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15.新しい仲間2

 傭兵ギルドでは、ギルド登録者同士の紛争解決手段として、【決闘】というものが存在している。


・双方合意の上実施する

・ギルド職員3名以上の立会が必要

・決闘方法、勝敗条件、決闘場所など、決闘の内容は双方合意で決定する

・決闘に賭けられた内容について、決着後に再度紛争にすることはできない


 タラカーンは当然のように、1対1の戦闘による決着を求めてきた。魔術士であることを聞いているのと、体格から1対1なら押し切れると踏んだのだろう。セコい奴だ。

 こちらも否やは無い、が、変な細工をされても困るので、条件を出した。


・場所はギルドの訓練場で立会人以外の一切の立会無し

・武器、防具の装備は一種ずつのみ

・魔道具を含む一切の道具を事前含めて使用禁止

・全ての薬品使用禁止

・決闘で得られた互いの情報について一切の口外禁止

・以上を青神にかけて誓約とする


 不満そうではあったが、タラカーンも一応納得した。ただ、盾は使わせろと要求された。しみじみとセコい奴だ。

 技量も腕力も優っていて武器のリーチも長いというのに、ヘタレか。少しだけ食い下がって、その他の条件変更を認めないということで納得した。


 で、まあ当然のように勝った。致死の未来、生存の二重化、思考分割がある以上、駆け出し傭兵に毛が生えた程度の剣士に負けるはずもなく。

 避けて、魔法撃って、避けて、魔法撃って、魔法撃って、魔法撃って、魔法撃って、のあたりでタラカーンは降参した。

 が、敗北条件に降参を挙げなかったタラカーンが俺を殺すつもりだったことは明白だったので、聞こえなかった振りをして心が折れるまで威力を弱めた風鎚の魔法を連射で全身に叩き込んだ。

 以下、偉大なるタラカーンの変遷。


「くくく、馬鹿な奴め、地獄で後悔するんだな」


 ↓


「なにいっ!?なんだいまの避け方は!?」


 ↓


「ぐぁっ、まぐれ当たりでいい気になるなよ!」


 ↓


「ぐぁっ、うぐっ」


 ↓


「参った、俺のま、ぐぁっ」


 ↓


「うぐっ、つうっ、許し、がっ、おねが、ぐぇっ」


 で、勝利した俺がタラカーンに出していた内容は、人間以外の傭兵に二度と危害を加えないこと、人間以外の傭兵に不遜な態度をとらないこと、の2点。

 我ながら甘いかもしれない。ただ、支部長では無いけれど、大侵攻時に戦力は1人でも惜しいので生かすことにした。

 誓約に縛られて態度が変われば、そのうちに本心も変わるかもしれない。

 人の心は割と単純なもので、演技のつもりでも実際に行動していると、そちらに引きずられて本心も変化するなんて、よくあることだ。

 面倒くさいので、俺自身が矯正するつもりは無いが。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 サクッと片付けたので、改めて白羽の部屋へ。シヴィッラさん、ガラーさん、ルチアには直ぐ戻るから待っていて欲しいと言ってある。

 マルファさんはもう紹介も終わったし揉め事も起きないだろうということで受付業務に戻った。


「お待たせしました。改めて、一応人間だったはずの、コーキです。魔法使いです。」


「はず?魔法使い?あの人間にも傷一つ負わずに勝ったようだし、お主見た目が全く当てにならんのお。」


「ほんと、そうよね。」


 驚きを見せるガラーさんに、ルチアまで疲れたように同意する。

 そんなこと言われてもなあ。


「それはさておき。ルチアはもうガラーさん、シヴィッラさんとは話したんだろ?」


「ええ、ガラーさんとシヴィッラさんも2人で旅をしながら傭兵をしていたそうよ。ふふっ。やっぱり私達と同じように、マルファさんに怒られたみたい。」


「そうですね、私達も焦っていたようです。アレを止めるためには一刻も早く力を着けなければならない。ヒトを超えなければならない。そう、思い詰めていましたから。」


 シヴィッラさんが険しい表情で言う。ルチアを見ると、首を振る。まだ聞いていないらしい。


「アレ、とは?シヴィッラさん達は何を目的としているんですか?」


「お主ら、赤珠猿(せきじゅえん)と豚鬼がどれくらい仲が良いか知っておるか?」


 ガラーさんが質問に対する答ではなく、そんな問いを投げかけてくる。もちろん俺がそんなことを知るわけがない。魔物同士仲が良いなんてあるのか?ルチアの村は黄鬼と緑小鬼に襲われたって言うし、近縁種ならありえたりするのかな。


