第三勢力、王家参戦!
ダンジョンに着いた私はすぐにキング達から商品を買おうとする。
「キング。今日も売ってもらえる?」
「すみませんマスター。今は余ってる食べ物はほとんど無くて……高くなっても良いのならかき集めますが」
なんで……そうか。ここ最近で大儲けしたのは私だけじゃない。ゼロフロア経済だって絶好調で、みんなお金を結構持ってるはず。そうすると私より高い金額を出してお腹いっぱい食べたいって思う子がそりゃ出てくるよね。
「くっ……やっぱり自由にするべきじゃ……」
「闇堕ちが早すぎますよマスター。やはり見直すには早すぎましたか」
「あぁ待って今のは冗談だからチヤホヤして~」
マスタールームでエリーと話しながら、ここ最近のゼロフロアについて確認する。大量に食べ物を買えるようになったゴブリン達の人数はもちろん増えた。そこにゴブリン達の成長の速さと相まってあっという間に限界レベルだ。
黒エルフ達はいいんだけど……これじゃブラックリ村の分すら足りなくなるかも。それだけはまずい。ここまで積み上げてきた信頼関係は壊すわけにはいかない。
ふと昨日町で買った新聞を思い出した。現実逃避に読むか……最後のページの4コマ漫画だけが今の癒し……。あっ。
「ついにここまで」
「うん? どうしましたかマスター」
人口が増えたのはタイミングが良かった。エリーへの返答は後回しにして、私はすぐに立ち上がってキングの所まで向かう。
「キング。今がピンチでチャンスなの。強制権を使っても……いい?」
「……マスターを信じてよろしいので?」
「うん。後悔はさせないよ。ちょっと大金を稼がなくちゃ」
「それでしたら我々は全員あなたに従いますとも。あなたはマスターなのですから」
「ありがとう」
それから私は村でも町でも売って売ってお金をかき集めた。キング達への支払いは待ってもらって、稼いだお金をポイントにして黒エルフとゴブリンメイス達をどんどん増やす。
リッチファミリーもその資本力で意外にも安売り競争で追いかけてきた。でもむしろ都合がいいかも。
今までは町に行って物を売った後は空っぽの馬車で帰ってきていたけど、今は大量の羊毛や糸を積んで帰ってきている。
「黒エルフ達はこの糸で服を作って! ゴブリンメイス達は掘り出した鉄で弓矢とか生活雑貨を作ってほしい!」
「マスター。食料の交易を諦めるのですか?」
「ううん。もっと上に行くの」
とにかく時間が勝負。期限までに食料以外の色んな商品を用意して、少しでも多くのお金を貯めなきゃいけない。
ゼロフロアで出来た物はどんどん町で借りた倉庫に運び込んでいく。
もう猫の手も借りたいくらいの日々をモンスターの手を借りて耐え抜いて、ついにその日が来た。
”王家が食料価格安定法を発表!”
冬に入ってからの大飢饉で各地では暴動とか反乱が発生していた。そしてジョージさんに会った日の新聞で、困ってる貴族たちが食べ物の価格をどうにかしてほしいって言ってたと書いてたんだよね。
そして数日前に首都で一部の兵士までもが加わる大規模な暴動が発生した事を受けて今日、ついに決まった。
新聞を見ると王家が決めた値段以上で食べ物を売ってはならないって内容だった。ふんふん。そして商人の赤字の3割を政府が負担すると。
え? 残りは商人負担? まじ? 思ったよりひどいんだけど……。法定価格を見るに……この値段だと春になるまで、いくつの商店が生き残れるか……。
ま、まぁ私としては助かるかな……うん。王様の言う事だし仕方がないか。きっとジョージさんも分かってくれるはず。
「あぁぁぁぁ!!! なんだよこれぇぇぇ! おかしいだろ! なんで赤字の7割が俺ら負担なんだよ!」
ジョージさん全く納得してなかった。気持ちは分かる。
とりあえず話しかけ……今のニヤニヤ顔は直さないと何されるか分からない。落ち着け……ポーカーフェイスだぞアオバ。
「ジョージさん。前にまたお話しましょうって言ってくれましたよね? お話しましょ♪」
「なにを笑ってるんだ君は! 今俺は機嫌が悪いんだ! あっちへ行ってくれ」
おっと直ってなかったか。うっかり素の感情が出てるよ。一人称も俺に変わってるし。
結局店の外で15分ほど待ってたら落ち着いてくれた。ほんとにごめん。
「で? 一体なんの用事だ。うちの店はまだ開店準備中だぞ。忙しいんだから手短に済ませてくれ」
「では挨拶は省いて本題から始めますね。ジョージさん。あの法律での赤字……耐えられそうですか?」
ちょっと失礼な話し方かもしれないけど、相手も今はそんな事気にしてないみたいだしいいや。
今は私との赤字競争で一時は仕入れ原価の7割程度で売ってたはず。そこに人件費とかかかって、彼ら貯金なんか紐無しバンジージャンプ状態だと思う。
「……君は同業者だから分かるか。そうだな確かに厳しい。が、君も同じはずだろ? 今更何かあるのか?」
「もし法律で決められた額で売っても利益が出るとしたら?」
「なっそんな上手い話が……あるから君は未だに商人を続けられているのか」
さすが大商人の一族。頭が柔らかいし決断が早い。自分で言うのもなんだけど良く信じてくれたね。
「それが出来るとしてなぜ俺にそんな話を持ってくる?」
「このまま私達は争っていても、どちらかは大損害でもう片方は潰れるでしょう。あまりいい話じゃないと思うんですよ」
まぁリッチファミリー自体は大赤字ながらも大丈夫だろうけど、間違いなくこの町の店は閉店。そもそもここしかない私と違って、ファミリーからしたらただの一店舗だから撤退も早いはず。
そうなると店を任されてたジョージさんの評価も……。それは本人が1番分かってるはず。
「なるほど……しかし今度は君の利益が薄くなる。このまま競争すれば勝つのは君のはずだ。なんの狙いだ」
「私は露店じゃなくもっと儲けたいんですよ……でもあんまりお金を持ってないし、人の管理のノウハウに関してはジョージさんはプロでしょう? ここで力を合わせればウィンウィンです」
「俺に銀行の真似事をしろと言う事か……うん……いや……うん……いいだろう。話だけでも聞いてやる」
おっとジョージさんって俺様系か?
いやいやそんな事はどうでもいい多様性だよ多様性。コホンと咳払いで大物感を出した私は満を持して口を開いた。




