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空の旅

この学院の生徒は貴族の卵たち。当たり前だけど領地を持ってる貴族はたくさんいて、少なくない頻度で帰省するための連休が用意されている。


 そういうわけで連休前は校庭が各家が用意した馬車でいっぱいになる。勇者と王族だけは別の場所があるらしいけど。いいな~。


 上級貴族は金ぴかで、お付きの人がたくさんいる絵本に出てきそうな豪華な馬車。

 後はお金持ちが多いブルジョワグループも豪華な馬車だけど、大事な取引先だったりする上級貴族に気を遣って少し下のランク。


 中級になると見た目は豪華だけど乗り心地の悪い馬車になってきて、下級は見た目も性能も良くない馬車になる。

 見てるだけで色々分かってくるから結構楽しい。


 「あの、私も早く快適に連れて帰ってくれるって本当ですか?」

 「もちろんだよシアンちゃん。私に任せて」


 私はシアンちゃんも誘って今回の新兵器をここで使うつもりだ。王都住み以外のほぼ全校生徒が集まるこの時間は最高の宣伝タイムだもん。


 「あれ~? あなた達貧乏すぎて、ついに乗る馬車すら無くなっちゃったのかしら? 見てよ私のこの馬車、立派でしょう? しかもたくさんの人が乗れる魔法まで掛かってる特注品よ」


 馬車に乗る気配のない私達2人を見てブラックさんが笑いに来たみたい。暇なのかなぁ。

 ブラック家の馬車を見ると、どう考えても彼女の家には不釣り合いなピカピカの馬車が停まっていた。


 しかも取り巻き全員が入るほどの大きさにまでなる魔法って……一体いくらしたんだろ。また新しく税金を増やすのかな。そんな無理しなきゃいいのに。


 ま、アンバー様にも怒られたしブラックさんにも私の新兵器を見てもらおっかな。

 校庭に大きな影が出来る。


 「おい、あれなんだ? 飛んでるぞ!」

 「モンスター!? いや、紋章が付いてる。もしかして使い魔か? 一体どこの家が……」


 翼を広げたら10メートルを超すモンスター、怪鳥。使ったポイントに対しての戦闘能力は微妙だけど、あの子達のすごい所は積載力。少し強化をしたら小さな家1軒くらいなら持つ事も出来る。


 そんな怪鳥を数十万ポイント使って強化した子ならなんだって持てちゃう。私はこの子を、最近実験段階に入った飛行船とかいう物として使う事にした。


 怪鳥から人が乗る箱をぶら下げる感じ。怪鳥はあんなに大きな翼を持っときながら魔法で飛ぶから快適性は抜群!


 安全テストにはキング達は苦労したみたいだけどね。ダンジョンの海を渡るテストでうっかり船の近くに箱を落としたって聞いた時は流石に背筋が凍ったよ……。


 「マス……ご主人様。お迎えにあがりました」


 この怪鳥を操ってるテイマー……という設定の人化スキルを使った黒エルフが中から降りてくる。

 ブラックさんはどんな顔してるかな~♪


 「うん。うちは貧乏だからこっちに送ってこれる馬車なんて無くて……代わりにこっちに乗る事にしたんだ」

 「へ、へぇ。そう」


 びっくりして返す言葉も思いつかないみたい。ふふん。


 「じゃあ行こうシアンちゃん」

 「え、え、はい?」


 シアンちゃんまで固まってどうするの!

 石像と化したシアンちゃんを引っ張りながら乗り込む。内装はシンプルでテーブルとイスくらい。


 これは速さ重視だから居住スペースになる箱を小さくしたけど、今後は別の魔物も使って、遅いけど多くの人を運べる豪華客船バージョンとか荷物運搬用とかも建造予定になってるよ。


