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武器商人

「じゃあシアンちゃんとオレンジの教室はあっち側だっけ。また後でね〜」


「私だけちゃん付けはなんか寂しいから呼び捨てにしてってさっきも言ったじゃん」

「そうだった。ごめん。なかなか慣れなくて。じゃ私はこっちだから」


 は〜。この授業は2人ともいないから少し寂しい。


「はい。それではペアを作ってください」


 な、なんだと。先生、そんな蛮行は流石に私も見過ごすわけには……。


「ねぇ。私とペアを組んでくれない?」


 先生、命拾いしましたね。さっそくその子と課題に取りかかった。


「私はシトラス。アングル王国の伯爵家の娘よ」


 アングル王国は今もマシア王国と戦争中のはず。留学生なんて珍しい。まぁいいや。


「私はアオバです。この国の準男爵をしています」 

「知っているわ」


 え? この授業で何か目立つ事した覚えは……。


「私の家は軍にも多少関わりがあるの。ウェクス王国からの援助物資であなたの商会の名前を何度か見たわ。あと話しにくいからタメ口でいいわよ」


 それならお言葉に甘えて。


「助けになっているなら良かった。今日話しかけてきてくれたのは、その件と何か関係でもあるの?」

「察しがいいわね。その通りよ。でもこの先は授業が終わったら別の所で話しましょうか」


 ちょうど今日はこれで授業は終わり。私はそのままシトラスの家に連れて行かれた。伯爵家の中でも裕福なのか、近くに家を借りているらしい。


 使用人もコック含めて2人。良くそんな余裕あるね。前線から離れた家なのか何か理由があるのか。まぁいいや。


「お客様にお菓子とお茶をお願い。あと例の物も」

「かしこまりました」


 例の物。響きがいいね。私も今度言ってみようか。


「こちらです」


 そう言って使用人が持ってきたのは長細い木箱。

 出されたクッキーをいただきながら何か聞く。にしてもこれ美味しいな。今度店を聞こう。


 木箱からシトラスが取り出したのは銃だった。

 思わず身構える。まずい。秘密がバレたかな。


「ふふ。大丈夫よ。弾は入ってないわ」

「お戯れを……」

「驚かせてごめんなさい。これは軍が配備している銃よ。あまり見せびらかすわけにはいかないから、こうして家に誘ったわけ」


 なるほど。確かに自国の武器なんて誰かに見られたら困るもんね。ウェクスとも仲が悪いマシア王国のスパイは王都にもいるだろうし。


「さて、アオバ。あなたの所はこれを作ってと言われたら作れる? せめて銃弾だけでも。ウェクス王国と共同開発したものだし、設計図は渡すから」


「なぜ私に直接? それに私は仕入れるだけの商人だからなんとも……」

「隠さなくても、あなたが商品を自分で作っている事はすぐに分かるわよ。大丈夫。別に言いふらさないし、場所を詮索したりはしないわ」


 まぁそりゃ調べれば分かるか。そこは仕方ない。


「あなたにお願いする理由ね。それはウェクス王国が自国の武器の輸出を拒むようになったからよ。特に銃弾や砲弾の援助はほとんど無くなったわ」


 それは不思議な話だね。この国は別にアングル王国を見捨てたとは思えない。

 最近も私は援助用の包帯とか剣を納品した。となると、もしかして……。


「ただでさえ少ない魔法使いや優れた剣士はもう既に戦いでずいぶん減ったわ。そこで庶民でも扱える銃が必要なんだけど、鍛治職人はもう総動員でこれ以上増やせない」


 それで私に頼んできたわけか。という事はこの国に私はそこまでの技術力が無いと思われてるわけ?

