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【書籍化】私には必要ありません ~愛してくれない家族は捨てて隣国で幸せを掴みます~ web版  作者: 風見ゆうみ


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19 元婚約者の企み ③(ナナSide)

読んでいただき、ありがとうございます!

ナナ視点になります。

 ダリア様たちが去ったあと、メイド仲間からイディス様のことを色々と聞かれた。


「心の傷を抱えている人だから、ダリア様のことも理解してくれるはずよ」


 そう答えると、メイド仲間は安堵した表情になった。 

 

 イディス様は七年前に友人を亡くしている。自分がもっと早くに友人の異変に気づいていればと後悔していた彼の姿は痛々しくて、あの時のことははっきりと覚えている。

 ダリア様の姿を友人と重ねて、初めて会った時は残された側の気持ちをぶつけてしまった感じだった。


 イディス様は私やリックス殿下からダリア様の話を聞いている。あの人なら、ダリア様のことを大切にしてくれる。


 少なくとも元婚約者のような馬鹿な真似はしない。


 リックス殿下がロイン様に話を聞くというので、私も同席させてもらうことにした。イディス殿下に結果を連絡しなければならないので、その作業を私が代わりにやると申し出たのだ。


 私はロイン様を許せない。あんな酷い手紙や毒を送っておいて、ダリア様に未練があるだなんて信じられない。

 しかも、ダリア様に伝えてほしいことがあるからと言って、向こうから話し合いを求めてきたのだから、余計に腹が立つ。


 もやもやした気持ちでいたからか、私はほとんど眠ることのないまま、次の日の朝を迎えた。


「それはなんだ?」


 身支度を整え、リックス殿下の所に向かうと、不思議そうな顔をして聞いてきた。


「ティアトレイという商品名のシルバートレイです。貴族の女性の武器兼防具として、ロフェス王国では人気なんです」

「自分で自分の身を守るということか。だが、今どうしてそんなものを持ち歩いている?」

「私は握力が強いので、怒りを我慢した時にコップを持ったりすると割ってしまうので、こちらを握りしめておこうと思いまして」

「そ……そうなのか」


 リックス殿下が明らかに引いているのがわかった。


 ……私、何をやっているんだろう。他に良い理由があったでしょうに!


「行くぞ」

「はい!」


 頷いたあと、歩き出しながら小声で尋ねる。


「国王陛下たちの取り調べはどうなっているのですか?」


 ロイン様……いや、ゼラス卿が待っている部屋に向かっている途中でリックス殿下に聞いてみた。


「母上が全部仕組んだことだと言っている。しかもロインが姉上を襲ったと言ってるらしい」

 

 ラムラ様は、聖女のように見えていただけで、実際は自分のことしか考えていない人だった。国王陛下が彼女を溺愛しているから、余計に彼女はワガママになったのかもしれないが、二十歳ともなれば物事の判断はつくはずだ。


「騎士団はゼラス卿からはまだ、話は聞いていないんですね?」

「私たちとの話が終わってから確認するそうだ」

「どうして国王陛下は無駄な悪あがきをするんでしょうか。イディス様からロフェス王国の国王陛下に連絡がいっていますし、ダリア様が話をすれば全て明るみになります」

「ダリアを嘘つき扱いするつもりだろう。ダリアは多くの人に嫌われているから、信用してもらえないと思っている」

 

 不義の子と扱われたダリア様は、生まれたこと自体を心ない人たちから否定されている。周囲の声が聞こえないように学園に通わせないようにしたのも、リックス殿下の考えらしい。


 それだけダリア様のことを気にかけていたのなら、もっと陰で優しくしてあげてほしかった。


 ……彼は彼でここで生き抜くことに必死だったのよね。悪いのは両陛下だわ!


 そう考えたところで応接室に着いた。リックス殿下と共に部屋に入ると、ソファに座っていたゼラス卿は眉根を寄せた。

 私がいることが気に食わないらしい。

 私はあなたの存在自体が気に食わないけどね!

 でも、これは口に出して良い言葉ではない。


 リックス殿下の許可をもらい、彼の隣に腰を下ろす。ゼラス卿とは斜向かいの位置だ。

 ゼラス卿は挨拶を終えたあと、早速、リックス殿下に訴える。


「ダリア王女に伝えてほしいことがあるのです」

「……どんな話だ?」


 浮気したんだから、もう諦めなさいよ!


 口にしたい気持ちを押さえ、シルバートレイを抱きしめた。


「俺はダリアを守ると決めたんです。俺がやった行動は間違っておらず、彼女は誤解しているだけなんです」

「毒を送る行為が守る行為だと言うのか?」


 リックス殿下は手紙と毒粉の入った封筒を、ゼラス卿に見せた。

 ゼラス卿は苦虫を噛み潰したような顔になる。


「……手紙が残っていたんですか」

「ああ。この手紙の通りだと、君は自殺幇助もしくは自殺教唆になるぞ」

「渡したのは致死量の毒ではありません。苦しんで倒れる程度で、すぐに吐き出させれば大した問題はありません」


 苦しいのは確かじゃないの! 死ぬ可能性だってゼロじゃない。よくもまあそんなことが言えるわね!

 ダリア様がこの場にいなくて良かった。こんな話を聞いたら、絶対にショックを受けるはずだ。


「よくもぬけぬけとそんな話を平気で私の前で言えるものだな」


 リックス殿下の眼差しや声色はとても冷ややかなもので、ゼラス卿は一瞬ひるんだ様子を見せた。


「お前の目的は何だったんだ?」

「……ダリアを嫁には行かせず、馬鹿なことを考えたラムラ様たちを破滅に追いやることです」


 ダリア様を嫁に行かせないために、毒を用意したと言いたいの? そんなの納得できるわけないじゃない!

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