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Case.2「10秒先」

作者: 惰性物語

少年は10秒先の未来を見ることができました。


その少年がじゃんけんに負けることはありませんでした。

少年は自分が強いと思うどころか、じゃんけんは楽しくないと言いました。


みんなは気持ち悪がりました。

好きな人達からも嫌われました。

そこで気付きました。自分だけの力なんだと。


少年が力を使うことはもうありませんでした。


少年が青年になった時、

青年には、好きな女の子ができていました。

それは、長い長い片思いでした。

青年はずっと力のことを隠してきました。


ある日の放課後。

青年に女の子が笑顔を向け手を振りました。好きな女の子でした。

青年は女の子に力を使ってしまいました。


「もしも告白をしたらどうなるか」


青年は、幸せになれる10秒後をみてしまいました。

嬉しかった気持ちについてくるように昔の記憶が甦りました。


もし相手がこのことを知れば、こんな力を知れば、気持ち悪がられてしまう。

幼い頃、周りの人達がそうだったように。


青年は力を使ったことに後悔し、告白することをやめました。


そんな気持ちから逃げるように

好きな女の子の笑顔からも逃げ、青年は手を振り返すこともなくその場を後にしました。


その日、女の子は帰路の途中で車に轢かれました。

青年の力ではそこまで未来が見ることは不可能でした。


次の日、青年は事故のことを知りました。

もしあの時、自分が告白することができていれば、自分のことを話していれば、事故に遭わなかったのかもしれない。


青年は後悔で押し潰され、

何度も何度も自分を恨みました。


女の子の命は無事だったものの、目を覚ますことはありませんでした。


青年は、泣いて泣いて泣いて叫んで叫んで

女の子の寝ている病室で10秒先を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の日も次の年も次の年も次の年も次の年も次の年も力を使い続けました。



見える未来は10秒先、ほとんど意味がありませんでした。力を使わなくても変わりないぐらいの未来しか見れません。

それでも、どうしても、なにがあっても。

女の子が起きる未来が見たかったのです。

あの笑顔がまた見たかったのです。


青年は、老化していました。

どうやらこの力は自分の10秒を代償に未来見る力だったのです。ろくに栄養も摂っていないその身体では10秒の代償で起こる変化にも気付きにくく、気付いた時にはもう老化していました。

ですが、老人は命などすでにどうでもよかったのです。


女の子が目覚めないなら意味はありません。

この世界に価値などありません。

老人は力を使い続けました。罪をあがなうかのように

 


ある日、少女が目を覚ましました。

隣には左手を握っている老人がいました。

その手は、まだ暖かかでした。


老人が10秒先の未来を見ることはもう二度とありませんでした。



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