未完成
おかしいのはわかっている。けれど、そんなことより、いま目の前にいる彼が煩わしい。
「湯木?」
ああ駄目だ。もうこのまま逃げ出したくなってしまった。
*
大人は嫌いだ。思春期は皆そのようなことを呟く。僕もその一人であるが、その対象は親でもなく他人である。奴のことを考えると全身がむず痒くなり、頭がピリピリと痛くなる。心身ともに奴を嫌っている僕は、またしても今日顔をあわせなければならなくなった。
「お願い湯木。これ先生に届けて」
「・・・え」
「仲良いじゃん二人はさ。あの先生湯木以外には厳しいって知ってるだろ」
「知らないよそんなこと。ていうかそれくらいできるだろ」
「本当にお願い」
・・・僕は馬鹿だ。お人好しにもほどがある、と今になって後悔している。
積まれたノートの山を抱えながら、重い足取りで僕は職員室に向かう。