9.5 妹思い?の姉 (ラムラSide)
読んでくださり、ありがとうございます!
このお話はラムラ視点になります。
私の目の前に現れたロフェス王国からの使者は、今までに見たことがないくらい美しい人だった。
私も綺麗だと言われてきたけれど、自信をなくしてしまうくらいに素敵な人。
ロインのことも素敵だと思っていたけれど、目の前の彼はレベルが違う気がした。
ロインはダリアを裏切った最低な人だ。お父様は彼を私の婿にと思っているけれど、彼は私のことを愛していない。
迫ったのは私だけれど、私はロインに抱かれたいとは思っていなかったの。お父様とお母様が考えたことであって、私は悪くない。
それにロインが断れば良かったのよ。
ダリアが彼のことを好きだったから、私の相手に選ばれただけ。ロインは私と結婚できて嬉しいでしょうけど、私はみんなのもの。誰のものにもならないと思っていた。
それにしても可哀想なダリア。生まれてきただけで疎まれるなんて不幸すぎる。
お母様が言うには、ダリアはこの国にいないほうが幸せになれるらしい。それならば、ダリアをこの国から逃してあげましょう。
味方だったロインだってダリアを裏切ったんだもの。この国にいたってダリアは辛いだけよ。
怪物王子のところに嫁ぎたくないという気持ちは嘘じゃない。だって、多くの国民に愛されている私の隣に容姿の醜い人は似合わないんだもの。
以前、怪物王子について何か知っているか聞いてみると、リックスは「自分の信念を貫く正義感の強い人だと聞いたことがあります」と答えた。正義感の強い人なら、ダリアを幸せにしてくれるでしょう。
私がユーザス王国を離れずに済むなら、国民もお父様たちも幸せ。みんなが幸せになるのよ。そのためにロインに抱かれてあげたの。
ダリアにそれをわかってもらおうと思った。ダリアにさよならを伝える時にそのことを説明しようと思ったの。
そうしたら、目の前にお話に出てくるような素敵な男性が現れた。
彼になら何をされても許してしまいそうな、とても魅力的な人だ。
こんなに素敵だと思える人には、二度と出会えない。そんな風に感じることができた。きっと彼は私の運命の人。
私が話しかければきっと、彼もそのことに気づいてくれるはず。
使者としてくるんだもの。高位貴族のはずだわ。彼と私の間を阻むものなんてない。
もし、阻む人間がいても、お父様の力で何とかしてもらえる。
「あ、あの、あなたはなんというお名前なのですか?」
私は勇気を出して、ダリアの隣に座る男性に話しかけてみた。
彼は一瞬驚いた顔をしたけれど。私を見てにこりと微笑む。
ああ、やっぱり彼は私の運命の人だった。一歩近づこうとした時、彼は口を開く。
「ダリア様を迎えに来た者です。僕のことはお気になさらず」
そう答えただけで、使者は私に興味はないといった様子でダリアに目を移した。
どうして?
どうして私よりもダリアを優先するの?
こんなことは初めてで、私はどう反応すれば良いのかわからなかった。