14.新しい仲間
若干タイトル詐欺かもしれません。
お気に入り登録が100件を超えました。100人以上も続きを待ってくれる人がいるのが、ちょっと信じられません。
読んでくださる皆様、本当にありがとうございます。
※4/26 狗鬼の表記が一部コボルトになっていたため修正。
あれから、何件かの討伐依頼を受けて、ルチアのレベルも2上がった。大分ゲーム臭い世界ではあるが、死んだら蘇生は無理──ルチアやエフレムさんにも聞いてみたが、治癒を得意とする黄神契約魔術士の高レベル魔術にも蘇生は無いらしい──だし、部位欠損レベルの怪我を魔法で治癒するのは難しい。よって、安全重視で低位かつ少数の討伐依頼を狙って請けている状況だ。
しかし、やはりと言うべきか、軽戦士と魔法使いの2人というのは、不慮の事態への対応力が低く、ついにルチアが左腕に大きな怪我を負ってしまった。
俺達は、いつものようにギルドで比較的安全そうな討伐依頼を選び、キエフから北東にある森林地帯、薬師の森を訪れていた。依頼内容は薬草採集の妨げとなる狗鬼──人身狗頭の小柄な魔物で、一言で言うとファンタジーでよく見かけるコボルトで、数匹から30匹程度の群を作り、臆病だが安全と見れば他の動物を襲う──の討伐。今回の目撃情報やこれまでの狗鬼出現時の行動傾向をマルファさんに聞いており、おおよその当たりをつけて探索を進めていた。
そこで狗鬼3匹を発見し、戦闘を開始したところで、狗鬼の悲鳴を聞きつけたと思しき豚鬼2匹が乱入してきた。豚鬼に気配察知で気付いた瞬間、悠長に戦っていてはジリ貧になると判断し、強引に狗鬼に2人でラッシュをかけて落としたところで、狗鬼に注意がいったルチアは豚鬼の攻撃を回避しきれず、左腕に豚鬼が持っていた棍棒の一撃を受けてしまった。
どうにか豚鬼も倒したが、ルチアの左腕は骨折というより、若干潰れていた。魔法の契約レベルを3に上げていたこともあり、なんとか治癒できたが、あのときに豚鬼の攻撃がルチアの頭にいっていたら、最悪命を落としていただろう。
ということで、俺達は今傭兵ギルドに新たなメンバーを探しに来ている。
「と、まあそんな訳で2人の限界を感じてルチアと相談した結果、1人か2人、重戦士っぽい人、弓を使える人あたりの仲間を増やすことを考えているんですが、マルファさんから見てどうでしょう?」
マルファさんに事情を説明して、アドバイスが無いか聞いてみる。この世界のエルフ──森妖精というそうだ。森に集落を作って暮らし、長寿と美貌、長い耳、緑神の祝福者が多いことを特徴とするが、特に排他的で高慢ということも無く街に出る者も一定数いる。やはり若いうちは都会に憧れるらしい──の長寿具合からするとマルファさんも相当経験豊富…ゾクッと背筋に尋常でない悪寒が走る。
「何か失礼な事を考えていらっしゃいませんか?」
100人いたら99人は見惚れそうな笑顔を浮かべてマルファさんが言ってくる。当然目は笑っていない、というかアレは獲物を狙う目だっ…!
