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ダンジョンバトル2 後編

 多分召喚したモンスターは4層に行くはず。じゃないとシリウスにイエナは挟み撃ちされちゃう。水棲モンスターだけゼロフロアに送るんだろうね。

 仕方ない。勝ちは諦める。でもこのまま負けるとは思わないでよね!


「このままではゼロフロア住民に大きな被害が出ると思います。彼らが死ねばポイントもしばらく稼げなくなるでしょう。

 復興が間に合う今のうちに降参する方が良いかもしれません」


 エリーが悔しそうな顔で通信を送ってくる。キングも割り込んできた。こんなに歪んだ2人の顔は初めてだ。

 みんなが心の底から負けたくないと思っている。なら期待に応えるのが私の仕事だよ!


「大丈夫。少しでも敵の数を減らして。特に増援として4層から来た強い魔物達を。その間ゆっくりセカンディーの方に下がっていって、川を回り込むようにファーストルの方に戻って船に乗れば別大陸の方に逃げられる。森とかに隠れながら、バレないように逃げてね」

「分かりました」


 私はわざとイエナの増援を妨害なく通した。罠だと疑われても、向こうも私が勝てるとは思っていないはず。


 数時間後に増援がゼロフロアに着くと私のモンスター達はたまに銃を撃ちながら下がり始めた。この頃にはイエナのゴブリン達の半分はいなくなっている。


 イエナは私が時間稼ぎをするために、こうしていると思ったのか、ちょうどゴブリン達が船に乗り込み始めたところで再度の通信を送ってきた。


「時間稼ぎなんてしても意味ないわよ。どうせ陸では私に勝てないんだし」

「陸ではね。少し待ってあげるから川下の方に行ってみなよ」


「海……ゴブリンがダンジョンコアを掲げながら引いていっているわね。全くこんな広い階層があるなら教えてくれればよかったのに」

「ごめんね。でもこうして役に立ったなら秘密にしておいたかいがあったよ」


「それで、びっくりはしたけど、それがどうしたの? もう水棲モンスターは川に入れたから船ごと沈めればいいだけじゃない」

「イエナのダンジョンの最新部まで行ったけど水の階層は無かったよね。この船団に勝てるほどモンスターがいる?」


 私が合図をすると20を超える艦隊が姿を現す。普段この海を繋いでいる商船や輸送船に少しばかり武器を付けただけだけど、今目の前にいるモンスターを海底に沈めるには十分だった。

 イエナも少し不愉快なようだけど、それでも勝てると思っているみたいだね。それは間違いない。私には勝てると思う。


「ねぇイエナ。私はあと1週間このままでも困らない。先に外に運んでおいた商品を人間に化けたモンスター達が売ってくれる。でもイエナのダンジョンは1週間も冒険者が来なければポイントが足りなくなるでしょ? これ以上モンスターを失って元に戻すのに、私から受け取る100万ポイントじゃ全然足りない。ここは引き分けにしない?」

「そうね。でも私が楽しいバトルを妥協するような性格に見えるかしら? どうせ他のダンジョンなんか敵じゃないわ。一度追い抜かれてもまた追い越せばいいだけよ」


 ただ損をするってだけでイエナがこの話を呑むとは私も思っていない。

 でも負けたとなれば他のダンジョンもバトルを持ちかけてくるかもしれない。私は負けるわけにはいかないんだよ。だから少し嫌だけど卑怯な手も使っちゃおう。


「前に行ったから知ってるでしょ。私の友達が勇者だって。当たり前だけど彼の護衛には強い人が付いている。私がイエナのダンジョンを練習用に勧めたらどうなると思う? イエナのダンジョンは新米冒険者のための保護対象には入っていない事は確認済み。弱くて練習に向かないとなると10層以上のダンジョン攻略なんて名誉な事だし箔付に、なんて事もあるかもよ?」

