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【書籍化】私には必要ありません ~愛してくれない家族は捨てて隣国で幸せを掴みます~ web版  作者: 風見ゆうみ


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30 断罪パーティー ⑥

 この状況をどう打破しようか考えているのか、父の動きが止まっているうちに告げる。


「これだけ多くの人の前で馬鹿な発言をしたのです。自分の立場が今のままでいられるとは思わないでくださいね」

「……くそっ」


 父は呟くと、振り返って他の国王たちに訴える。


「誰だって後ろめたいことの一つや二つはあるだろう!? それなのに私だけ責任を取って退位しろと言うのか!?」

「私利私欲の行動を誰もがしないとは言わないが、あなたの場合は限度を超えている」


 代表して言ったロフェス王国の陛下は、父に宣言する。


「あなたの悪事の裏付けが取れれば、全世界に知らせる」

「やめてくれ! 他国のことに口を挟まないでくれ!」


 懇願する父に私が冷たく答える。


「そう思ったから今まで介入してこなかったのではないですか」

「なら、なぜ今になって介入するんだ!?」

「あなたが思った以上に常識がなく、仕事ができない人間だからだと思います」

「何だと!? お前みたいな出来損ないに言われたくない!」


 父は私を指さし、唾を飛ばしながら叫んだ。


 どうして私は、こんな人に愛されたいと願い続けていたんだろうか。

 一瞬、そんな疑問が浮かんだけれど、すぐに答えが出た。


 昔の私には家族しかいなかった。他人に愛してもらえないなら、せめて家族に愛してほしかった。

 

 私は馬鹿だった。

 もっと早くに、こんな人の愛なんて必要がないことに気づき、お兄様のように前を向くべきだった。


「ダリアは出来損ないなんかじゃない」


 怒りをあらわにしているイディス様を抑えてお礼を述べたあと、私は父に話しかける。


「あなたにとって私は出来損ないなのでしょう。それは仕方がないことだと思います。だってあなたの血が流れているんですから」

「……っ!」


 声にならない声を上げたあと、父はシルコット様に訴える。


「私は悪くない。信じてくれ。嵌められただけなんだ」

「私に言われても困ります。それに指摘されたことは間違っていないのでしょう?」

「私は国王なんだ! 好きに生きたって良いだろう!」

「国王だから何を言っても良いわけではありません。幼い子供みたいなことを言うのはおやめください」


 シルコット様の冷たい視線に耐えられなくなったのか、父は眉尻を下げた。そんな父にシルコット様は追い打ちをかける。


「あなたに解雇された時、自分勝手なあなたから解放されると思い、本当に嬉しかった」

「どういうことだ……?」

「あなたの私を見る気持ち悪い視線に気がつかないわけがないでしょう」

「……な……んだって……」


 私と話をした時は、こんなことを言ってはいなかった。娘だからと遠慮して言わなかったけれど、私が父を見限っていることに気づいて、正直に話してくれたというところかしら。

 この言葉は、父にとってかなりのダメージだったようだ。


「あなたが王族という立場だったから我慢していたのです。私が子供を妊娠したとわかれば諦めてくれると思ったのに……」

 

 シルコット様が悲痛な表情で、自分を抱きしめるような行動を取った時、突然、父が叫んだ。


「私の心を弄ぶなんて絶対に許せない! 家族もろとも殺してやるっ!」


 声を震わせた父は、シルコット様を押しのけて部屋を出ると廊下を走っていった。


「シルコット様、大丈夫ですか?」


 駆け寄ると、彼女は柔らかな笑みを浮かべる。


「ありがとうございます。私は大丈夫です。それよりも自分の娘になんてことを言うのだろうとカッとなってしまいました」

「いえ。はっきり言っていただけて助かりました。父はシルコット様に拒絶されるほうがショックでしょうから」

「ダリア様、私は侯爵夫人です。あなたよりも地位が低いのですから、シルコットとお呼びくださいませ」

「ご……、ごめんなさい。あなたのほうが年上で私よりも落ち着いているからつい……」

「謝らないでくださいませ。それよりも私の家族の安全は確保していただけるのですよね」

 

 心配そうに私を見つめるシルコットに、力強く頷く。


「ええ。万が一の時に備えて、あなたの家族にはロフェス王国から護衛を送っているの。それに、父はもう好き勝手できないわ」


 ここに来るまでの間に、お兄様は段取りを整えていたし、ナナから母にも真実を伝えてもらっていた。

 姉が自分の娘ではないだけでなく、夫が子供を  入れ替えていたと聞いた母は、供述を変えて真実を話した。


 嘘をついた母も無実ではないが、父も姉も国に帰った時点で捕まる。

 父は言わずもがなだが、姉はゼラス卿の件で虚偽申告罪に問われるはずだ。


 二人は自分たちが捕まるなんてことを考えていないだろうから、すぐにロフェス王国を発つでしょうね。


 捕まることをわかっていないにしても、国に帰るまでの航海が危険だとわかっているのかしら。

 反省してくれれば怖い思いだけで済む。

 そうじゃなかった場合は――。 


 視線を感じてイディス様に目を向けると、彼は「悪いようにはしないよ」と言って微笑んだ。


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