「い、いやいやいやいや!マルファさんの日毎に磨きのかかる美貌に思考を奪われてボーッとしてしまっただけです!」
「あら、お世辞でも嬉しいですわ。支部長から直々にお世辞をお願いされておりますのに、コーキ様は一向にギルドを頼ってくださらないので、こちらから押し掛けようかと思っていた所なんですよ。」
痛え。なんで俺は足をグリグリと踏まれなきゃならねえ…。「美貌」と口にしたあたりからルチアが足を踏んでいる。俺は異世界転移してまで女運が無いのか。デスマーチ続きで久しぶりのデートに出向いたら「そんなに仕事が好きならずっと仕事していればいい。」と振られた元カノを思い出す。凹んできた。うぐぅ。
「そ、それは大変に光栄なんですが、今はパーティメンバーの増員について御意見伺いたく。」
そう言いつつ、後ろに向かって止めろと言うように小さく手を振る。…噛まれた。
「ふふふ、仲が良いのですね。まず、増員自体は問題ありません。むしろ今まで2人でやってきた事が無謀です。駆け出し2人でやって行こうなどと言うのは思い上がりです。」
仕事モードになっても手厳しい。が、反論の余地もない。
「だってそれは!私の…」
ルチアが反論を試みるが、
「高貴な香りの話であれば、傭兵ギルドの名にかけて、おかしな干渉などさせません。貴方方は傭兵ギルドを少々見くびっておいでですね。国家を跨いで組織して活動しているのは伊達ではありません。また、欲に負けて干渉を許すような傭兵は国家には犯罪者とはされませんが、ギルドは決して許しません。逃がしもしません。逃げられると思うのは貴方方のようなギルドを正しく認識しない駆け出しか、ギルドと関わりの薄い世間知らずだけです。」
真っ向から叩き潰されてるよ…。マルファさん容赦ないなー。と言うかコレは俺に対する説教でもあるな。反省が必要だなあ。「解らないことを聞くのは恥ずかしいことじゃない」何人の部下に言ったことか。アホか俺は。
「確かに私達が世間知らずでした。改めて傭兵ギルドの、さしあたってはマルファさんの経験を貸してもらえませんか?」
「喜んで。本当は2人ではなく、3人ないし4人を増やして、5、6人がパーティとしては安定します。特に駆け出しでは。ただしコーキ様の持つ柔軟性を考慮すると、2人でも相性次第では大丈夫でしょう。また、お2人の想定された組み合わせも良いと思います。ただ、近接担当の戦士2名という組み合わせでも良いのでは無いでしょうか。対応可能な手札の種類を増やせば確かに柔軟性は増しますが、それぞれ1枚ずつでは欠けた際の戦力低下は補えないという脆弱性も孕みます。生存率を考えれば5、6人が良いという理由をお分かりいただけるでしょうか。」
先程までの厳しい表情から一転柔らかな笑みを向けてくる。アイスブルーの瞳から発せられていた圧力も和らぐ。
「現在ギルドから紹介可能なのは3名です。
森妖精でレベル7の弓使い。
山妖精でレベル6の戦斧を使う戦士。
人間でレベル8の盾と長剣を使う戦士。
以上ですが、どうなさいますか?
私個人の意見としては3人とも、と言って欲しいところです。」
「俺は会ってみた上で、3人でもいいと思う。まあ向こうが嫌だって言うかも知れないけどな。ルチアはどうしたい?」
顎に指をあてて少し考える素振りを見せる。
「そうね。私もコーキの言う方針でいいと思うわ。」
「それでは、3人と話してみたいんですが、出来ればギルドでそういった部屋はありませんか?」
ギルド内の酒場でも構わないが、パーティを組むことになればギルドカードを見せ合うことになるだろう。敢えて情報漏洩の機会を増やす必要は無い。
「それでは、2階、白羽の部屋でお待ち下さい。3人をお連れします。」
そう言って銀色に鈍く光る鍵を差し出してくる。
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ノックに応じると、マルファさんと共に3人が入って来る。
「紹介いたします。森妖精のシヴィッラさん。」
やわらかそうなプラチナブロンドをゆるく三つ編みにまとめて左肩に流している女性、森妖精は美形ばかりだなあ。切れ長のアイスブルーの瞳は吸い込まれそう…痛い、脇腹を抓られております。
「初めまして。シヴィッラです。弓と緑神契約の魔術を使います。」
俺達だけじゃなく、他の2人も観察しているな。この世界はエルフとドワーフの対立とかは無いのかな?人間による亜人差別はあると聞いてはいるが。ただ、傭兵では比較的少ないとか。実力のある傭兵程。まあそんな無駄な選り好みで戦力減らす奴が力をつけるまで生き残れるとも思えないしな。
「山妖精のガラーさん。」
短く刈り込んだ黒髪と同様に短く揃えられた髭、140cm程の短躯ではあるがガッシリとした身体は巌のようだ。うーん強面。
「ガラーだ。細工師だ」
引き結んだ口を一言だけ開いたと思ったら戦闘関連の情報は無しかい。傭兵は副業ってことか?
