32 長い夜 ②
読んでいただきありがとうございます!
今回も途中で別視点が入ります。
父は周りが危険だと止めたにもかかわらず、金を倍払うと言って無理に出港させたそうだ。
護衛の兵士たちは海賊の怖さを知っていたし、無駄死にしたくないと言って乗船を拒み、現在は港近くの宿屋に泊まる予定だそうだ。
父はユーザス王国の海域に海賊が多いから、ロフェス王国に守ってもらっていることをすっかり忘れているらしい。
行きの船はロフェス王国が護衛船を出してくれたので、安全な航海だった。
でも、今回は違う。
父たちを守ってくれる人はいない。
姉の嫁入りを阻止するために父に協力させられた海賊は、彼らのせいでロフェス王国の巡視が厳しくなったという理由で酷い目に遭わされたそうだ。
それだけで気が済むはずがなく、多くの海賊は父に対して恨みを持っている。
王族を殺害なんてしようものなら、世界中を敵に回すようなものだから、そこまで馬鹿なことはしないはずだ。
父たちのついた最初の嘘は、姉が海賊に襲われたということだ。
その話を聞いたロフェス王国側は嘘だと知っていたけれど、海賊への取り締まりを強化した。そのせいで海賊たちは捕まることを恐れて海に出られなくなり、収入がなくなってしまった。
政府からの援助は出ても、楽に暮らしていけるものではない。
厄介なのは、略奪行為を悪いことだと思っていない人たちがいることだった。
自分たちが稼げなくなったのは、国王のせいだと決めつけたのだ。
彼らの狙いは父だ。乗組員の中に腕の立つ騎士を潜ませているらしいし、船の周りにはロフェス王国が手配した騎士団の巡視船がいる。
戦闘になれば、すぐに制圧はできるでしょう。
イディス様が手を打ってはくれているようだけど、何をするかは私にはわからない。
「眠れませんか」
ナナの声が扉の向こうから聞こえてきた。
明かりを消さずにいたから、部屋の外に光が漏れているので声をかけてくれたみたい。
彼女を部屋の中に招き入れて答える。
「さすがに気になって眠れなかったの」
「自分たちの蒔いた種なのですから、ダリア様が気に病むことはありません」
「ありがとう。父たちの自業自得だものね」
微笑むと、ナナが苦笑して口を開く。
「ダリア様、明日の早朝、イディス様とリックス殿下はユーザス王国の国王陛下たちの様子を確認しに行くために、ユーザス王国に向かわれるそうです。一緒に行かれますか?」
「迷惑じゃないなら行きたいわ。父たちがどうなるか知りたいから」
明日は婚約披露パーティーだ。王城から片道6時間弱だから、ハードスケジュールになる。パーティーの開始は夜からだからとんぼ返りすれば何とかなるでしょう。
「では、伝えてきますね。そのかわり、今日は眠ってください。4時前に起こしにまいります」
「……ありがとう」
眠れるとは思えないけれど、とにかく横になって目を瞑ろう。
ナナが部屋を出て去っていく足音を聞いてから、私はベッドに横になった。
◆◇◆◇◆◇
(ラムラside)
部屋の鍵をかけていることを確認したあと、扉から離れて耳を澄ませてみる。
お父様の部屋は私の隣だし、木の壁は薄いのでお父様と男性が話している声が聞こえてくる。
「金がほしいのか!? 金ならやる!」
「金はほしいけど、それだけじゃ気が済まねぇんだよ」
「ど……、どうしたら気が済むんだ。まさか、私の命がほしいとか言うんじゃないだろうな」
「お前の命なんていらねぇよ」
「では、何が目的なんだ!」
お父様は叫んだあと、相手の返答を待たずに続ける。
「そうだ。娘をやろう! 外見だけは良い娘だ! 王女という身分を隠して売れば金になるだろう。慰みものにするなり好きなようにすればいい! だから、私だけは助けてくれ!」
お父様の命乞いを聞いた私は、ショックでその場に座り込んだ。




