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16.試練への道

予定したシーンになかなか到達しません・・・。

いろいろと悩んでたら一週間以上かかりました。

「おおおおおおっ!」


 ガラーさんの【咆哮】が森の中に響く。

 標的となった、異形の熊が直立し、こちらも吼える。


「がああああっ」


 緊迫し、戦闘に集中しなければいけないのだが…、"怪獣大決戦"という単語が頻りと脳裏を巡り、いまひとつ気合が乗らない。

 と、そんなことに思考が逸れていると、全身を赤銅色の剛毛で覆い、額、側頭部のそれぞれから太い角を生やした、およそ2.5mの巨躯が四肢で地面を力強く蹴ってガラーさんに迫りくる。

 両手に戦斧をしっかりと構えたガラーさんの身体からも迎え討たんとする闘気が漲る。

 およそ10mほどもあった両者の距離が一気につまり、熊は後ろ脚によって最後の一蹴りをしつつ立ち上がり、ガラーさんを薙ぎ払わんと凶悪な爪をもつ腕を振るう。

 いや、そのつもりだったのだろう。素早くステップで後ろに退いたガラーさんを逃さないようにもう一歩踏み込んだところで、熊の巨躯が消える。

 ズズン、という音と振動が待機している俺達のもとまで伝わってくる。

 なんのことはない。ガラーさんの前およそ1.5m程の範囲の地下を魔法で掘りぬいておき、落とし穴としておいたのだ。

 すかさず、シヴィッラさんの弓から文字通り矢継ぎ早に矢が飛び、もがいて穴を脱しようとする熊の行動を阻害する。


「風よ、その身に纏いし衣を最も濃い一色にし、彼の者を包み込み逃すな、死の風檻」


 最早、定番と化してきた窒素結界の魔法で封殺する。およそ酸素呼吸する地上の生物でコレで仕留められないというのはありえない。生物としての枠組みを外れて魔力がその生命の軸となった魔物の場合はそうもいかないらしいが。


「何度見ても、反則じみた魔法だのう。」


「説明したでしょう?この魔法でやってること自体は、それほど大したことはしていませんよ。呼吸していない魔物には効きませんしね。それに反則と言っても、反則でも使わなければ、ギリギリ銅3、ともすれば銀ランクの魔物なんて、この4人じゃ倒せないでしょう。」


「…あたし、何もしてない…」


「私もほぼ牽制だけですよ。あれだけ撃った矢もほとんど刺さっていませんしね。」


 ルチアのぼやきに対して、シヴィッラさんが苦笑しながら応える。


「それで、【鬼熊(おにぐま)】の素材となる部位と討伐証明部位はどこなんでしたっけ?肉は硬くて食えないんですよね?」


 ルチアのぼやきはスルーして強引に話題を変える。


「討伐証明部位は三本角で、毛皮、爪、牙、肝あたりが素材になるな。後は、大きさを考慮すれば魔晶石持ちかもしれぬな。ほぼ無傷だから毛皮は高く売れそうじゃな。」


「なるほど、じゃあ出番の無かったルチア君、(さば)いてくれんかね?」


「もうっ、そんなところばっかり!」


「時間をかけても仕方無かろう、儂もやるから、そう毛を逆立てなさんな。」


「そうだぞー。そんな風にしていると可愛い顔が台無しだぞ。」


「え、そんな可愛いって「私は周囲を警戒します。」


 シヴィッラさんは完全スルーか、やっぱりクールビューティって感じだなぁ。

 さて、ざっと1tはありそうだから、普通に魔法使っても持ち上がらんな。


「風よ、我が意を受けて音に成せ、詠う者」

「「風よ、我が意を受けて音に成せ、詠う者」」

「「「「風よ、我が意を受けて音に成せ、詠う者」」」」


 普通に発動させた魔法の事象改変規模が足りないなら、数を増やして、無理やり規模を上げてしまえばいい。


「持ち上げるんで、捌くのはお願いしますねー」


「「「「大地よ、彼の者をその(くびき)から解き放て」」」」

「「「「風よ、我が意のままに彼の者を支えよ」」」」


 重力遮断して(もちろん完全に遮断できるわけではない)軽量化したあと、風の魔法で浮かせる。ふわりと持ち上げてガラーさんとルチアの中間に鬼熊の死体を移動させる。


「何度見ても、反則じみた魔法だのう。」


 それ、さっきも聞いた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 鬼熊からは魔晶石は取れなかったが、無傷の毛皮はガラーさんの言った通り、高額で売れた。討伐報酬と素材の売却益で金貨2枚になり、懐に随分余裕ができた。装備の強化を考えると金なんかいくらあっても足りないわけだが。