「人間のタラカーンさん。」
金髪碧眼の優男風ではあるが引き締まった体躯はバランス良い。良いけど…。
「おいおい、俺は俺に見合う実力者を紹介してくれって言ったんだぜ?マルファさんよお。ベッドの上の実力ありそうな森妖精はともかく、亜人におっさんにケダモノかよ。捨て駒にしか使えねえクズをあてがってどうしようってんだ?」
さっきからシヴィッラさんの胸やら腰やらばかり見ている好色そうな目に意志の光が見えねーと思ったら、頭もカスか。
マルファさんから発せられている冷気も認識出来ないとか、それこそどういうつもりなんだろう?
「タラカーンさん、今、【捨て駒】と仰いましたか。ここのところ貴方のパーティは死者がでる事故が続いていると伺っておりましたが、ギルドへの報告は偽りだったのですか?」
「あぁ?事故だよ事故。使えねえ奴らが油断しやがって、森灰狼に不意をうたれたのさ。ケダモノが不意打ちをくらうなんざ、何の冗談かと思ったぜ。まあそのまま森灰狼を引きつけてくれたから助かったがな。」
「マルファさん、すみませんが、そちらの件は別の機会にお願いできませんか?少なくとも私とルチアはそこの残念な帽子の台に用は無いので。」
獣人種が狼に不意打ちされるなんて通常ありえない。マルファさんの思惑はともかく、この馬鹿と組むのは命取りだ。
「これは失礼いたしました。タラカーンさん、貴方もここにいる皆様をお気に召さない様子ですので、退出願えますか?また、ここのところの事故率の高さから、ギルドとしては改善策を提示されない限り、今後タラカーンさんへの傭兵紹介は出来かねます。今日が最後の機会でしたのに残念です。」
「な、ふざけんなよ!そこのおっさんが訳解らねえことを言っただけで、亜人2人には聞いてねえだろうが!」
あらまぁ、亜人呼ばわり──森妖精、山妖精共に人間の亜種なわけではなく、亜人と呼ぶのは人間だけであり、蔑称にあたる──したうえで、仲間になるとでも思っているのか、めでたい頭してやがる。それにあの2人の目は既に同業者を見るものではなく、路傍のゴミでも見るようなものになっている。
「ここに【亜人】などという者はおらん。また、お主を望む者もおらん。立ち去るが良かろう。」
「てめえ、このタラカーン様に喧嘩売ろうってのか!」
うわ、小者臭が酷い。折角だから参加してしまえ。ルチアをケダモノ呼ばわりしたことが許せないしな。
「事実の提示が喧嘩を売ることになるとは、また面白い理屈ですね。それともタラカーンさんが望んだ通りにならないことを【喧嘩を売る】と表現されているんですか?どこの世界の概念ですか。折角ですからその世界にお帰りになったらいかがです?出来ればタラカーン様の素晴らしい実力でその世界を統治し、そこの繁栄に努めていただくのが、皆様の幸福のためかと思いますが。」
「てめえ…。死にたいらしいな。決闘だ!文句は無いだろうな、マルファ。オッサンもそこまで言って逃げるとは言わねえよなあ。」
「ギルドの規律に従うのであれば職員としては特に。個人としては呼び捨てにされる覚えはありませんが、まあいいでしょう。コーキ様、どうなさいますか?」
「若者の未来を摘みたくはありませんが、構いませんよ。」
あっさりと首肯する。まあ狙って煽った所もあるしね。マルファさんの目も若干呆れているし。
キリのいいところまでと思ったら最長に。
コーキ、ルチア共にレベルアップしていますが、事情により掲載無し




