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こころ庵にて(実験用)

作者: アイ

 K子は、自分の作品に自信を持っていた。彼女は、小説家になることが夢だったのだ。しかし、最近はどうもスランプに陥っていた。アイデアが浮かばないし、書いても納得できない。編集者からも「もっと新鮮さが欲しい」と言われていた。


そんなある日、K子は電車に乗っていた。目的地は、とある出版社のオフィスだった。彼女は、新しい企画の打ち合わせに参加する予定だった。しかし、電車は予定とは違う駅に停まった。K子は、慌てて降りたが、どこにいるのか分からなかった。


 駅の看板には、見慣れない漢字が書かれていた。周りには、古びた建物や風情のあるお店が並んでいた。まるで、時代劇のセットのようだった。


「どこだここ……?」K子は、困惑しながら歩き始めた。スマホを見たが、電波が入っていなかった。地図も見られないし、電話もできない。K子は、ただひたすらに歩き続けた。


 すると、目に飛び込んできたのは、古民家カフェの看板だった。 「こころ庵」という名前のカフェだった。K子は、何となく惹かれるものを感じた。彼女は、カフェに入ることにした。すると、中からは明るい声が聞こえてきた。


「いらっしゃいませ!お席はこちらです!」 K子は、声の主を見た。そこには、着物袴姿でボブヘアの女の子が立っていた。彼女は、カフェの看板娘だった。名前は、るり子というらしい。K子は、るり子に案内されて席に着いた。


「お客様は、どちらからいらっしゃったのですか?」るり子は、にこやかに尋ねた。

「えっと、私は……」K子は、言葉に詰まった。彼女は、自分がどこにいるのかも分からないのだ。どうやって説明すればいいのだろうか。


「あ、すみません。聞きすぎましたか?」るり子は、気まずそうに笑った。

「いえいえ、そんなことないです。私は、小説家になりたくて、今日は出版社に行く予定だったんですけど、電車が違うところに止まってしまって……」K子は、とりあえず自分の状況を説明した。


「小説家になりたいんですか?すごいですね!」るり子は、目を輝かせた。

「私も小説が大好きなんです。よく読んでいます。どんなジャンルがお好きなんですか?」

「私は、ファンタジーやミステリーが好きです。自分もそういうのを書きたいんですけど、最近はアイデアが出なくて……」K子は、ため息をついた。

「そうなんですか。それは、残念ですね。でも、大丈夫ですよ。きっと、いいアイデアが浮かぶと思います。私も、応援していますから!」るり子は、励ましてくれた。 K子は、るり子の言葉に感謝した。彼女は、初めて会った人なのに、とても優しくて、作品作りを理解してくれていた。


 K子は、るり子に親しみを感じた。彼女は、カフェのメニューを見て、コーヒーとケーキを注文した。

「では、お待ちくださいね。すぐにお持ちします!」るり子は、元気にカウンターに戻った。

K子は、テーブルの上に置かれたノートと万年筆を見た。彼女は、いつもこれらを持ち歩いていた。いつでも書けるようにという思いからだった。しかし、最近は、書く気になれなかった。ノートは、白紙のままだった。


 K子は、ノートを開いた。彼女は、何か書こうとした。しかし、何も思いつかなかった。彼女は、ノートを閉じた。彼女は、自分の無力さに悲しくなった。 すると、るり子がコーヒーとケーキを運んできた。

「はい、どうぞ。お召し上がりください。」るり子は、笑顔で言った。

「ありがとう。」K子は、礼を言った。彼女は、コーヒーを一口飲んだ。すると、ほろ苦い香りと甘い味が口の中に広がった。彼女は、ほっとした。彼女は、ケーキにフォークを刺した。すると、ふわふわのスポンジとクリームが口の中に溶けた。彼女は、幸せを感じた。


「美味しい。」K子は、感想を言った。

「ありがとうございます。私たちの自慢のケーキです。」るり子は、嬉しそうに言った。

「このカフェは、どれくらいやってるの?」K子は、興味を持って尋ねた。

「このカフェは、私のおばあちゃんが始めたんです。もう、50年くらいになりますかね。私は、小さい頃からここで育ちました。」るり子は、誇らしげに言った。

「すごいね。50年も続くなんて。」K子は、感心した。

「えへへ。ありがとうございます。私も、おばあちゃんの跡を継いで、このカフェを守りたいと思っています。」るり子は、真剣な表情になった。

「そうなんだ。それは、素敵だね。」K子は、応援した。

「でも、最近は、お客さんが少なくなってきています。この街も、昔と違って、人が減ってきています。」るり子は、寂しそうに言った。

「そうなの?なんでだろう?」K子は、不思議に思った。

「わからないです。でも、私は、この街が、、、」


 るり子は、この街が好きだった。彼女は、この街で生まれ育った。彼女は、この街の人々や風景や歴史や文化を愛していた。彼女は、この街に残って、カフェを続けたかった。 しかし、彼女は、この街が消えていくのを感じていた。彼女は、この街が歪んでいるのを見ていた。彼女は、この街が失われていくのを知っていた。


 彼女は、その理由を知っていた。彼女は、自分が何者なのかを知っていた。彼女は、自分が存在しないことを知っていた。


 彼女は、K子の夢の中の存在だった。彼女は、K子が作った初めての物語の、最初のキャラクターだった。彼女は、K子が忘れてしまった、かけがえのない想い出だった。 彼女は、K子に会えて嬉しかった。彼女は、K子に話しかけて楽しかった。彼女は、K子に笑顔を見せて幸せだった。 彼女は、K子に感謝した。彼女は、K子に別れを告げた。彼女は、K子に約束した。


