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【書籍化】私には必要ありません ~愛してくれない家族は捨てて隣国で幸せを掴みます~ web版  作者: 風見ゆうみ


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35 悪縁を切るために

 帰りの船の中でどうして父があんな状態になっていたか確認した。

 海賊たちがお父様を裸にしたのは、プライドが高そうなので、晒し者にしてやろうと思ったらしい。海賊を制圧した騎士たちも父の姉に対する酷い仕打ちに呆れてしまい、あの状態で放置したということだった。


 捕まった海賊たちについては、今回は強盗未遂などの罪に問われることになるが、父以外には誰も傷つけなかったことや、捕まる際に抵抗しなかったこともあり、監視は付けられるが、そう重い罪にはならないだろうとのことだった。


 ただ、余罪についてはどう処罰されるかはわからない。


 姉についての話は婚約披露パーティーを終えてから、ゆっくり話を聞くことにした。


 婚約披露パーティーの開始時間には間に合ったが、かなりギリギリの状態だった。イディス様は着替えるだけで整ったが、私はそうはいかない。

 本来なら半日以上かけて準備しなければならないところを1時間弱で何とかしなければならなかった。

 何度も謝る私に、メイドたちは嫌な顔一つすることなく頑張ってくれ、本当に感謝しかない。


 色とりどりの宝石が散りばめられたドレスに身を包んだ私は、昨日とはまた別人に見えて、イディス様にも褒めてもらえた。


 無事に始まった婚約披露パーティーは、お祝いというよりも、イディス様の顔を初めて見た貴族たちの驚きのほうが強かった。


 たくさんの人に褒めてもらってお祝いされて、私にとって初めてパーティーが楽しく感じられた。


「見世物になる覚悟はしてたけど、思った以上だったな」

「主役だからではなく、違う意味で注目を集めていましたね」

「悪意ではないから喜ぶべきなのかな」


 パーティー終了後、私の部屋に向かいながら、イディス様は疲れた顔で大きなため息を吐いた。


 もう遅い時間だし、昨日から色々とあったので、イディス様も疲れているのでしょう。


 疲れていると言っても、美男子であることに代わりはない。ふと、不安に思ったことがあり、口に出してみる。


「これから言い寄られたりするんでしょうか」

「……なんの話?」

「いえ。イディス様が素敵な外見をしているとわかったので、姉のように近づいてくる人がいるのではないかと思いまして……」

「心配しなくても大丈夫だよ。僕は君の元婚約者と違って、ハニートラップにも引っかからないし、君一筋だから」


 にこりと微笑むイディス様にドキドキしてしまい、顔が直視できないまま、お礼を言う。


「ありがとうございます」

「どういたしまして?」


 イディス様が笑った時、ナナが近寄ってきた。


「イディス様、ダリア様、お話し中に申し訳ございません。ユーザス王国にいる仲間から連絡が入り、ユーザス王国の国王陛下に加担していた者たちが今までの供述を覆し、王妃陛下に命令されたのではなく、国王陛下に命令されたと言い始めたとのことです」


 父が退位させられることに気がついた周りは、お兄様に寝返ることに決めたようで「リックス殿下は何も知りませんでした。嘘の供述をしたのも国王陛下の命令だからです」と口を揃えて証言しているらしい。


 お兄様のことだから、命令されたわけではないのに嘘をついた人たちを許すとは思えない。自分の王位継承が確実になったら、彼らも処罰の対象にするでしょうね。


「この調子ですと、近いうちに国王陛下の裁判が行われます。そして、王妃陛下は釈放されることになるでしょう」

 

 ナナが聞いた話では、母は全て父が悪いと言っているらしく、姉については何も言っていないそうだ。


「ラムラ様はどうしているの?」

「泣きじゃくっていて、取り調べにならないそうですが、ラムラ王女はゼラス公爵家への罰金で終わるのではないかと言われています」


 私の質問にナナが厳しい表情で答えた。

 

 罰金のお金は国庫で立て替えるのでしょうし、姉には頑張って働いてもらわないといけないわね。


「ダリア様には国王陛下の裁判で証言台に立ってほしいとの依頼がきていますが、どうされますか?」

「頑張るわ」


 大勢の人の前で話すことは緊張するけれど、そんな弱音を吐いてはいられない。


 頷くと、イディス様が「証言台には立てないけれど、僕も一緒に行くよ」と言ってくれた。


 気持ちは嬉しい。でも、一人で頑張らなくてはいけない時だ。


「これ以上、イディス様に迷惑をかけられません。一人で頑張ります」


 答えると、イディス様は眉尻を下げる。


「ダリアの迷惑になることはしないよ。だから、一緒に行ってもいいかな?」

「……ありがとうございます」


 全てを自分でなんとかしようと思わなくていい。

 頼るべき時は頼っていいのだと、暗に言ってくれている気がした。


 ナナは私たちを見て微笑んだけれど、すぐに厳しい表情に戻す。


「それからダリア様、ユーザス王国の王妃陛下があなたと話をしたいと言っているそうです。そのことについてはどうされますか?」

「……父の裁判の日に話をするわ」

「承知いたしました。その旨を伝えてきます」


 ナナは一礼すると、踵を返してもと来た道を走っていく。

 

 母は私に何を言おうとしているのだろう。姉のように詫びてくるつもり?


 良い機会なので、父の裁判が開かれる日に、母だけでなく、ゼラス卿との縁も断ち切るという決意を新たにしたのだった。





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