬の進行方向、50cmを目標に魔法を発動する。


「土の属、見えざる障壁、彼の者らの行く手を塞げ!」


 バリン!という音と共に、魔法によって作られた「障壁」が砕け散り、無防備に障壁に突っ込んだ野盗?の4人が4人とも落馬する。

 主を失って混乱しながらも、そのまま駆け抜ける馬達。


「風よ、その身に纏いし衣を最も濃い一色にし、彼の者らを包み込め!」


 呻いていた野盗を窒素100パーセントの空気が包み込み、クタクタと崩れ落ちるのを見て、フウと一息吐き出してから、改めて状況を確認する。


 胸当てや肩当てなど統一感もない、恐らく革製の防具を着けた、無精髭の薄汚れた男が4人昏倒している。手には先程まで片手槍を持っていたようだが、衝撃で手放したため、少し先に落ちていた。

 馬達はようやく落ち着いたようで、100m程先で街道脇の草を食んでいた。

 荷馬車の人は…気がついていないのか必死だったのか、そのまま去ってしまったようだ。


「美女のお礼までは求めないけど、もう少し何か無いのかよ…。

まぁいっかー。テンプレ通りの展開が続くとも限らないし、言葉を覚える必要があるなら罪悪感の無い相手の方がいいしな。

さーて。埋めるか。」


 汚くて嫌だったが、今後の路銀を考えて野盗どもの身体検査をしていく。

 結果、小銅貨15枚、銅貨11枚、銀貨2枚、ナイフ4本、ロープ4本、革製の鞍袋1つを頂いて、後は魔法で開けた穴に野盗どもと共に放り込む。

 水筒や干し肉などもあったが……正直垢染みた男どもが使った水筒なんぞ使いたくないし、薄汚れた小袋に入ってあた干し肉なんて食ったら食中毒起こしそうだ。魔法で水出せるのは確認済みだし。食い物もなんとかなるだろう。多分。


「土よ、彼の者らを優しく包み込め」×10

 一回の魔法では埋まらなかったため埋まるまで詠唱を繰り返す。

 首だけ出した状態で埋まった野盗の一人を、拾ってきた槍の石突きで小突いて起こす。


「な、なんだこりゃ!?どうなってやがる!」


 おー、これまたテンプレ通りな…言葉通じるのかー。

 ゼロからの言語習得なんて三十路突入した人間にはキツすぎるからな。ここは僥倖。


「コンニチハー。現状を作り出した張本人ですが。質問に答えてもらえますk「ふざけんな!サッサとここから出しやがれ!紅ツバメのゴルディ一家に手を出して、まともな死に様拝めると思ってんのか!」


中二病キターーーーーー。紅ツバメって。


「思ってますねー。可愛い玄孫に囲まれて大往生するつもりですよー。それはさて置き。


最初に言ったでしょう?この状況を作った張本人ですって。未来はともかく、現在はアナタ弱者、ワタシ強者。


理解できますか?


質問に答えていただくのは、正直アナタである必然性もなく、物理的に沈黙していただいても構わないんですよ?」


ニッコリ。

馬鹿は嫌いなんだよねー。


「くっ…。……何が聞きてえ」


「一言で言うと、常識、ですかね。


細かく言うなら現在地、一番近い町の位置、村や町の規模、治安状況、国家規模、支配体制、貨幣価値、アナタ方を体制に引き渡した際の対価ってところですかね。


助けた荷馬車の人に訊ねようかと思ったんですが、逃げちゃいましたからね。


不幸な行き違いは有りましたが、人間助け合わないと。」


再びニッコリ。


「(悪魔か…)」


「なにか?答えていただけませんか?答えていただければ命はもちろん、馬一頭もつけましょう。」


「ふう。所々何を言っているかわからんが…まずは現在地だったな。

そこに見える道がリューリク街道。ノヴゴルド王国を東西に貫いて、西は紅海まで東はオレーグ王国まで続いている。


西に15リグ行けば、ノブゴルド第二の都市キエフがある。大体1万の人間が暮らしている。ここはキエフを州都とするドニエプル領のほぼ東端だな。


そこに見えている森が、緑神の森だ。


多くの村は50人から100人程度が暮らしていて、町は1,000人以上だと思う。


後はなんだった?」


「ふむふむ。王を中心とした貴族支配か。これまた定番だな。


王都周辺とこのあたりの治安状況はどんな感じですか?」


「緑神の森は、魔力が濃いことで魔物の発生率、定着率共に高い。街道の石畳には黄神の祝福がかけられているため、ほとんどの魔物は近付かないが。群を作った魔物や狂乱状態の魔物は祝福を無視して襲ってくるから、金のある奴は傭兵を雇う。


俺達のような野盗が緑神の森に根城を構えているが、キエフ州軍が本格的に討伐に乗り出されると困るから、旅人の襲撃はさほど多くは無い。


一月前から豚鬼の群が出没するようになったせいで、余程急ぎの商人で無ければ、隊商を組んで共同で護衛を雇ったうえで通っている状況だ。


王都周辺は、黄神の祝福も強いし、黄玉魔術騎士団が定期的に巡視、討伐を行うおかげで魔物も野盗もほとんどいない。」


「なるほどー。それにしても格好と語りが合わない人ですね。なんで野盗なんてやっているんですか?」


 学の無い野蛮な野盗にしては、話し方がまとまりすぎていることを指摘する。


 よくよく聞いてみると、どうもこの4人は元々隣のノルブ領で衛視をやっていたが、ノルブ伯の三男が酒場で暴れていたのをそれと知らずに取り押さえた所、逆にその罪を着せられ放逐されてしまったとの事。

 犯罪者の魔術刻印を刻まれて、犯罪奴隷として売られる直前に元同僚の助けでなんとか逃亡したが、魔術刻印のせいでまともに都市に入ることもできず、野盗に落ちぶれたという。


 横暴な貴族のボンボンてのも定番だけど、これじゃー気軽に処分出来ないじゃねーか…。

作中、主人公が窒素100パーセントの空気で野盗を昏倒させていますが、窒素が毒な訳では無く。

無酸素空気を吸入した場合、かなり短時間でブラックアウトします。

酸素濃度が低い場所は、苦しいとかいうレベルではなく危険なので皆様気をつけて下さい。

ちなみにそのような場所で作業するには有資格者の監督が必要となります。

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