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やっちゃえウルフ!

 「私だって故郷で魔物との戦いくらい何回もしてるのよ。身体強化!」


 このクラスに来るような生徒はだいたい田舎で狩りもする貧乏貴族だもんね。なんか急に親近感が……。

 相手は戦いから固いビンを開ける時まで貧乏貴族の十八番、身体強化で足と腕の筋力を上げてきた。


 「ウルフ。噛みついちゃえ」

 「はぁ? あなたバカなんですの?」


 魔物が噛みつこうと飛びかかってきた所を剣で受け止めてトドメをさす。これがウルフ系の基本的な倒し方。それをそのまま使い魔にさせようとする私への直球の悪口を言えるのも今のうち。


 バリリ


 ウルフが噛んだ剣をそのままかみ砕いた。


 「えっ……うそ。この剣はそれなりに硬いはずなのに。ファイアボール」


 武器を無くしちゃった相手は魔法で対抗してきた。でも学生が使う魔法なんて私のウルフにとっては無いも同然。3発が直撃してもフワフワの毛さえ傷つけられなかった。


 「まだ続けますか?」

 「……降参しますわよ」


 やったぁ! 見たか私の……いや、ダンジョンの実力!


 「ありがとうウルフ。戻って」

 「待ちなさい」


 ウルフを収納しなおそうとしたら相手の子が止めてきた。まだ何かあるの? 相手は下級とはいえ貴族。しかも私より普通に上の家柄。目を付けられたらめんどうだなぁ……。


 「他のウルフより明らかに強いわ。私の家は魔物学に力を入れてるの。後学のために触って調査してみてもいいかしら?」

 「……いいですよ」


 ちょっと触るくらいならいっか。何かしたら許さないけど。魔物に詳しいなら私も恩を売って損はないでしょ。


 「はわ~かわい~」

 

 と思っていたんだけど、どう見てもモフモフをなでているようにしか見えないんだけど。

 ……この子とは仲良くなれそうだね。


 「アオバさんって強いんだね。そのうち戦ってみたいな」

 「ゴールドくん勇者でしょ。無茶言わないでよ~」


 1回戦った事があるなんて口が裂けても言えない。

 それから休み時間になるとたびたびゴールドくんが教室に来るようになった。


 「あっもうすぐチャイムが鳴っちゃう。じゃあまたねアオバ」

 「おっけー。じゃあねゴールドくん」


 なんだかんだゴールドくんは良い子だった。ダンジョンマスターと勇者が友達なんて変な気分だなぁ。


 「ねぇゴールド様とどんな話をしたんですの?」

 「待ちなさいよ。私が先に教えてもらうのですわ」


 あーもう、ひっそり学園生活を楽しむ予定が~!




 「おかえりなさいマスター」

 「ただいまエリー。会いたかったよ~!」


 3連休に入った私は、同じく帰省するオレンジちゃんやシアンちゃんにバイバイしてダンジョンに帰ってきた。

 

 「キング。調子はどう?」

 「問題無しです。ちょうど海辺に新しい村が出来たんですよ。本村はモンスターが増えすぎて土地も高くなってきたので、新しい土地を開拓しようって事らしいです」


 「順調そうで良かった。また土地も広げなくちゃね~。またポイント繰りが大変だなぁ」

 「マスター。ちょうど前に狩られたモンスターの再配置が終わりました。あと第2層に新しくスケルトンを50体ほど増やしときました」

 「ありがとうエリー」


 貯めたポイントを一部使って私は1~3層の強化をしといた。そして明日、ついにギルドからの偵察部隊がダンジョンに来る。もちろん交易が1番だけどバレちゃったもんは仕方ないよね。やっと冒険者が来るなんてワクワクしちゃう!




 「今からダンジョンに入りますが、まだ未登録でどんな危険があるか分かりません。皆さん気を付けてくださいね」


 次の日、ブラックリ村のギルドには3人のCランク冒険者が集まっていた。この人たちは普段はマイカ子爵の町で活動してるんだけど、この調査のためにギルド側が呼んでくれたんだよ。


 そこにギルド職員の人と発見者と領主として私も付いて行く事になって即席の5人組パーティーを作った。中で危ない事が起こったらだめだもんね。しっかり見張ら……見守らなきゃ。


 歩いて6時間。全員が身体強化を使えるから思ったよりも早かったね。


 「この森やけに静かだな。もっと魔物とかで溢れているかと思ったが」

 「少し変ですね。強い魔物でも近くにいるのかもしれません」


 のほほんと平原を歩いていた時とは一変して、パーティーは戦闘態勢に入った。ただ単にコロニーのみんなの縄張りってだけだから周りに何もいないよ……とは言えないよね。


 当然のように何事もなくダンジョンの入口に着いた。うっそうとした木々の間にポッカリと開いた穴が見えてくる。外からは短い通路が見えるだけで、すぐに左右に道が分かれているから先は見通せない。


 「結局魔物には1匹も会いませんでしたね。皆さん、準備はいいですか?」


 持ち物の確認とか水を飲んだりと少しだけ休憩をとってから、パーティーリーダーのギルド職員を先頭に足を踏み入れた。自分のダンジョンに冒険者として入るのって変な気分だなぁ……。


 「オラァ!」

 「プギィ……」


 1階層のボス、ハイオークが倒された。最後のギルド職員の攻撃すごいなぁ~。この人が1番強いんじゃないの?

 聞いたら元Bランク冒険者だって。ギルドはこういう時のために戦闘要員もたくさん雇ってるらしい。うへぇ。


 「ふぅ。この分なら1階層は最低ランクより1つ上程度の冒険者でも大丈夫そうだな」

 「そうですね。1人だと厳しいですが、2人以上のパーティーなら許可を出しても良さそうです。念のために奥には行かないように注意しとかなくちゃいけませんが」


 なるほどなるほど。この情報を元にして私も後で少し配置換えをしとこうかな。まずは宝箱の中身も調整しなくちゃね。

 初心者を呼び寄せるためにオークは減らして、逆にパーティーで来るならコボルトとゴブリンは増やしてもいいかも。


 さーて次は2階層か。暗い階層だから罠にだけは私も気を付けなくちゃ。


 「それじゃあ次に行きますよ。光あれ」


 ギルド職員さんが呪文を唱えると私達の周りに光の玉が浮かびだした。何この魔法、すごく便利じゃん! 今度教えてもらおっと。

 そうして私達は長い階段を降り始めた。

 

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