表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん観察日誌~普通のおっさんの中に可愛さを見出して悶えています  作者: ロゼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第六話

 昨日の透明エプロン男のことがあり、目覚めが悪かった朝。


 身支度を整えて、出社すべく玄関を開けると、通路の隅に追いやったはずの紙袋が再びうちのドアの前にデーンと鎮座していた。


『お前! なんでここにいるんだ! 紙袋の分際で歩いてきたとは言わないよな?』


 その理由はすぐに判明した。


「おはよう」


 アパートの階段を下りて通りに出てすぐ、透明エプロン男が素晴らしい笑顔で挨拶をしてきたのだ。


「……」


 見なかったことにして通り過ぎたのだが、私が無視しているにも関わらず、全くめげない透明エプロン男。


 歩調を合わせ、無視する私にガンガン話しかけてくる。


『お前の情報なんて今さら上書き保存もしたくないからさっさと消えてくれ』


 昨日キッパリと断ったのに、なんでこいつはめげないんだ?


 駅に着くまで一方的に語りかけ、私が改札を通過する直前までついてきた透明エプロン男だったが、電車に乗ってついてくるまではしなくて心底ホッとした。


 朝のラッシュ時間の電車は暑さと窮屈さと息苦しさと臭いとの戦いだ。


 電車の中に一人でも濃い化粧の臭いをさせている人物や、強めの香水をつけている人物がいるだけで、人が密集していてただでさえ淀んだ空気がその臭いで一気に汚染され、気持ち悪さすら感じる事態に陥ることがあるからだ。


 たまにそれが複数人いることもあり、そんな時は本気でその人物達を抹消したくなる。


 こんな時ほど萌えを吸収できれば最高なのだが、満員電車の中で萌えを見つけだすのは、地図もない砂漠でオアシスを見つけだすほど困難である。


 身動きが取れないし、なんなら人の壁でなにも見えない。


 それだけじゃなく、電車の中というのはある意味小さな戦場でもあるため、おっさんの嫌な面は見えても、萌える要素は見つけられない。


 まぁ、満員電車の中ではおっさんに限らず、若い子だって嫌な面を見せてくるため、人間の本性がさらけ出される場でもあると考えているし、そういう人間にはなりたくないと考えている。


 たまにいるのが、満員で、座ることもできない人が多い中、座席に座って足を大きく開いている人物。


 これはおっさんに限らず大抵が男性なのだが、その大股開き座りのせいで座席のシートが一人分埋まってしまうのだ。


 座席に座って足を伸ばして座っている人物も迷惑極まりない。


 自分の足の長さを誇示したいのかは知らないが、そのせいで一人分の立ち位置が消えてしまうため、「その足切ったろか!」と心の中で叫んでいるのは私だけではないだろう。


 あと、自意識過剰なのか知らないが、電車の揺れもあり不可抗力で少しぶつかっただけで鬼の形相で睨んでくる人物もはた迷惑である。


 自分も誰かにぶつかっているのに、それは全く気にせず、自分がぶつかられた時だけ睨みつけてくるあたり、どんだけ心が狭いのか。


 このタイプ、結構綺麗めなビシッと決めた女性に多く、誰彼構わず牙を向いてくるからタチが悪い。


 電車内で大声で会話をする女子高生も結構迷惑である。


 本人達は楽しいのだろうけど、会話の内容が下世話な話だった場合聞きたくもないし、音漏れですらうるさいと思われることが多いのに、その何十倍もの声量で話しているため、騒音でしかない。


 そんな中、私が一番嫌いなのは、電車内でイチャつく男女である。


 ただイチャイチャしてるだけでも、殺伐とした電車内だから余計に「他でやれ!」と思うし、そこでキスまでし始める輩もおり、それが身動きも取れない状態の中で目の前にいたら「〇ね!」とすら思う。


 暑苦しい電車内でそんなことをされると尚更暑苦しいし、なにより見たくない。


 他人のイチャイチャなんて何一つ楽しくない。


 本日は特に何事もなく(足は踏まれたが)会社に到着した私。


 会社の目の前で出会った大村課長に挨拶をし、さり気なく一緒に出社した。


 本日の大村課長のハンドタオルは、なんと! なんとなんと! ウサギさんの形!


 淡いピンクに赤い目の、幼稚園児や小学生低学年女児が好みそうなとってもラブリーでファンシーなハンドタオルである。


 最初は折りたたまれていたためなんなのかわからなかったけど、顔汗が酷かったため広げて一気に顔を拭く際に発覚した。


「これね、孫がじぃじにってプレゼントしてくれたんだよ。可愛いだろ?」


 あまりの衝撃におもわず見入ってしまっていた私に気づき、嬉し恥ずかし恋せよ乙女風(どんな?)な照れ笑いをしながらそう言った大村課長。


『お孫さぁぁぁぁぁん! グッジョォォォブ! グッジョブですよ、最高です! あなたでなければこのような乙女笑顔は引き出せません! 最高です!』


 見たこともない、初めて聞いた存在であるお孫さんに大感謝である。


 いつも以上に大切そうにハンドタオルをたたみ、胸ポケットにしまった後、その部分を愛おしそうに撫でる大村課長。


『その顔! その仕草! 一段とキュンです! 満員電車の疲労も吹っ飛びます! あざぁぁぁぁぁぁぁっす!』


 出社早々大満足である。


 今日は鈴木さんは外回りからの出社になるようで席にはおらず、少々残念。


 うちの課は滅多に出張はないのだが、外回りはちゃこちょこあり、特に鈴木さんは他社の担当さんらに気に入られる率が高いため、こんな日がそこそこあったりする。


 かくいう私も本日は午後から他社へ出向くことが決定しており、実は少しワクワクしている。


 他社にはまだ開拓していなかった新たなるおっさんがわんさかいるのだ。


 相手から理不尽を突きつけられることが多い外回り。


 少しくらい楽しみがなければ好き好んでやりたくない。


 外回りの前に遠野さんとの癒し系萌えたっぷりのランチタイムを満喫し、いざ、外回りである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