ダンジョン集会2 前編
うーん、この転移みたいなの何度やっても慣れないなぁ。
次に目を開けると空の上だった。下の方に私の国も見える。何これ!?
「安心してください床はありますよ。段差も無いですし普通に歩けば大丈夫です」
「わ、わかった」
この高さまで来ると一周周って怖くない。こんな事ならスカート履くんじゃ無かった。絶対大丈夫だけど気分の問題。
そんな事を言っているうちにダンジョンを創ったと言われるよく分からない人が出てきた。そろそろ私の中での呼び方決めないと少し面倒くさいな。
「やぁ諸君。おはよう、こんにちは、こんばんは。国によって時間はバラバラだから深夜に連れて来られた者は許してくれたまえ」
「神よそのような事些細な事です」
「我らが神のお導きのままに」
神様扱いかー。まぁダンジョンを創れるとなるとそれくらいしかいないしね。でも一応私も別の宗教信じてるしなー。神呼びはちょっと嫌。
「今回は少しお知らせがある。友好的な人間の居住によるポイントの獲得に制限をかけた。質問のある子はいるかい?」
そう言って彼は私の方を見た。明らかに対策されているよねこれ。いつ交易まで禁止になるか分かったもんじゃない。
私が手を上げるとすぐに許可されたから聞いてみる。
「おいおいあの人間恐れ多くも実際に質問しようなど。初期のダンジョン以外であの方に話しかけようなど思い上がりよって」
「今回もどうせ人間を住まわせて神がお怒りになったんだろう」
えっ、そんな暗黙の了解があったなら教えてよ。なんか恥ずかしいじゃん。
まぁそんな事も言っていられないから質問するけど。良いって言ってるんだし。
「なぜそれが禁止になったんでしょうか? 人間と仲良くするのはいけないという事でしょうか?」
この質問を予想していたのか答えはすぐに返ってきた。
「いやそうではない。そこは諸君らの自主性に任せる。居住させた場合は自分はほとんど何の対価も支払う必要が無いから問題だと考えた」
「承知しました。ありがとうございます」
ならいいや。今回禁止されなかった事からも私のやっている事は許されてる。ヒヤヒヤしたー。
エリーも横で体の緊張が解けている……ように見える。
「さて今年ももう少ししたら新入りが入る……お知らせはそのくらいだな」
そう言って彼はまた消えていった。そんなんやるの私しかいないって分かってるんなら前みたいに個別で教えてくれないかなぁ。
本当はこのまま美味しいご飯でも食べて帰る所だけど今回はもう1つ予定がある。
「ようやくか。もう連絡してくれないかと思っていたぞ」
「多忙ならすぐ連絡をするのも失礼かと思いまして」
「よくいう。お前はダンジョン同士の関係についてどれほど知っている?」
「正直ほとんど知らないです」
だって友達イエナしかいないし。他は今日私を珍獣みたいに見ているしさ。
「それなら私が少し教えてやろう」
そうして聞いた話によるとダンジョン同士は派閥争いをしているみたい。派閥に入る目的はダンジョンバトルを仕掛けられた時に仲間が助けてくれたり、良い稼ぎ方があるとたまに共有したりしてもらえるから。
「それならなぜ派閥に分かれて争うんですか? もう敵には人間がいるんですから戦う意味が分かりません」
「人間どもは脅威にもならん。あと数十年も経てば分かるさ」
逆に数十年は枕は低くしとかなきゃいけないのかぁ。
それで派閥を作る側の理由はというと、最初は2人の仲が悪いダンジョンがあったらしい。
「そこの2人は初期のダンジョンで争う余裕があったんのろう。そんな時に中規模のダンジョンが片方の側についた」
「なんで首を突っ込んだんですか? 仲良かったんですか?」
「知るか。しばらくして相手側に殺されたからな」
怖すぎ。派閥の勧誘でする話じゃないでしょ。
いくつか説はあるが今はそんな事はよい、といいながら咳払いをして101番さんは話を続けてくれた。なんかおじぃちゃんの昔話みたいになってきたよ。
「当然2人いる方が強くなる。慌ててもう片方も仲の良いダンジョンを味方に付けた。こうなると数の勝負で、お互いが脅しも使って色んなダンジョンを派閥に引き入れた」
他の初期ダンジョンも念のために仲の良いダンジョンを味方に付けたりし始めて、この頃になるとやりたい放題。
仲が悪いけど争って無かったダンジョン達が手下を使ってバトルしたりというのが始まったらしい。
「他にも色々あるが、とりあえず今はこれでいいだろう」
「ありがとうございます」
「もう今さら俺の要件を説明するまでも無いだろう。仲間になれ、だ。俺は寛容だから条件はいいぞ。細かい事は後で説明するがポイントや武器防具の貸与、ダンジョン管理のノウハウの共有、過去のダンジョンの記録の共有などなどだ」
あらお得。もっと強いダンジョンが弱いのをこき使うのかと思っていたよ。脅しとかで。
でも断れば危ないんだろうなぁ。私は少し気になった事を101番の隣にいたイエナに聞いてみた。
「イエナ、派閥にいつの間に誘われたの?」
「突然ね。ちょうどアオバとバトルする少し前よ」
「まぁダンジョンが出来てすぐのやつを仲間にして問題児だったら困るしな。大体どこもこの時期に勧誘が始まる」
良かった。私が遠巻きにされて遅かったわけじゃ無いのか。
「じゃあイエナは特別早かっただけですね」
「まぁそうだな。君も人間じゃなけりゃ、とっくに勧誘が来ているだろう」
遠巻きにされていたわ。ショック。にしても交渉相手なんか他ダンジョンしかいないせいか、この人たち交渉下手な気がする。なんでも素直に答えてくれて優しい。
こんなに優しい人達相手なら私もちゃんと返事をしなきゃね。
「そうだったんですね。それでお誘いはありがたいのですが、実は既に他の派閥からのお誘いをいただいていまして……」
私も商人として相手の親切にしっかり応えられた。ワハハハハ。小物っぽいしこの笑い方はやめようかな。
「本当か? それはどこだ?」
教えるわけ無いじゃん。そもそも嘘だし。商人や貴族でそんな動揺してたらもっと騙されるだけだよ?
前に騙されてめちゃくちゃ強いイエナを送り込まれてたから少しスッキリした。
実際、もう私の世代1位のイエナは取られているわけで私は確保しようと他の所からのお誘いがあってもおかしくはないし説得力は十分。
え、じゃあなんで誰からも誘われて無いかって? やっぱり遠巻きにされているんだろうね……。
「少し気になるのだが……相手はどんな条件で誘ってきたんだ? 今後の参考にしたい」
こうは言っているけど実際はそれを超える条件とかで私を釣るつもりでしょう。私とイエナは前に一緒に1つ上の世代の味方が付いたダンジョンを破っているし、その価値はあると思ってくれたのかな。嬉しいね。
「仕方ない。どうしてもというのなら教えてやろう。ポイントの貸与に利子をつける君の姑息な物とは違うのだよ」
違うから。今の私じゃないから。私そんな話し方しないし。
いつの間にか私の隣に小さなドラゴンが立っていた。いや誰?