「馬鹿なこと言わないでくださいよ。お互いに姿を見つけたら即襲いかかる関係を、仲が良い、だなんて。」


 ルチアは知ってるんだ、常識なのか?こちらにおける、【犬猿の仲】ってところかね。


「3年前、森妖精の集落が1つ、魔物の群に飲まれたんじゃ。赤珠猿と豚鬼が入り混じった群にの。」


「…っ!」


 ルチアが息を飲む。確かに似ている、レス村の惨劇に。


「その集落から20リグ程離れて、(ワシ)の住む山妖精の集落があったんじゃが、そのとき(・・・・)、シヴィッラは祭に使う銀細工をとりに自らの集落からそこへ来ておった。


シヴィッラや儂らがソレを知ったのは、たった1人儂らに逃亡を促すために来た森妖精からじゃ。その男も辿り着けたのが不思議なくらいの傷で、儂らにそのことを告げると事切れた。


皆で荷物をまとめて移動を始めるなか、儂とシヴィッラが偵察に出ることになった。


森妖精の集落は、いや、そうであった場所には何も無かった。森妖精達も戦いの跡も、魔物も、集落の一切も。」


 同じだ。何かが起きている。これは確かに焦る。


「私の村も…。」


 ルチアが言いかけて声を詰まらせる。頭に手を置き、後を引き取ることにする。


「ルチアの村も、同じように魔物の大群に飲まれたんです。魔物の種類は違っていて、黄鬼と緑小鬼だったそうですが。ルチアはその生き残りです。


神のお導き、ですかね。

協力、できそうですね。」


 どうも、神というより支部長が引き合わせただけな気もするが。


「そうですね。アレを二度と起こさないために。起きたなら守れるように。協力してもらえますか。」


「もちろんっ!私こそよろしくっ!」


「一緒に強くなりましょう。頼りにしますよ。」


 そう言うと、ルチアが噛みついてくる。


「ちょっとコーキ、私の時はそんなこと言わなかったじゃない!私は頼りにならないって言うの!」


「イヤイヤモチロンタヨリニシテルヨ?」


「なんで棒読みなうえに、疑問符がつくのよっ!このっ!かぷっ」


「いったっ!痛い痛い!本当に噛む奴があるか!ちょっとした可愛い冗談だろ!」


「ふぁふぁいふふぁい(かわいくない)!」


「くっ、ワハハハハハ!お主ら仲が良いのお」


「本当に。お二人共、こちらこそ頼りにさせていただきます。」


 俺達は、笑って握手を交わした。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 先ずは全員の能力確認ということで、ギルドカードを見せ合った。


──────────────────

シヴィッラ

年齢:62

ギルドランク:銅 ギルドレベル:1

特技:弓術

種族:森妖精

加護:緑神の祝福

契約:緑神レベル1

レベル:7 経験:215/770

スキル:気配察知、癒し手、鷹の目、弓術3


体力:32/32

魔力:61/61

腕力:13

器用:12

敏捷:14

知力:14

耐久:9

──────────────────


──────────────────

ガラー

年齢:83

ギルドランク:銅 ギルドレベル:1

特技:

種族:山妖精

加護:なし

契約:なし

レベル:6 経験:215/600

スキル:戦斧術3、金属細工、宝石細工、咆吼


体力:72/72

魔力:31/31

腕力:18

器用:19

敏捷:8

知力:7

耐久:18

──────────────────


 ガラーさん、俺より1レベル低いのに、ステータス高っ。シヴィッラさんもバランス良い感じ。

  

──────────────────

ルチア

年齢:16

ギルドランク:銅 ギルドレベル:1

特技:短剣

種族:猫人

加護:なし

契約:なし

レベル:6 経験:508/600

スキル:短剣術2、暗視、嗅覚強化、聴覚強化、隠形


体力:45/45

魔力:26/26

腕力:13

器用:17

敏捷:21

知力:9

耐久:8

──────────────────


 ルチアは長所を伸ばす形で成長させ、有用そうなスキルが取れそうだったので、取っておいた。【隠形(おんぎょう)】は、魔力を消費することで気配を殺して周囲に溶け込み、見えていたとしても意識できない状態になる効果らしい。

 なんか忍者っぽくなってきた。猫くノ一。


──────────────────

コーキ

年齢:31

ギルドランク:銅 ギルドレベル:1

特技:魔法

種族:魔人

加護:黒神の加護

契約:黒神レベル2

レベル:7 経験:558/770

スキル:致死の未来、思考分割、気配察知、生存の二重化


体力:50/50

魔力:9,999,999,999/9,999,999,999

腕力:8

器用:10

敏捷:13

知力:19

耐久:9

──────────────────


 黒神の契約レベルを上げられなかったのと新しいスキルも取れなかったので、知力、体力、敏捷を上げた。知力を上げたらなんとなく魔法の威力が上がった気がしている。気のせいかもしれないが記憶力も上がっているような。


 ルチアのギルドカードを見た2人は感心していたが、俺のギルドカードを見せたら絶句していた。ルチアはニヤニヤしながらそれを見ていた。

ロシア語でゴキブリをタラカーンと言うそうです。

正直かませ犬以外の何者でもないので、たぶん、もう絡まない予定。

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