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【書籍化】私には必要ありません ~愛してくれない家族は捨てて隣国で幸せを掴みます~ web版  作者: 風見ゆうみ


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25 断罪パーティー ①

 婚約披露パーティーの前日までの間にやらなければならないことを済ませるなどしているうちに、いよいよ、その日がやってきた。


 開始時間は夕方からだが、今日は朝から空は晴れ渡り、爽やかな風が吹いていて幸先の良い感じがした。


 血の繋がりがないとわかったけれど、今さらラムラだなんて呼び捨てにするのは、本人の前ではできないことだ。

 彼女に本当のことを伝えるつもりはない。かといって、本人に話しかける時に姉と呼ぶのも変だから、心の距離を取っているという意味合いを込めて、ラムラ様と呼ぶことにした。

 ロインの件がなければ、血の繋がりがなくても本当の姉だと思っていたと思う。ロインに未練がないとはいえ、私のためだと言って寝取ったことは許せない。


 前夜祭という名の断罪の場は、王城のすぐ近くにある迎賓館の大広間で行われることになっている。


 姉や父には開始時間を遅めに伝えているので、それよりも前の時間に、出席してくださる方たちに今回協力してくださることについてのお礼を言いにいくことにした。


 父と因縁のあるレフサス王国の国王陛下も出席してくださっていて、お祝いの品をたくさんいただいた。


 レフサス王国の国王陛下は、まだ人もまばらなパーティー会場にいたので、近寄ってお礼を述べると「喜んでもらえたなら良い」と言った。


 そして、私を見つめて続ける。


「君が辛い目に遭っていることは知っていた。他の国は君を助けようとしたが、俺が止めたんだ」

「それは……、私を憎んでいたからですか?」

「そうだ。あの男の血が流れている君が辛い思いをするのは当たり前だと思った」


 はっきりと言われてしまい、ショックで涙が出そうになった。

 当たり前のことかもしれないけれど、私は自分の知らないところでも憎まれていたんだ。


「陛下、ダリアは悪くありません」


 俯いた私の隣で、イディス様は続ける。


「陛下もそのことはわかっておられるんでしょう?」

「……ああ、わかっていた。だが、どうせあの男の娘なのだから、碌な娘ではないと思い込むようにした」


 そう思われて仕方がない。


 でも、俯いてばかりでは駄目だ。

 私は私。

 両親とは違う考えを持っている。

 そのことをはっきり伝えよう。


 顔を上げてレフサス王国の陛下に謝罪する。


「私は父とは違います。謝って済むものではないと承知していますが、謝ることしかできません。本当に申し訳ございませんでした。側妃様にも可能であれば、直接お詫びしたいと思います」


 深々と頭を下げると、大きな手が肩に置かれた。


「頭を上げてくれ。俺のほうこそすまなかった。器の小さい人間だと反省している」

「そんな……っ」


 頭を上げた私に陛下は告げる。


「側妃は君は悪くないと言っていたし、君の兄が若くして真面目に国のためにと動いている姿を見て、必ず親に似るものではないのだとわかってはいたんだ。それなのに意地を張った」

「大切な方が傷つけられたのです。その男の娘を恨む気持ちが湧いてもおかしくありません」

「逆恨みだがな」


 陛下は自嘲したあと、私に優しい目を向ける。


「どうしても気になるのなら、今日、あの男の社会的地位をなくしてくれ。実の父親だからと情けはかけないと約束してほしい」

「承知いたしました」


 力強く頷くと、陛下は私とイディス様に微笑みかけてから、陛下用の控室に向かっていった。


「大丈夫?」

「……はい。ありがとうございます」


 陛下が去ったあと、心配そうに尋ねてきたイディス様に笑顔で頷く。


「どうしてお礼?」

「イディス様に守られてばかりじゃいけないと思ったら頑張れたんです。だから、そのお礼です」

「……そうか」


 イディス様の表情が暗いままなので、今度は私が問いかける。


「どうかなさいましたか?」

「いや……、ダリアは助けに来るのが遅いと思っただろうなって」

「え? あの、何のお話でしょうか」

「ナナから報告を受けていたのに、君を助けようとしなかっただろ?」

「それは仕方のないことだと思います。それに先程、レフサス王国の陛下が言っておられましたが、助けないようにと言われていたのでしょう?」

「それはそうだけど」


 ここ最近のイディス様は私に心を開いてくれたのか、情けない顔をする時がある。自惚れだと言われそうだけど、そんな表情を見せるのは私にだけだと思っている。


「気になさらないでください。今の私は本当に幸せです。今までの辛い出来事は、心が傷つけられることで、誰かを思いやる気持ちを知るためのものだったと思うようにしています」


 傷つけられたいわけじゃない。でも、辛い思いをした分、自分は人に優しくしたいと感じた。

 この心の痛みを知らなければ、私も両親のようになっていたかもしれない。私の髪色と瞳は試練付きの神様からの贈り物だったのかもと思えるようになった。


 そして、ずっと望んでいた、姉よりも私のことを愛してくれる人。それがイディス様だと確信できるようになった。

 私にはそれだけで十分だ。


 ……こんなことを言ったらナナから『私もいます!』って怒られるかしら。


「ダリア様!」


 聞き慣れた声が聞こえて振り返ると、紺色のワンピースドレスを着たナナが笑顔で駆け寄ってきた。


「お久しぶりです! お会いできて光栄です」


 カーテシーをするナナに笑いかける。


「私も会えて嬉しいわ。お兄様と来てくれたの?」

「はい。リックス殿下は他国の陛下とお話しされています」


 ナナは答えると、慌ててイディス様にもカーテシーをした。


「失礼いたしました。イディス殿下、お会いできて光栄です」

「ナナ、色々と動いてくれてありがとう。ダリア、時間も近づいてきたし、一度着替えに戻ろう」

「はい!」


 歩き出そうとすると、ナナが私の着替えを手伝うと言ったので一緒に歩きだす。


「父と姉の様子はどう?」

「ラムラ様は未だにイディス殿下にご執心です。陛下は……相変わらずですね」

「ありがとう」


 さあ、まずは姉の相手から始めましょうか。



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