三日月猫の私と狂犬王
小説家になろうラジオ大賞5 参加作品。
テーマは「三日月」
とある国の姫であった私は、悪い魔女に騙され、呪いで猫にされてしまいました。
王宮を追放された私は、猫の姿のまま彷徨うことに。
それを不憫に思った妖精により月に一度、三日月の夜に人の姿に戻れるようになりました。
しかし事態が好転することもなく、猫の私はある御方に拾われることに。
しかしその御方が……
近隣諸国を攻め入り、歯向かうものは容赦なく切り捨てる。無敵の強さを誇る軍団を抱える王国。その強さと狂暴さで、人々から狂犬王と呼ばれる王子に拾われるとは……
屈強な体に鋭い目つきの若き王子は、まるで鋭い刃のように恐ろしく美しく、冷たく、そして近寄るもの全てを切り刻むようなオーラを身にまとっていました。
でもそれは表向きの姿……
「クレセントちゃ~ん、元気にしてましたか~」
黒猫で胸元に三日月型の白い斑点のある私をクレセントと名付け、それはそれは毎日優しく愛でて下さるのでした。
猫の前では、ニヤケながら接する狂犬王。
一緒に食事をしたり、ベッドで寝たり、お風呂に入ったり……
王子の部屋で飼われた私は、二人っきりになる度にこの有り様なのです。
「かわいいなぁ~ クレセントは」
……どうしょう。
もし私が人間だったなんてバレたら。
平気で人の首もはねると噂の狂犬王。
きっと私も!
そして問題なのは三日月の夜が迫っていること。
過去2回はなんとか誤魔化してきたけど。
「今日は一緒に寝まちょぅねぇ~」
昼間っから強く抱えられて逃げられない!
どうしょう!!
しかし無情にも夜になり月が上り、
私はもとの姿に。
しかも裸のまま!!
「お、お前は! 何者だ!!」
「あ……あ
私は……
そ、その……
助けてもらった
猫です!
恩返しにきました!」
苦し紛れの言い訳。
どうしょう。殺される!
「お前、クレセントなのか?」
「は……はい」
死を覚悟した瞬間、
私の体は強く抱きしめられる!?
「そうか、願いが叶ったのだな!」
「え?」
「前から俺はクレセントと会話が出来ればと望んでいたのだ。その願いがまさか叶うとは」
「あのぉ? 私は処刑され……?」
「これからは片時も離さないぞ」
えーぇ!?
恐ろしさよりも恥ずかしさでいっぱいに!
その後、事情を知った王子は悪い魔女を懲らしめ、私は呪いが解けて元の姿に。
「今 帰ったよ~」
「お帰りなさいませ」
「寂し思いさせちゃって~ゴメンねぇ~」
そう言い、抱きしめて頭を撫で回す。
「あの、大丈夫です、ので」
私の姿は戻っても、狂犬王の愛と猫なで声は変わらなのでした。




