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【書籍化】私には必要ありません ~愛してくれない家族は捨てて隣国で幸せを掴みます~ web版  作者: 風見ゆうみ


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22  両親に愛されたかった私はもういない

 王城に暮らし始めてから十日以上が経ち、ここでの生活にも少しずつ慣れてきたと同時に私の考え方も変わってきた。

 今までは愛されたくて必要とされたくて生きてきた。

 それは悪いことじゃないけれど、求め続けてきた両親からの愛は、私には必要ないものだとわかった。


 様をつける気もなくなり、両親を父と母、お姉様を姉と呼ぶようにもなった。


 なかなか真相の解明が進まず、痺れを切らした父と姉が選んだのは、母に全ての罪を負わせ、ゼラス公爵家と手を組むことだった。

 最初は王命だったと主張していたロインは、直接言われたわけではなく、国王陛下の側近からの伝言、側近は王妃陛下からの命令だったと証言を変えた。


 王命ではなくとも、自分よりも位の高い王妃陛下の命令であれば、ロインが背くわけにはいかなかったのだという理由で、ゼラス公爵家側はロインの罪を軽いものにするようにと訴えている。

 このままでは、お姉様とロインは両陛下に振り回された被害者側として片付けられるのではないかと心配になり始めていた時、事件は起こった。


「みんなが、ラムラおうじょのわるぐちいってたよ」


 イディス様の弟であるファンダ様は、私にとても懐いてくれていて、何かあると報告しに来てくれる。

 イディス様と同じ髪色と瞳で、とても愛くるしい顔をしいて、使用人たちの人気者だ。

 イディス様が顔を隠さなくなったと同時に、ファンダ様は学園に通うようになった。友人ができたと楽しそうに話をしてくれる姿にみんなが癒やされている。

 とても優しい方なので、今回の話についても悪気はなく、私に関係する話だと思って言いに来てくれたみたいだった。


「悪口、ですか?」

「うん。ねとったんでしょう?」


 ファンダ様は目をキラキラさせているから、寝取ったという意味を絶対に理解していない。


 固まった私の代わりに、メイドが叫ぶ。


「ファンダ様、そんなことを口にしてはいけません!」

「だって、みんながいってたんだもん」

「よーく考えてみてください。ファンダ様はイディス様の悪口を誰かが言っていたと聞いたら、どんな気持ちになりますか?」

「すごくムカつく!」

「でしょう? なら、ダリア様にもそんな話を言ってはいけませんよね」


 ファンダ様をメイドや彼のナニーが窘めると、しょぼんと肩を落として、私に謝る。


「いやなこといって、ごめんなさい」

「私のことは気になさらなくて結構ですよ。ですが、他の人に言ってはいけません。お友達にもそう伝えてくださいね」

「わかった」


 ファンダ様は頷くと、バツが悪かったのかメイドの手を引いて走っていった。残されたナニーが私に話しかけてくる。


「申し訳ございませんでした。ラムラ王女がイディス様のことを悪く言っていたことだけでなく、男性と関係を持ったことについて、子供たちの親が話をしているようです。イディス様を裏切り、ダリア様の婚約者を寝取ったという話を聞いた子供たちはそれを聞いて、意味がわからないながらもラムラ王女のことを悪だと思い込んでいるようです」

「寝取った話を子供の前でしているの?」


 そのことに驚いて尋ねると、ナニーは苦笑する。


「少数派ですが、聞いていないようで聞いている子もいるようです。親は子供が遊びに夢中になっていると思って気にせず話をしています。その子供がわけがわからないまま学園で話をしているのではないかと……」

「そうなのね」

「貴族といっても子爵家以下は、子供の世話をする人間を雇っていない家が多いのです。そのため、大人の話を耳にする子が多少いるのだと聞いたことがあります」


 そう言われてみれば、私が学園に通えなくなったのも、男爵家の子供のせいだった。

 今回の話だって、両親の表情からラムラ王女が悪いことをしたのだと感じとったのでしょうね。


 ナニーは深々と頭を下げる。


「再度、お詫び申し上げます。陛下にはご報告し、学園側には苦情を入れておきます」

「ありがとう」


 寝取るだなんて話もそうだけど、他国の王女の悪口を公で言うことも本当は駄目なことだ。こんな話を父が聞いたら、その家族全員を殺そうとするでしょう。


 早く父から権力を奪わないと、時間がもったいなく過ぎるだけだわ。


 母に父の浮気の話をすれば、彼女の心は揺れる可能性はある。でも、姉への愛情が薄れていなければ結局は意味がない。

 

 その日の夜、イディス様に相談してみると、少しずつではあるけれど、お兄様が証拠固めをしていることを教えてくれた。

 ナナはまだお兄様の側にいて、こちらに帰ってくるまでまだ時間がかかるらしい。


「気になったことがあるのですが……」

「何かな」

「どうしてロフェス王国の貴族が、ユーザス王国内部での詳しい話を知っているんでしょうか」

「そのことなんだけど、昨日のユーザス王国の新聞が原因みたいだ」

「昨日の新聞?」

「ああ。ゼラス公爵家が出資している新聞社から、ラムラ王女の正体という見出しの記事が出たんだ」


 記事の内容としては、今回の出来事やお姉様の過去が色々と書かれているそうだ。


 ロインの家は正統派の新聞とゴシップ記事を扱う新聞の二社に出資している。ゴシップのほうに今回の記事を出させたというところかしら。

 ゼラス公爵家側は手を組んだように見せかけて、ユーザス王国の王家を見限っていたのね。


 自分のクリーンなイメージが壊れて、姉は今頃、悲鳴を上げていることでしょう。


「今、ユーザス王国の国王陛下は火消しに回っているみたいだけど厳しいだろうね」


 父はロインたちを黙らせれば何とかなると思っているんでしょうけど、そうはさせないわ。


 イディス様に出会ってロフェス王国で生活を始めてから、幸せを知って、私の心情はどんどん変わっていっている。

 もう、やられっぱなしは嫌。


「どうしたい?」


 尋ねられた私は、はっきりと答える。


「今までの私とは違うことを、はっきりと示したいと思います」


 両親に愛されたかった私はもういない。


 私には何もできないと思っている両親や姉に、引導を渡してみせる。

 

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