校外…ダンジョン外学習
最初は川沿いから。この大きな川は漁、運輸、生活用水とゼロフロアの基盤になってて基本こっち側が発展してて楽しいからね。
村に入って最初に目に入るのは港。あ、これ一番最初に作られた港だ。ダンジョンが出来てすぐに漁に使ってたやつ。
「気づきましたか? 私が最近建て替えるように指示を出したんですよ」
仕事があると帰っていったキングの代わりにやってきたエリーが少し上機嫌に教えてくれた。すっごい得意な顔してるよ……最近目しか顔がないエリーから感情の機微が分かるようになってきた。ソムリエを名乗ろうかな。
昔は小さな桟橋しか無かったのに、今はそれも2本に増えて漁船が2桁は泊められている。それより目立つのが横の倉庫。
他の2つの村から入って来た物だけじゃなくて、私の交易用の物資置き場や村人用の物のほとんどが集められている。
そして港の横に置かれているのが市場。あの町ほどじゃないけど数軒の露店が並んでいて飲食店まである。
「最近はゼロフロア特有の調理方法なんかも生まれてきてるので、そのうち新しい料理が出来るかもしれませんね」
「そうなったら通うしかないね」
「そういう真剣な表情はもっと大事な場面で使ってください」
そして村役場とその周りに広がる住宅地。家はだいぶ増えたけど、こっち側の風景は変わらないなぁ。それを越えるともう1つの目玉が見えてきた。それはホブゴブリン達が働く広大な畑。
というのも実のところダンジョンでも食料の余裕が減ってきてるんだよね。ジョージさんも取引先を少しずつ私に切り替えてく方針で、今は大丈夫でも今後が怖い。
最初はダンジョンを広げようとしたんだけど狩場とかが遠くなりすぎちゃうって言われちゃったからね……。農業なら安定するしみんなも安心でしょ。
小麦中心にいくつかの野菜も植える予定だけど、種を用意するのに結構なポイントがかかっちゃったから失敗するわけにはいかない。本当は町で買えたら良かったけど今の状況じゃね……。
そして私はエリーとマスタールームに戻って……気づいた。
「そういえば未だにダンジョンの1層目があのままってやばくない? 魔物対策って大丈夫?」
「そういえば何事も無かったので考えていませんでしたね。新しい出入口もあるし確認してみましょうか」
エリーが目から光を出して壁に過去のダンジョンの映像を映し出す。え、何それかっこいい。今度からマスター画面とかも全部あれやってもらおうかな。
そう言うとめんどくさいって一蹴された。冷たい……。
早送りで動きがあった時だけ確認って感じでいいよね。とは言っても入ってくるのはゴブリン、コボルト、はぐれた1匹オークetc。
ついに私が寝転がってお菓子片手に見るようになった頃にそれは来た。
オーガ。新人ダンジョンにとっては恐ろしい敵。まぁ普通は数か月もすれば守れるようになるけど私達は油断しすぎてた。
何の恨みがあるのかコボルト達を蹴散らして一直線にボス部屋へ。
ボスに選ばれたことで強化されてるとはいえ守るはオーク。ジリジリ押されて……と、ここでオーガは急に帰っていった。魔物のやる事だから何故かは分からないけど、これは運が良かっただけだ。
もしこのままゼロフロアまで侵入されていた時の被害を考えると背筋が凍る。
「マスター。これは最優先で対処するべきです」
「賛成。せっかくだし誰かお手本を見たいね」
さぁ自分の出番だとばかりのエリーの視線から目を背けつつ私はある人を思い出した。私の中でダンジョンのプロから村経営のプロにジョブチェンジしたエリーの代わってその座についたのはやっぱりイエナちゃん。
彼女は同世代のダンジョンの中でも結構上手くいってる方だし頼りにしたいところ。
「イーエーナーちゃん。ダンジョン見学させて~」
「急に通信を繋いできたと思ったら……私だって暇じゃないのよ? ……まぁ今は暇してた所だしゆっくりしていきなさい」
多額のコインと引き換えにジョージさんに取り寄せてもらった有名店のケーキを前に、ハンドスピナーもびっくりの手のひらを持つイエナちゃんは優しく迎え入れてくれた。
ちなみにイエナちゃんのダンジョンは結構遠いんだけど、ポイントを支払う事で相手のダンジョンに移動する機能がマスター画面にある。相手のダンジョンの外には出れないけど便利で助かるよ。
「ふーん魔物に負けかけたねぇ……あなた自分の仕事はなんだと思ってるのよ」
「えへへ。ダンジョンマスターやらせてもらってまーす」
「大体の魔物は冒険者たちが勝手に倒してくれるから、あんまり考えた事無かったわね。とりあえず私のダンジョンを見せてあげるわ。今度あなたのダンジョンにもお邪魔していいかしら?」
「ありがとう! もちろん大歓迎だよ」
とはいえ私のダンジョンとは違って、こっちは冒険者が入ってるまともなダンジョン。夜が近づいて少なくなってきたとはいえ会わないように気を付けないと。
「まずは……これがうちのボス。ハイデーモンよ」
そこにいたのは見るからに悪魔って感じのモンスターだった。2本の角に大きな槍を持って、禍々しいオーラを放っている。これが相手だとオークだと20体ほど束になっても敵わない。
よし私もこのレベル……は流石にポイントが持たないから、もう少し控えめな感じで頑張るぞ~。




