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楽しい小旅行

貴族との関わりなんて商人の私からしたら喉から5本は腕が出るほどほしい。でもどこまでなら許されるかな? 

 図に乗るなとか言われて追い出されたら目も当てられない……って追い出されるだけで済めばまだ良い方か。


 そんな事を考えながら、いつものようにブラックリ村に入る。


 「アオバさん気を付けてください! 怪しい者が荷台にいます!」

 「私は怪しい者では無いぞ!」


 いつものように顔バスで通ろうとしたら止められた。やっば後ろにアカネを乗せてるの伝え忘れた!


 「迷惑かけちゃってすみません~! この子は私が連れてきました」

 「それなら良かった。無事なら大丈夫ですよ。どうぞお通りください」


 ビックリしたぁ。実際驚いたのは門番の人の方だと思うけど……変な人が荷台にいたのに私を疑うんじゃ無くて忍び込まれたと思われたのはちょっと嬉しい。うへへ。じゃない反省、反省。


 いつものように生活必需品を大量に売った後、今回は私の方からもお願いがある。アカネの服をどうにかしてくれるアテってのがブラックリ村。


 「ガルドさん。工房に案内してくれませんか? 1つ仕事を頼みたいんです」

 

 この村に1つだけある工房はとっても優秀。え? 服を買うのに工房はおかしくないかって?

 チッチッチ。違うんだよ。ここでは物に魔力を込める錬成をしてくれるの。工房なのは基本、武器防具の依頼が多いからだろうね。


 これが高いんだけどね……この村は最近出来たばかりなのに、無限に商品を買うお金が出てくる理由でもある。私も錬成が出来るモンスター探してみようかなぁ。


 ガルドさんに案内されると、村の端に小さな建物があった。中からはカンカンと何かを打つ音が聞こえてくる。覗いてみるとガルドさんとあまり歳の変わらない男の人が1人。


 「こ、こんにちは~」

 「…………」


 返事が無い。ただの……は失礼すぎるからやめとこ。どうしたらいいのか分からなくてオロオロしてたら、横に立っていたガルドさんが笑いながら説明してくれた。


 「ははは。悪いね交易商さん。彼は仕事に集中してる時は外の事を完全に忘れちゃうんだよ。前は工房が火事になりかけても仕事してたくらいさ」


 それ笑えるレベルじゃないよ~! まぁそういう事なら仕方ないか。幸い今日は時間に余裕をもって来たし、明日には終わるみたいだから大人しく待っておこ。


 そうと決まれば今日は宿屋で寝てみよっと。密かに前から1度泊まりたいと思ってたんだよね。なかなか時間が取れなかったけど今ならのんびりでノープロブレム!


 村側も交易ルート化を狙ってるのか、1泊あたりは非常に安くて町での宿泊料の半分。夜ご飯は別料金らしいけど気にならない安さだよ。


 鍵を貰って部屋に入ると……うん、まぁ普通の部屋だね。でもそんな事はどうでもいいの! この宿屋に泊まりたかった理由はお風呂!


 村からの旅をして疲れてる商人や、特に何もしてないけど疲れてるダンジョンマスターへのありがた~い配慮だろうね。後者は無いか。

 

 ベッドの横にあるドアを開けると右に薪が置いてあって、左側が浴室になってる。

 お風呂の水と温めるための火は自前だけど旅する商人は全員この辺の魔法を覚えてるから問題ないのかな? 私もしっかりこのためだけに魔法を覚えてきた。準備バッチリ。


 ……そろそろ良いかな? さぁ服を脱いでお風呂にダイブ!

 まだつめた~い!


 慌てて飛び出した私はつい足を滑らせた。やばい、後ろは確か石の壁……と思ったら誰かに捕まえられた。


 「ふへ?」

 「大丈夫ですか? マスター」


 見上げるとアカネの顔があった。呆れたような表情で私を見てる。お見苦しい所を見せてしまった……。


 「なんでアカネが入ってきてるの!? お風呂は1人で入るよ!」

 「開始10秒でこの大騒ぎなのに何言ってるの」


 そう言うとアカネは手からすっごい強さの炎を出してあっという間に水をお湯に変えた。最初から頼んでおけば良かったな……。

 ぐぬぬ。召喚した頃は妹みたいだったのに最近はなんだか力関係の変化を感じる。ここらで挽回しないと……。


 とりあえず今はお風呂。私は失敗から学べる偉い人間なので、今度はしっかり湯加減を見てから入る。もう失敗はしないよ。

 は~気持ちいい……なんかだんだん眠く……ブクブクブク。


 「マスター起きて!」



 お風呂暖かかった~。疲れもバッチリ取れて元気いっぱい。あれ? アカネはむしろ疲れた感じだね。完全に私のせいですよねすみません。


 コンコン


 「ん? は~い」


 誰かと思って外に出るとガルドさんが立っていた。


 「どうしたんですか?」

 「あぁ。私の方からも頼みがあるんだけど、良いかな?」


 表情からしてくだらない頼みじゃないのは確かだね。お風呂でバカになってた頭が切り替わる。


 「とりあえず聞きましょう。村長さんのお願いなら出来るだけ聞きますが」

 「それはありがたい。じゃあ説明するぞ」


 話は簡単。ちょっと前から始まった隣国の戦争で、国境近くのこの町には少数の移民がやってきたらしい。

 

 最初は余裕があったブラックリ村は人口増加を狙って受け入れていたけど、来た人たちから聞けば後からもっと多くの人が向かってきてるらしくて受け入れるべきか迷ってると。


 なんでそんな事を私に? と思ったら食べ物とか木材が不足するから、売ってもらえるかって相談だった。予想される注文量を見て私は一瞬固まる。

 

 ゼロフロアもモンスター達は増えてるし、町のお店もお客さんは増える一方。そこにこの量は……やばい。


 でもブラックリ村の発展と、もう1つ思いついた事を実行すればダンジョンは大きく前に進めるはず。

 

 移民の人たちも追い返すのは悪いしね……というか大人しく帰れば良いけど、小さな村だから断ったらそのまま襲われるのは間違いない。


 奪われて逃げてきた人が今度は奪う側にジョブチェンジなんて世も末。こんな所まで兵士は様子を見に来ないしなぁ……。


 でも私は商人。苦難の先に利益があるのなら、もちろんそっちを選ぶよね。


 「いいですよ。私が全てなんとかします。ただ引き換えの条件があります」

 

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