 鬼熊討伐の前に、豚鬼討伐も受けていたため、皆仲良く1レベルずつあがった。


 シヴィッラさんは腕力をあげ、緑神の契約レベルを上げることにしたようだった。契約レベル上昇の試練として、緑神の森のとある魔物を討伐することが天啓として下ったようだ。いまのところ俺は契約レベル上昇で試練を下されたことは無いが、試練無しでの契約レベル上昇は極めて稀だとシヴィッラさんが言っていた。黒神自体がよくわからない存在であること、黒神の加護があることあたりが理由かもしれない。


 ガラーさんにはお願いして、盾スキルをとってもらい、咆哮のスキルレベルを上げて──咆哮はレベルが一定を超えると、対象を硬直させることができる──もらった。弓、くノ一、魔法使いと、まともに前衛が務まるメンバーがいない中、ガラーさんが近接戦闘の要となるため、壁としての性能アップを目指してみた。よって、装備もお金を出し合って、今まで使っていた両手持ちの戦斧ではなく、片手持ちの戦斧とカイトシールドのような形状の盾を購入した。


 ルチアは短剣術のスキルレベルと敏捷を上げた。この世界に俺が来た当初から比べると、3倍強とか赤い人か。豚鬼討伐の時には、豚鬼が全くルチアの動きについていけてなかったからな。豚鬼のでかい棍棒をかわして膝裏を次々と切りつけて移動を封じていった。ルチア、恐ろしい子。


 俺は、知力を上げてスキルをとった。【短期記憶】というスキルで、魔力を消費して意識した内容については半日程度まで自由にかつ明瞭に思い出すことができる。これでプログラミング言語を使った魔法利用がやりやすくなる。比較的高価な羊皮紙をそう何枚も使うわけにもいかないし、地面にプログラム書くのはなんかイヤだ。



 レベルアップを終えて、俺達は次に受ける依頼を吟味しながらギルドの酒場で休憩していた。


「シヴィッラさんの試練があるから、次は緑神の森に生息する魔物の討伐依頼が望ましいんだけど…。騎士団が豚鬼討伐で緑神の森に入っているから、いまあそこの魔物は減ってるんだよなぁ。」


「そうですね。ですが、試練の魔物も天啓によれば強敵らしいので好都合かもしれません。」


 さらりと聞き捨てならないことを仰るシヴィッラさん。


「へ?契約レベル2で、なんでそんなに強敵?」


「そうか、お主は試練無しで契約レベルが上がったんだったな。戦闘系の試練では、契約レベル2なら大体レベル12くらいの5、6人で挑むのが普通であろう。」


「…ルチア、エフレムさんて…。」


「契約レベル10よ。だからクズネフも直接お兄ちゃんに何かは出来ないのよ。」


「それは聞かなかったことにして。【普通】に対して人数で2人、レベルで4程足りないんですが、シヴィッラさんは何か勝算があるんですか?」


「「えっ?」」


「む?」


 その目は何だキミタチ。ジト目でシヴィッラさんを見ると気まずげに目をそらされる。

「まさかとは思いますが、俺の魔法ですか?」


「そうは言うがな。鬼熊を無傷で討伐するというのは、レベル7の4人パーティで出来ることでないぞ。難度としては契約レベル2の試練とそう変わらん。」


「アレは、何度も説明したように相性がありますからね。毒物なわけでもありませんし。まぁ、試練で倒す魔物について調べましょう。魔物の特性によっては何か思いつくかもしれません。」


 そう言って、シヴィッラさんに説明を促した。窒素結界が効くなら確かに楽でいいんだけど。

契約レベル上昇やスキル取得、スキルレベル上昇には個人差がありますが、一定のレベルが必要です。

契約レベル10は戦略兵器と同等。

エフレムは、天才の例に漏れず壊れ気味の人格なので積極的に両親の復讐をする気がありません。

──────────────────

コーキ

年齢:31

ギルドランク:銅 ギルドレベル:1

特技:魔法

種族:魔人

加護:黒神の加護

契約:黒神レベル2

レベル:7 経験:472/960

スキル:致死の未来、思考分割、気配察知、生存の二重化、短期記憶


体力:50/50

魔力:9,999,999,999/9,999,999,999

腕力:8

器用:10

敏捷:13

知力:21

耐久:9

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