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【書籍化】私には必要ありません ~愛してくれない家族は捨てて隣国で幸せを掴みます~ web版  作者: 風見ゆうみ


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プロローグ

足を運んでいただきありがとうございます。

面白い、応援したいと思ってくださった方は、星をいただけますと励みにします!

私が住んでいるユーザス王国は「世界の台所」と呼ばれるほどに、食文化が発達している国だ。大陸の南にある半島の先に位置するため、三方は海に囲まれており、貿易も盛んである。 

 活気にあふれた国ではあるが、海に囲まれている土地柄上、海賊に悩まされていた。ユーザス王国は商売人が多く

、海賊を退治できる人が少ないため、他国に助けを求めるしかなかった。

 海を挟んだ隣の大陸にある国、ロフェス王国が軍隊を派遣してくれたおかげで、現在、ユーザス王国の国民は王族も含め平和な暮らしを送ることができている。

 これだけ聞くと、ユーザス王国は何の問題もない幸せな国だと思われるだろうが、一つだけ頭を悩ませている問題があった。


 それは、二人の王女のことだった。二十歳になる姉のラムラ・ミシュノルは見目麗しく性格も穏やかで、金色のストレートの長い髪に透き通るような白い肌。空のような水色の瞳を持っており、多くの国民から愛されていた。一方妹である私、ダリアは灰色の髪に海の色に近い緑色の瞳。姉と違って冴えない顔立ちだ。


 二年前、ロフェス王国からお姉様を自国の王太子であるイディス・トールンの妻にしたいという申し出があった。

 まだ幼い弟のファンダ殿下だけではなく、もうすぐ二十歳になるイディス殿下も病弱だという理由で、いまだに公の場に姿を現したことはなかった。

 まったく姿を見せないものだから、容姿が醜いものだと思い込んだユーザス王国の多くの国民は、彼のことを『怪物王子』と名付けて、密かに揶揄していた。


 そんな人のところにお姉様を嫁入りさせたくないと両親は頭を抱えたが、逆らえば国を守ってもらうことができなくなる。泣く泣く申し出を受けるしかなかった。


「国民のためだもの。わたしには覚悟ができているわ」


 この発言により、ユーザス王国の国民からのお姉様の人気はさらに高まり、彼女をロフェス王国に嫁がせることを不満に思う人が激増した。姉と妹、逆だったら良かったのに、そんな声が私の耳に届いたこともあった。


 昔、私は髪と瞳の色が両親と一致していなかったせいで、母の不義の子として疑われたことがあったらしい。調べた結果、父の祖父が私と同じ髪と瞳の色だったことがわかり疑いは晴れたが、このことで私は両親や国民から嫌われてしまった。同じ年に生まれた私の兄はお父様の髪色と瞳を受け継いでいるから余計にだった。


 そんな声を耳にする度に、私の婚約者、ロイン・ゼラスは鼻で笑っていた。


「ダリアは人見知りで引っ込み思案だから、そんな風に言われるんだ。もっと堂々とすればいい。笑えば可愛いんだ。多くの人に認めてもらえるよ」


 ロインは公爵家の嫡男で眉目秀麗の男性だ。金色の髪に深紅の瞳を持つ彼は、顔立ちも整っており、自分に自信がある。だから、私のような落ちこぼれの気持ちなんて理解できるはずかなかった。


「今でも明るく振る舞えるように努力しているつもりなんだけど、なかなか難しいわ」

「仕方がないから、ダリアのことは俺が守るよ」

「ありがとう。私ももっと頑張ってみる」


 自分が卑屈になっていることくらいわかっていた。ただ、誰か一人でもいい。お姉様よりも私のことを愛してくれる誰かに出会いたかった。そして、その相手がロインだったら良いと思い始めていた矢先に事件は起きた。


「一夜だけ、あなたの婚約者を貸してほしいの」


 嫁入りの日を2日後に控えたある日、お姉様は私の部屋に来るなり、涙目で言った。


「ど、どうしてそんなことをおっしゃるんです? 優秀な騎士は他にもいるじゃないですか」

「騎士として借りたいんじゃないの。男性として借りたいのよ」

「男性としてって……。余計に意味がわかりません。ロインは私の婚約者です。何が目的かはわかりませんが、いくらお姉様でも貸すだなんて無理です」

「お願い。お願いよダリア」 


 お姉様は涙を流しながら、私にすがりついてきた。


「私はどうしても嫁に行きたくないの」

「嫁に行きたくない気持ちはわかりますが、どうしてそのことにロインが関わってくるのですか?」

「だって私は」


 話の途中で突然、彼女の背後から騎士の格好をした大柄で人相の悪い男が現れた。


「……っ!」


 見たことのない男だったため危険を感じた私は、お姉様と一緒に部屋の中に入って扉を閉めようとした。けれど、振り向いたお姉様は、男の姿を確認すると私を突き飛ばして男の後ろにまわった。


「お姉様?」

「……ダリア、本当にごめんなさい。あなたが素直にロインを貸してくれないからいけないのよ」


 嗚咽をあげて泣き始めるお姉様に話しかけようとした時、男は部屋の中に入ってくると、問答無用で私の頬を打った。ふっ飛ばされた私は近くにあった壁で頭を打ち、意識を失った。

 

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