 ひどいなー。でも出来るか分からないのも事実。


「ごめん。ちょっとお手洗いを借りてもいい?」

「もちろん」


 一度席を立って誰もいない中庭でマスター通信を使う。マスター画面は他人には見えないから最悪独り言を言ってる変な人と思われるだけだ。

 それもちょっと嫌かも。


「ねぇキング。銃を作ってって言ったら出来る?」

「それはダンジョンのためになる物ですか?」

「もちろん」

「それなら必ずやり遂げます」


 話が早い。ほんと頼りになるモンスター達だ。でももし銃が作れるとなれば売る以外にも重要な使い道がある。


 ポイントを大量に使っても良いからやり遂げるように頼んだ。手先の器用なモンスターでも召喚して頑張ってもらおう。


「さっきの話だけど条件次第で受けるよ」


 部屋に戻ってシトラスと握手をした。向こうもホッとした感じを隠せていない。


「それじゃあ作って欲しい量だけど月に銃を1000。銃弾はあればあるほど助かるわ」

「銃は少し時間がかかるかも。銃弾はしばらくすれば届けられると思う」


 こんな所で設計図を手に入れられるなんてラッキー。ずっとアングル王国のために色々作ってきて良かった。

 売る分よりも少し多く作っておこうか。


「それで代金なんだけど」

「分かっているわ。なんとか用意する」


 シトラスの表情は一転、少し悩んだ表情になった。そりゃ今のアングル王国は戦費で予算は火の車だろうしね。そこで私は良い事を思いついた。


「月2千万コイン。いえ、おそらくさらに拡大するだろう取引を提案してくれた感謝を込めて私もアングル王国に貢献したい。少し高く買ってくれるというのなら高級家具で代金を払ってもらうという案もあるんだけど」


 戦争中のアングル王国で高級家具なんて買う人はそういない。それに周辺国の経済は回復途上とはいえ、前の寒波の影響は残っている。みんな贅沢は後回しだ。

 職人は軒並み仕事が減っているはず。それにアングル王国相手なら御国のためという事で多少安くても職人達は仕事を受けるだろう。前線で戦うよりは良いだろうし。


 もちろん売り先は考えてあるよ。ゼロフロアだ。

 ゼロフロアは豊かになる一方で、ますますモンスター達は贅沢になってきた。想像してたダンジョンマスターとモンスターの関係とは少し違うけど、それを対価にみんなが仕事を頑張るっていうなら安いものだね。


「それでは契約成立ね」

「助かったよ。ありがとう」

「こちらこそ。アングル王国にもそのうちいらっしゃい。悪いようにはしないわ」




 それからしばらくして試作品が完成したと報告が来た。多くいるゴブリンスミスでは銃弾が限界で、今まで頑張って鍛治を習得させてきた一部の黒エルフ達が大活躍しているって聞いた。

 代わりに剣とか防具の生産量が落ちてしまったけど、銃弾を納品する代わりにオレンジの家のコネで軍の旧式品を払い下げてくれるらしい。その間に他のモンスターに鍛治を覚えさせればいっか。


 子爵家ともなると色々とコネがあるみたいで助かった。特に特別な技術も使われてないし、旧式品ならとアングル王国への輸出用に回す事も許可された。


 ウェクス王国軍からしても売った利益分、予算が増えるわけだから国の命令でウェクス王国からの援助という形でアングル王国に渡すより、お金で買ってくれる私に売った方が良いんだろうね。

 これで約束を守れなかったって汚名は回避。別に今までに売った剣とかが特別品質が良かったわけでも無いし、今のところアングル王国から文句は来ていない。


 やっぱり学院に来て良かった。コネ最高。

 そうして喜んでいる所に学院のデメリットの方もやってきた。ちょうどテイマー用のクラスが終わろうと言う時に先生が言い出したんだ。


「皆さん来週の授業ではダンジョン探索に行ってもらいます。詳細は追って連絡しますが、1日かけて全ての戦闘に関係あるクラスと合同で行います。剣術、攻撃魔法などなどたくさんあります」


 誰かが先生に質問した。


「俺たちテイマーは本体弱いし不利じゃないですか?」

「もちろん個人じゃない。君たちには最大5人までのグループを組んでもらいます。誰を選ぼうが何人で組もうが自由です。合格の条件はグループの人数によって異なりますが一定額のコイン相当の魔物を討伐する事です。他に質問がなければ今日は解散!」

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