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お金の世界

 私は村の広場にゴブリン全員と黒エルフ達も集めて今回の案を発表する事にした。500に迫る人口のせいで、おしくらまんじゅう状態になってる。


 「みんな集まってくれてありがとう! まずはこれを見てほしいんだ」


 そう言うと私は1枚の硬貨を取り出した。見た目は外で普通に使われてるお金、コインに似ている。


 ただ外で使われているお金にはこの国の王様が描かれているのに対して、こっちのは私の顔が描かれている。

 ちょっと恥ずかしい……。


 これは増員したゴブリンメイス達に急いで作ってもらった物なんだけど、適当に外のお金と区別付くようにお願いしたらこうなっちゃった。


 「これからはみんなが頑張った分だけお金を渡す。

 当たり前の事かもしれないけど、今までそれが出来て無かった。これからはお金でみんなは何でも買える。欲しい物を好きなだけ。もう貧しい思いはさせないよ!」


 広場がシーンと静まり返る。あれ? あんまり嬉しく無かった? まぁお金が貰えるって当たり前っちゃ当たり前かもだけど……。


 と思ったら全員すぐに職場に戻って仕事を始めた。どうやら効果はあったようで良かった。


 「本当に良かったですか? マスターの強制権を捨ててしまって」


 ただ1人残ってたエリーが尋ねてくる。ダンジョンマスターにはモンスターに対して強制権ってものがある。

 名前の通り命令した事は命に代えてでもやらせる権利。


 私はさっきの演説でこの権利を捨てるとも宣言した。もちろんダンジョンバトルとか有事の時は例外にさせて貰ったけど……。

 今後のゼロフロアの事は命令じゃなくて、キング達と私の話し合いで決める。


 「もし彼らがマスターの言う事を聞かなくなったらどうするんですか?」


 「その時は私がみんなにとってダンジョンマスターと思える人じゃ無くなっちゃったって事だよ。私はそうならないように頑張るだけ。もし追い出されちゃったら……エリーと一緒に冒険者の旅に戻ろうかな?」


 「あなたって驚くほどお人好しですね……。モンスターの事なぞ考えなくて良いというのに……。そうなったら旅に付き合いますよ」

 「良かった。なら安心だね」


 これからはメイス達に毎月一定量のコインを作ってもらって、それを使って交易用の商品の代金をゴブリン達に渡す。少しだけ税金も貰って、使い道は話し合いで決める。


 漁をしているゴブリンや、動物を狩った黒エルフは村とか、食べ物を欲しい人からお金を貰える。私にはみんなの天国は作れないけど、せめて頑張った分だけでも。


 完全に外と同じ生活だ。ゴブリン達は私の命令だけじゃなくて自由に物事を決められる。それが出来るって信じてる。

 ブラックリ村のガルドさん達は酷い貴族から逃げてきたって言ってたけど……ここでは絶対に繰り返させない。


 「さぁエリー。私達も仕事に戻ろっか」

 「やっと動き出しましたか。もう1時間はここにいましたよ」

 

 「えぇ!? やばいよ交易にそろそろ交易に行く時間なのに!」

 「やっぱりお金なんて導入しない方が良かったんじゃ無いですか? マスターがお金に困る未来が見える見える」

 「なんて不吉な事を……今すぐ村に戻ろっと」




 「マスター。今回の交易の分の食料、あと頼まれていた鉄の用意が出来ました」

 「ありがとう。じゃあ代金を渡すね。はいっどうぞ」


 ゼロフロアで初めての取引。見えるようになった努力の対価にキング達が目を輝かせる。

 と思ったら1割を私に差し出してきた。


 「え……これは何で?」

 「このお金でお酒を買います。マスターならポイントで交換できますよね? 何でも好きな物を好きなだけ買えると聞きましたが」


 「き、君たち最初の使い道がお酒でいいのか……」


 渡した瞬間に酒盛りが始まった。まだ昼なんだけどなぁ……。

 広場にはさっそく露店みたいなのもあって、ホブゴブリンが新鮮な魚を買ってお金を渡していた。


 今日からゼロフロアは大きく変わる。良い方に動くか悪い方か……。きっと成功させてみせる。


 「マスターもどうですか? 初めての酒は絶品ですよ!」


 さっそく出来上がったキングがめんどくさい絡み方をしてきた。やっぱり今後が心配になってきた。


 「私は未成年だからダーメ。代わりにブドウジュースにしまーす。いや隠語じゃなくて本当にジュースの方だから」


 キングが立ち上がってお酒の入った盃をかかげると、周りのゴブリン達も立ち上がる。って私を取り囲みはじめた。怖い何かの部族の儀式みたいだよ。


 「それでは村の未来が良くなる事を願って……かんぱーい!」

 「かんぱーい!」

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