怪鳥2型
「派閥のために割り振った事で、食料とガラス、一部金属がゼロフロア内で値段が上がっています。その影響で建設作業員が減ったり、従業員の確保が難しいと商会から請願が届いていますね。いつも通りモンスターを召喚しようと思いますが良いですか?」
キングが定時報告をしてくる。
ゼロフロア内のお金は、貴重な人間界のお金をモンスター達が溜め込まないためで別に人間界で物が買えるわけじゃ無いからね。
当然よっぽど物が不足しない限りは人間界や派閥のダンジョンみたいなポイントをくれる方が優先されるわけで、今までも物が売れればモンスターを召喚してゼロフロアを広げていた。
「必要な召喚数はゴブリン200と黒エルフ20かー」
「いえ、これは応急処置で生産手段が用意出来ればもっと増やす必要があります。突然の話でまだ準備が済んでいないだけです」
「そっかそれじゃあ召喚は黒エルフだけでお願い」
今私の商会はウェクス王国の4分の1、隣のアングル王国に少しだけといった範囲で商売をしている。
それに対して商品のほとんどはこのダンジョン一箇所で作られているわけで、前から遠くの方は輸送費の問題であまり利益出てなかったんだよね。
まずはここに届ける方法を考えなくちゃ。その間にゴブリンは自然と増えてくれるし。
「それで私のところに来たという事は頼んでいた物が完成したんだろうな?」
私は前に大型の怪鳥を頼まれていたヴェール伯爵に会っている。相変わらずなんか偉そうだなぁ。
「完成しましたよ。当初の予定より必要な餌の量は少し増えますが、それでも良ければ。その分速くなりました」
ちょうど派閥のメンバーに私がなぜか召喚出来ないタイプの飛行モンスターを持っているマスターがいたおかげで助かった。
私の怪鳥だと8羽も必要で、物や人を乗せるカゴの設計が大変だったけど、そのモンスターだと今のカゴを大きくすれば良かっただけだからね。追加機能くらいかな。苦労したのは。
ちなみに商品名の名前は怪鳥2型。ちゃんと別の名前はあるけど似てる方が覚えやすいでしょ。
「速くなったのか。なら多少の劣化は構わない。良くやった」
劣化とはなんだよ劣化とは。
「ありがとうございます。ではこちらに完成品があるのでご覧ください」
建物の庭に置いてあるカゴにかかっている布を魔法で取り外すと、私の身長の2倍はありそうな入れ物が姿を現す。
「頼んでいた機能はしっかりと備わっているか?」
「はい。まず屋根と天井の間には空間があってスライムの液で満たされています。ここにあるボタンを押せば天井の数箇所に穴が空いて、スライムが壁全体を覆うはずです」
「良いな。それなら落下した時に運良く助かる可能性があるかもしれない」
「はい。今後性能が上がればもっと多くの液を使うか、別の物を使いたいですが、今のところはこれが精いっぱいです」
「それは仕方がない。万が一の保険のようなものだからな」
このボタンを押すだけで色々出来る魔道具は軍から提供された物を備え付けただけ。でも魔力の流れとかは掴めたから、いつか自作したいね。めっちゃ便利。使う機会無かったけど、いくつか買っておこうかな。
「それでは次はこのボタンと隅にある小さな部屋についてです。こちらはガーゴイルを6匹は入れておける部屋です。テイマーはそちらで確保してあるとの事ですが、万が一は私の方でも用意できますよ」
「大丈夫だ。ガーゴイルくらいならテイムは簡単だからな」
「しかし本当にガーゴイルで良かったんですか? 魔法を専門としない一般兵でも撃ち落とせると思いますが」
「当然護衛のワイバーンか何かを付けるからガーゴイルは数合わせにすぎん」
この輸送機にも付けられるって思ったよりワイバーンいっぱいいるんだね軍って。私ももう少しモンスターを使っても怪しまれないかな?
「とりあえず良くやった。報酬は用意してある。ああそうだ、ここに書いてある企業と貴族には売って大丈夫だから断らないでやってくれ。
君のところも使っていいがほかの奴らに奪われたり紛失すれば罰が下るから覚悟しておくように」
「承知しております」
とりあえず1つ目の仕事は終わり。でも怪鳥2型じゃあ最初の輸送問題は解決するのに小さすぎるから2つ目に移ろ。
それはもちろん鉄道。今までお客さんが増え続ける間はゆっくりでも良かったけど、これ以上広げられないとなると困るから早く完成させたい。
「ところで折り入って相談があるのですが良いですか?」
「なんだ? これ以上武器を欲しがるとあらぬ疑いをかけられるから止めといた方が良いぞ」
「武器は十分です。生産量がだいぶ安定してきましたので。私の領地とマイカ子爵の領地を繋ぐ鉄道を建設中なのはご存知ですか?」
「もちろんだ。ああその件で私からも話がある。建設費は獲得できているのか? 流石にまだ足りないかね?」
「え……? あ、はいなんとか最近目処がついたのですが」
その3割は借金だけど。銀行に感謝。
「それは良い。土魔法使いを軍から何人か派遣して手伝わせよう。出向という形になるため給料は負担してもらう事になるが、それでも良ければだがね」
?
それこそまさに私がお願いしたい事だったんだけど。
鉄道建設みたいな大事業に影響を与えられるレベルの優秀な土魔法使いは少なくて、そのほとんどは一部巨大な建設会社か政府、貴族関係かのどっちかに就職していく。
普通の企業からしたら常に雇い続けるほど仕事無いからね。
7割くらいは政府か貴族行きで、その少なくない割合が軍に入隊する。
理由はこのレベルの魔法使いにもなると社会の役に立ちたいと思い始めるかららしい。まぁお金には困らないだろうからね。
そして彼らの魔法で人を助けて守る方法といったら、やっぱり軍。
あとは魔法をここまで極める教育費とか、色んな事を試して魔法の才能に気づけるのは王侯貴族の子供が多いからノブレス・オブリージュの出番となるってわけらしい。
ブラック伯爵みたいな欲に溢れたのが普通の貴族だと思わないでね! まぁそのノブレス・オブリージュで私達商人上がり系は見下されるわけだけど……その話は置いておいて。
何が言いたいかっていうと土魔法使いを使いたいと思ったら軍に頼むのが一番ってこと。でももちろん向こうも仕事があるわけで簡単に貸してくれるわけじゃない。
「申し出に感謝します。願っても無い機会です。しかし、その理由を聞かせてくれませんか? 北の方に領地がある私にも関係がありそうなので」