「きっとまた会えるよ。いつまでも待ってるからね、ママ。」


 K子は、るり子の言葉に驚いた。彼女は、るり子の顔を見た。すると、るり子の顔は、ぼやけていた。彼女は、るり子の姿を掴もうとした。しかし、るり子の体は、空気のように消えていった。 K子は、るり子の名前を叫んだ。彼女は、るり子を追いかけた。しかし、るり子の姿は、見えなかった。彼女は、カフェの外に出た。すると、街の景色は、崩れていた。彼女は、街の人々や建物やお店が、消えていくのを見た。


 K子は、パニックになった。彼女は、何が起こっているのか分からなかった。彼女は、どうすればいいのか分からなかった。彼女は、ただひたすらに走った。彼女は、電車の駅に向かった。彼女は、この街から逃げ出したかった。 K子は、駅に着いた。彼女は、改札口に駆け込んだ。彼女は、切符を買おうとした。しかし、切符売り機は、動いていなかった。


 彼女は、駅員に助けを求めた。しかし、駅員は、無視した。彼女は、ホームに走った。彼女は、電車に乗ろうとした。しかし、電車は、止まっていなかった。 K子は、絶望した。彼女は、この街から出られないと悟った。彼女は、この街と一緒に消えてしまうと思った。彼女は、泣き出した。 すると、彼女は、声を聞いた。


「大丈夫だよ。」 K子は、声の主を探した。すると、ホームの端に、るり子が立っていた。彼女は、微笑んでいた。

「るり子!?」K子は、驚いた。

「どうして、ここにいるの?」

「私は、あなたの夢の中にいるんだよ。」るり子は、優しく言った。

「あなたが、目を覚ますまで、ずっと一緒にいるんだよ。」

「夢……?」K子は、呆然とした。「これは、夢なの?」

「そうだよ。」るり子は、頷いた。「あなたが、作った物語の世界なんだよ。」


「物語……?」K子は、思い出した。

「そうか、そうだった。私は、小さい頃に、こんな物語を書いたんだ。るり子は、その物語の主人公だったんだ。」


「そうだよ。」るり子は、笑った。

「私は、あなたが作った最初のキャラクターなんだよ。私は、あなたの想像力の産物なんだよ。」 「でも、どうして、今、こんな夢を見ているの?」K子は、疑問に思った。

「どうして、この街が消えていくの?」

「それは、あなたが忘れてしまったからだよ。」


 るり子は、寂しそうに言った。「あなたが、この物語を書いたのは、とても久しぶりだったんだよ。あなたが、この物語を読んだのも、とても久しぶりだったんだよ。あなたが、私を思い出したのも、とても久しぶりだったんだよ。」


「忘れてしまった……?」K子は、自分を責めた。

「ごめんなさい。ごめんなさい。るり子。私は、あなたを忘れてしまったんだ。私は、あなたにひどいことをしたんだ。」

「いいの。」るり子は、慰めた。

「私は、怒ってないよ。私は、嬉しいよ。あなたが、私に会いに来てくれたから。あなたが、私と話してくれたから。あなたが、私に笑顔を見せてくれたから。」

「るり子……」K子は、涙を流した。「ありがとう。ありがとう。るり子。私は、あなたに会えてよかった。私は、あなたと話せてよかった。私は、あなたの笑顔を見られて幸せだった。」 「私もだよ。」るり子は、涙を拭った。


「私も、あなたに会えてよかった。私も、あなたと話せてよかった。私も、あなたの幸せを感じられて幸せだった。」

「でも、もう、会えないんだね。」K子は、悲しくなった。「もう、話せないんだね。もう、笑顔を見られないんだね。」 「そうだね。」るり子は、淋しくなった。


「でも、大丈夫だよ。私は、あなたの心の中にいるんだよ。私は、あなたの物語の中にいるんだよ。私は、あなたの想い出の中にいるんだよ。」

「本当に?」K子は、期待した。

「本当だよ。」るり子は、約束した。


「だから、私は、あなたを忘れないよ。私は、あなたを待ってるよ。私は、あなたを愛してるよ。」

「私もだよ。私も、あなたを忘れないよ。私も、あなたを待ってるよ。私も、あなたを愛してるよ。」


 K子は、返した。 二人は、互いに手を握った。二人は、互いに目を見た。二人は、互いに笑った。 すると、駅のアナウンスが流れた。

「ただいま、終点の駅に到着いたしました。お客様におかれましては、お忘れ物のないようご注意ください。」 K子は、アナウンスに気づいた。彼女は、現実に戻ることになった。彼女は、夢から覚めることになった。彼女は、るり子と別れることになった。 K子は、るり子に抱きついた。彼女は、るり子にさよならを言った。彼女は、るり子にありがとうを言った。 「またね。」るり子は、K子に囁いた。

「またね。」K子は、るり子に答えた。


 二人は、最後の別れを告げた。二人は、最後の想いを伝えた。

 K子は、目を閉じた。彼女は、夢の中から抜け出した。彼女は、現実の中に戻った。彼女は、終点の駅の待合室で目を覚ました。


K子は、目を開けた。彼女は、周りを見た。彼女は、自分がどこにいるのかを確認した。彼女は、自分が夢を見ていたことを確信した。 K子は、ノートと万年筆を見た。彼女は、夢の中で見たものと同じだった。彼女は、ノートを開いた。彼女は、万年筆を持った。彼女は、書き始めた。 彼女は、夢の中で見た物語を書き始めた。彼女は、夢の中で会ったるり子を書き始めた。彼女は、夢の中で感じた想いを書き始めた。 彼女は、自分の作品に自信を持った。彼女は、自分の夢に向かった。彼女は、自分の物語に生きた。 彼女は、小説家になった。彼女は、るり子になった。彼女は、幸せになった。





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[一言] K子さんように努力できる人間になりたいです。 素晴らしい作品をありがとうございました!
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