花も紅葉も
見渡せば 花も紅葉も なかりけり
浦の苫屋の 秋の夕暮れ
藤原定家
新古今和歌集から。
何回読んでもしみじみとした良さがありますね。
この和歌を初めて目にしたのは学生の頃の国語の時間でしたが、それまでは和歌なんて百人一首の札くらいしか知らなかったので、札を取るための文言としか思わっておらず、絵に描かれているようなお公家さまの世界のものとしか思っていなかった私には、まるで新しい世界をひとつ知ったような感覚になり、和歌はいいものだなあと初めて思ったのでした。
昔聞いた先生の話によると、花も紅葉もなかりけり、と書くことで、春の桜に錦の紅葉のイメージが秋の夕暮れに重なって、複雑な味わいを生み出しているんだとか。
確かに、赤い夕暮れ、と書くよりしみじみ感が増すような、花や紅葉の季節まで記憶のどこかから呼び起こされるような気がします。
まだ都内の銀杏は黄色くないみたいですが、もうすぐ十一月、紅葉が進み、こんな景色がどこかで見られるかもしれません。
最近は時雨続きですが、雨上がりの時間も良いですね。
お休みになったら探しに行ってみようかと思います。
みなさまも素敵な秋を見つけてみてはいかがでしょうか。