大儲け
町での商売はちょっとめんどくさい。村だと村長さんとかに許して貰えばいいし、基本的に珍しい交易商を断らないんだけど……町だと役所に行って許可証を貰わないといけないし、安くない手数料まで取られちゃう。
この辺の手続きをしないと困るって事は行政がしっかり仕事をしてるって事だから、安心と言えば安心なんだけどね。
ひどい町だと汚職や犯罪がはびこって、まともな経済が回ってないんだとか。ぼったくりなんか可愛いもので、ギャングに詐欺、ライバル店を放火と世紀末らしい。よく人が住んでるよね……。
それに比べればここは天国。近くにあって本当に良かった。
ま、最初は露店から始める予定だし簡単な方か。早く自分の店を持ちたいな~。
数時間ほど身分証の冒険者カードをお供に、いくつかの部署で渡り鳥してやっと最後の窓口に着いた。
「はい。これが君に割り当てられた場所だ。この許可証を無くさないように常に持ち歩いておくんだよ。それじゃ頑張っておいで」
「分かりました! ありがとうございます!」
見るからに優しそうな役人さんが見た目通りの話し方でサインをしてくれた。後は兵士が巡回してきたら、これを見せればオッケーって事らしい。
一緒に貰った紙を見ながらあるいて行くと、市場の端の方の小さなスペースに着いた。やっぱり馬車満杯は張り切りすぎたかな……。
とりあえず近くのお店で買ったカーペットを敷いて品物を載せていく。さすがに薪は重いから今回もうちの主戦力の食べ物だ。
少しだけどポイントで交換した果物も売る事にした。今は冬だから珍しくて人が寄ってくるかもって狙いだ。
結果から言うと果物はあまり関係なかった。食べ物が高くなってる今、影響を受けないダンジョン産の安い物はどんどん売れていく。
私としては笑いが止まらないウヒャヒャヒャ……今のはちょっと悪人っぽかった。やめよ。
そこから私は毎日売って売って売りまくった。まさにボーナスステージ。
残念ながらダンジョンから物を運べる人間は私1人しかいないから昼過ぎには売り切れて帰る事になったけども、それにしたって儲かる。
「キング。今日も余った食べ物は全部売ってー。なんでも高く買うからさ」
ゼロフロア経済も絶好調。ゴブリンや黒エルフのほとんどは狩りとかしてるし、それを私が根こそぎ買っていくからお互い毎日笑いが止まらない。
「最近のマスターは機嫌もいいし私達も豊かになれて、このダンジョンは大成功ですねエリーさん」
「私は調子に乗りに乗った状態のマスターに嫌な予感がしますよ……気のせいだといいんですが……。それより仕事に戻りましょうキング」
後ろでエリー達が何やら話しているけど、きっと私を褒めたたえる内容に違いない。ふふん、まぁ私に任せておきたまえよ諸君。
さぁ今日も稼ぐぞ~!
と考えながら普段通り店を開いたのが数時間前。お日様も昇り、いつもなら半分は売れている時間のはずなんだけど……今日はまだまだ在庫が残ってる。
食料不足が収まった? いやそんなはずは無い。今朝読んだ新聞だってどこか遠くの大貴族の子供が成人したとかそんなニュースだった。
私は早めに店を閉めて町の偵察に向かう事にした。市場は異常なし。そもそも私の他に食べ物を売ってる店がほとんど無い。
焼き鳥とかの料理を売ってても、食料品のライバルがいない私にとってのパラダイスだ。
行き先はもう1つ。リッチファミリー。この辺りの大商人一族が経営する企業で、この町にもいくつかの店舗を構えている。売り物の大部分は食料品で、八百屋とか魚屋とかは基本この企業の物だ。
ほとんどの人は私が来るまでここを使っていたはずだし多分……やっぱり。
私の店と同じくらいの値段まで下がってる。しかも魚とか肉という私が売っている商品だけが。ここまで露骨だとみんなも気づくだろうけど……まぁ買う側からしたら関係ないのか。
市場は私にとってのパラダイスじゃない。ライバルを全部潰したリッチファミリーのパラダイスだった。
「おやおや。ようこそいらっしゃいませ。冒険者のアオイさん」
「えっと……あなたは?」
「失礼しました。私はリッチ一族の長男、ジョージと申します」
今会いたくない人ランキング上位の方でしたか。これは失礼。
「なんで私の名前を知ってるんですか?」
「少々調べさせてもらったので……あなたも今日を機に我々の良いお客様になってくれると嬉しいです。では私はこれで……またお話しましょう」
売る側から買う側になれと。くぅ~舐めやがって……って言っても実際にお客さんは奪い返されてる。そりゃ同じ値段で売ってる2つの店があって、かたや露店、もう1つは信用のある大商人なら……ねぇ?
でも相手はだいぶ赤字なはず。私がさらに値下げすれば着いてこれないかな。幸い貯金はそれなりにある。こっちもしばらく赤字覚悟で安売り競争だ!