 「えっと……これで私達の故郷までどれくらいですか?」

 「大体3時間くらいかな」

 「い、今までの4倍以上速い……」


 ついにシアンちゃんが倒れちゃった。このまま寝かせとこ。そんな事をしてるうちにもう空の上。学院がどんどん小さくなっていく。


 「マスター。お飲み物をどうぞ」

 「ありがとう……っと。ちょっとこぼれちゃった。やっぱり少しは揺れちゃうね。どうしたものかなぁ」


 「そうですね。いずれは改善したいかと。作ってくれた方に伝えておきます」

 「そういえば今回は黒エルフ達が大活躍してくれたんだってね。モンスターの扱いが上手いって」


 下を見るとどんどん景色が変わっていく。山も川も町も関係ない。全てを一直線に超えていく気分は最高だよ。

 しばらくするとシアンちゃんが起きてきた。おはよう。


 「ここは?」

 「たぶん国の中部らへんかな」

 「本当に便利ですね。この辺の峠を越えるのがめんどくさかったのに」


 私も1回通ったけど坂で馬車が揺れるし、盗賊や魔物が出るから護衛もいるしで本当に苦労するよね。

 シアンちゃんがいつもの穏やかそうな顔から、キリッとした貴族令嬢の顔に変わる。


 「この飛行船って何隻くらいありますか? 無理を言ってるのは分かってますが、たまにで良いので私の領地に交易用に回してくれませんか?」

 「もちろん良いよ。今も小さいのを7隻、大きいのは3隻建造中だし。この後も増やしていく予定だよ」


 シアンちゃんの領地は山の間に村が点在してる。交易商の赤字をシアンちゃんの家が補填し続けている状況だ。

 この申し出が来るのは予想してたから枠は取ってある……けどもタダじゃないよ。商人としてそこはシビアにいかなくちゃ。


 「10……!? そんなにたくさん優秀なテイマーをどうやって……」

 「それは企業秘密かな♪ いくらで雇う? シアンちゃんなら安くしとくよ?」

 「うっ……それは私の一存じゃきめられないです。そうだ、私の実家に1日泊まっていきませんか? そこで話し合いましょう」

 

 



 その誘いに乗った私は進路を変更してシアンちゃんの領地、マウンテ男爵領に向かった。


 「初めまして。私はアオバ・ブラウン準男爵です。お招きいただきありがとうございます」

 「あぁよろしく。マウンテ男爵家当主のコバルトだ。こっちは妻のセルリアン。

 君の事は娘からも良く聞いてるよ。お互いに貴族家の当主だが娘の友達だ。礼儀など気にせずに、自分の家だと思ってくつろいでいってくれ」


 シアンちゃんの家は領地で1番大きな村のはずれに建っていた。ここの村はブラックリ村よりも小さいけど、のどかで住んでみたくなる雰囲気。真ん中に建ってる教会の鐘の音が心地いい。


 辺境の弱小貴族は知り合い同士であまり礼儀を気にしない。いちいち友達同士で気にしてたらつまんないじゃん? 

 この言葉は素直に受け取って娘の友達モードでいっても大丈夫そうだね。


 「廊下ながいな~。すっごく家広いね。これ何部屋あるの?」

 「うちは私を入れて11人の大家族なので……今は私以外は働きに出てるので広く見えますが、全員が集まると結構せまくなっちゃいますよ」

 「11人!?」


 あまり家族の事は聞いた事無かったけどそんなにいるなんて。全員学院に通わせるなんて両親ともがんばったね……。

 兄弟たちは今は領地の村の運営、王都や他の街で役人とかをやってるらしい。シアンちゃんはその仕送りで学費を賄ってるとか。すごいなぁ。


 「こっちは食堂です。あっちがお風呂場で……」


 まとめると玄関を通ると階段付きの広間があって、そこから左の方に厨房と食堂がある。食堂なんて大きな長テーブルが置いてあってビックリしちゃった。そりゃ11人いて、たまにお客さんだとこうなるよね。


 逆に玄関から左の方に行くとお風呂場、書斎、応接間とかの仕事用の部屋が固まってる。そして玄関からすぐの広間の階段を上ると家族全員分の部屋があるんだって。

 そしてその下、1階部分は倉庫として使ってるみたい。

 

 「アオバさんはこっちの部屋を使ってください。何かあったら私か、その辺の使用人に言ってくださいね」

 「ありがとう~」


 私は家の左側にある客人用の部屋を借りる事になった。すごい豪華というわけじゃ無いけど、必要な物にはしっかり上質な物を使っていてマウンテ家の性格が見えてきた気がする。


 この家は丘の上に立ってて窓から村が見えてくる。ちょっと散歩してみたいな~。


 「ねぇねぇシアンちゃん。村に行っても大丈夫? 飛行船に乗って全部の村を回ってみたいな」

 「もちろんですよ。せっかくだし私と一緒に行きましょう。着陸場所の関係で全部は難しいかもですけどね」


 畑の間を2人で歩いてると色んな人が声をかけてきた。


 「おはようございます領主様」

 「この野菜を食べてください領主様」


 シアンちゃんの家はこの村で大人気みたい。領民に慕われてるなんて良い領主の証だね。

 マウンテさん達の努力のおかげで治安も比較的マシだし、これは優良物件みつけちゃったかも?

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