「……あなたの言いたい事は分かったわ。ちょっと待ちなさい」


 イエナが自分の画面を操作(見えないけど空に向かって指を振る異常行動をしているから多分そう)をし始めたところで今度はエリーから通信が来た。


「第101番ダンジョンから通信要請です。どうしますか?」


 私のダンジョンは2705番。大先輩からの突然の申し込み。目をつけられたら到底太刀打ちできないし、もちろん許可だよ。

 すぐにイエナも混じえた3人での通信が始まった。今回のバトルも覗かれていたみたいだしプライバシー権で訴えられないかな。


「イエナ。もうよい。君が勝つ事は出来ないだろう」

「いえ! 私はもっと出来ます!」

「いいや無理だ。勝っても意味が無い後で反省会だな」


 イエナがすごく嫌そうな顔をしている怖いマスターなのかな。ようやく私に話しかけて来た。


「面白い物を見せてもらった。人間のマスターなどどうなるかと思って見ていたが、まさかダンジョンバトルで人間を使って脅しをかけてくるとはな。こんなリスクがあったとは。我々魔物には意外と思いつかないものだ。考えてみれば当然だがな」


 おそらくイエナが多くのポイントを使えていたのも、謎の甲冑もこのマスターの支援のせいだと思う。後輩を傷つけやがってとか怒られないか怖いし媚を売っておこう。商人の必須スキルだよ。テストに出るよ。


「先輩もどうですか? 今なら先輩が人間界に手を伸ばせるように、お膳立てをさせていただけますが……」


 私の普段の言葉からは想像できない態度にイエナは驚いた顔をしている。ふふふ脳ある鷹は爪を隠すっていうからね。勝てなかったけど。


「いやいい。例えどれだけ役に立つとしても人間どもの助けを借りるなど絶対にせん。人間社会に溶け込むなどもってのほかだ。吾輩は忙しいから今度連絡してこい。お前なかなか見どころのあるやつだ」


 そういって一方的に通信は切られた。ちなみにイエナも引き分けを了承した後に消えていった。多分反省会だね。

 今の人が取りなしてくれて助かった。あの人がいたから勝とうとしてたのもあるだろうけど、イエナの性格を考えると本人の意志もそっちに向いていそうだし。


「にしても随分と人間が嫌いみたいだね。私は良いのかな? 許されたっぽいけど」


 2人取り残されたマスタールームでエリーに聞いてみる。私よりかは色々知っているかも。


「他のダンジョンコアに聞いた事があります。どうも人間に集落を襲われ、逃げている所でマスターになったようですね。今でも当時の仲間を探しているようですが、だいぶ前の事ですし本人も分かっているのでしょう。マスターは……多分ダンジョン関係者だからですかね。知りませんが」


「どうりで人間を嫌うわけだね。他のマスターが私を嫌うのも似たような理由?」

「ええ。私のマスターのように命の危機だからこそダンジョンマスターになる事を受け入れるという事例が、特に昔は多かったです。あなた以外は魔物。という事は危機の原因は人間である事が多いです。そうでなくとも人間に仲間を殺された経験を大体の魔物はしているので好かれていないんでしょう。

 まぁあなたの場合は嫉妬も多少混じるかもしれませんが」


 なるほど納得。とはいえ不便だし周りと少しは仲良くなりたい。イエナと今の101番のマスターの関係を見るに、あの人は後輩への面倒見が良さそうだし、認められれば他のマスター達とも仲良くなれるかも。

 ダンジョン関係が進展したところで商売に戻ろう。このために作りすぎて余った武器は……もしかしたらアングル王国が安値で買ってくれるかも。今更工場を停止するつもりは無いし。


 幸いにもゼロフロア住民への被害は少なくて済んだ。こちらの復興はそう時間もかからないと思う。

 私はブラックリ村に行くとダンジョンが元に戻っていたと報告した。


「そうですか。報告ありがとうございます。おかげで、また冒険者達が戻ってきてくれるでしょう。ところでアオバ様は、なぜそんな頻繁にダンジョンに行っているのですか?」

「いえ、私の村も冒険者達で潤えばと思いましてね」


 ギルドの受付嬢にそう聞かれて慌てて言い訳しておいた。さて、より多くのポイントが必要な今、何か稼ぎ方を考えないと。そろそろ村の方にテコ入れをするのもありかもしれないね。


 私は未だ移民のあばら屋が多く存在する村の端の方に歩いて行った。彼らの多くは、元いた村人に雇われて働いているけど、人によっては有能な人も多い。

 力をちゃんと活用すればブラックリ村の生産力も上がってくれるはずだよ。

話の流れには特に影響しませんが、少し前に投稿した“ゼロフロア地図など”で、地図の説明にも関わらず町の名前を書き忘れる失笑ミスを犯していたので修正しました。笑

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