エリア1 第三話 謎の少女 ヒナ
今回は少し長くなってしまいました。なかなかキリのいいところが無くて(汗)
その後、ナト、エル、ミラの三人は町から一番近くにある洞窟を探検した。
そして、洞窟のモンスターからB級アイテム疾風を手に入れた。
疾風は忍者のように戦うミラが一番適任という事になり、ミラが装備する事になった。
そして彼らは、また町の近くの岩で談笑をしていた。
すると、山の方角から誰かが近づいてくる。
「あの〜すみません!皆さんってこれから山の方に行ったりしないでしょうか?」
ナト、エル、ミラの三人に一人のフードを被った人が近づいてきた。
「もし山の方へ行かれるんでしたら、僕もご一緒させてもらえないでしょうか?」
その相手はフードを被ったまま丁寧にたずねてきた。三人はこれまでに、同じクローバーチームの仲間にしか会ったことがなかったので少し警戒した。
「あっ突然すみません〜警戒されてますかね〜?僕はヒナと言います。スペードのAです。」
彼女はフードを取り自己紹介をする。ナト達クローバーチームとは違うスペードチームのメンバーのようだ。
「え〜と、一つ聞いてもいいですか?」
エルがヒナに怪しげに質問をした。
「はい。なんですか?」
「どうしてそっちからきた人間がご一緒していいですか?なんて聞くの?」
エルはヒナがやってきた方角が気になっていた。彼女は山の奥から自分達の方へやってきた。山の奥から町の方へ戻ってきたということは街に帰る途中のはず。だが彼女はご一緒させてもらえませんかとまた山の奥へ行こうとしている。エルはその違和感が気になっていた。
「見たところ一人っぽいけど、他のチームメイトは一緒じゃないの?」
数秒の沈黙。そしてヒナは語り出した。
「実は.......さっきまで僕の親友と一緒にA級武器を探していたんです。でも結局全然見つからなくて。そしたら突然、大量のモンスターに襲われて.......必死に戦ったんですけど........途中で彼女......モンスターの巣に落ちてしまって........それで.......それで......」
ヒナは三人の前で泣き出してしまった。まるで迷子の子供のように。
「だったらさ?最初っから助けてくださいっていえば良かったんじゃない?」
「それは........皆さんって昨日クローバーに補充されたメンバーですよね?そんな初心者の方々に助けてって言っても信じてもらえないと思って......」
ヒナは三人に遠慮していたらしい。三人の心は純粋だったので彼女を信じる事にした。
「その場所ってここから遠い?」
「え?........」
「まだ急げば助けられるかの知れないって事!」
「いや.......でも........初心者の皆さんじゃあのモンスターには...」
三人はすぐに向かう準備を始める。
「皆さん、、本当にいいんですか?山エリアは野原や湖より危険なエリアなんですよ?」
「さっき疾風ってアイテムを手に入れたから、それを実践で使ってみたかったし気にしないで!」
ミラはヒナが気を使わないように優しく話す。本当は実践なんてするつもりはなかったのだが、言い訳には丁度よかったようだ。そしてヒナの案内で三人は山の方へ走り出した。
「あの〜疾風以外のアイテムって持ってたりしますか?」
ヒナは走っている中で三人に質問する。つまり、疾風以外のB級、C級またはA級の武器を持っているのかという意味だ。
「いや?はぁはぁ.....俺たちが持ってるのは疾風だけだよ?....っていうか!ちょっと....はぁはぁ.......皆んなペース早くない?」
ナトはこの中では一番スタミナがないらしく、息が上がっていた。
「悪いけど!...はぁはぁ....先に行ってて...すぐに追いつくから....」
「まじか.......分かったよ。でも一人じゃ心配だから早く来いよ?」
「いや............俺子供じゃないんだけど.........はぁはぁ...」
エルとミラとヒナの三人はナトの言葉を聞かずに先に行ってしまった。ヒナの友達の命がかかっているのだから仕方が無い。
この時、ヒナが少し笑っていたのだが誰も気づいていなかった。
ナトは少し小走りにペースを落とし、たまに歩きながら三人を追いかけた。別れる前にヒナが指差ししていた方角に歩いているのだが、なかなか見つからなかった。すると、向こうからヒナが走ってくるのが見えた。ヒナはナトに気づくと、こちらへと向かって来る。
「ナトさん!あの後モンスターの巣に行ったら私の友人がまだ生きてて、そしたらエルさんとミラさんが!」
ナトはすぐに走り出した。二人の友人がピンチであることを悟って。
「ナトさん!あそこです!あの下にみんなが!」
やってきたのは大きな穴だった。半径100メートルはあるかも知れないかなり大きな穴だった。
ナトは下を確認すると、エルとミラが何か大きなモンスターと戦っているが見えた。
「エル!ミラ!」
ナトは下にいる二人に目掛けて叫んだ。それと同時にナトはある違和感が生まれた。
どうやって降りたんだ.......?
この穴はマンションの3階分の深さはあった。あんな下まで二人はどうやって降りたのか。
そんなことを考えようとすると二人が何か叫んでいる事に気づく。
しかし、何を言っているのかなかなか聞き取ることができなかった。
ナトはもう少し身を乗り出す事にする。
「早く逃げろ!そいつは俺たちをはめたんだ!!」
「え?.....」
その瞬間、ナトの体は宙に浮いた。いや違う、後ろから誰かに押されたのだ。
「本当にさ〜アンタらみたいに群れる奴らって、なんでそんな簡単に他人を信じちゃうのかね〜」
落ちる瞬間、ヒナはそう呟いていた。その時のヒナの顔はナトにとっては悪魔のように見えていた。
ナトはそのまま穴の下へと落ちてしまった。それと同時に、ヒナのすぐ近くにあった岩の壁が動き出し隠されていた洞窟が姿を見せる。
「ナトさ〜ん!ごめんなさいね〜!友達が巣に落ちたって話!あれ〜全部嘘なんですよ〜!でもありがとうございます〜!これでやっとA級が手に入ります〜」
ヒナは悪魔のように下に落ちたナトに叫んでいた。そして笑っていた。まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供の様に。
「おい!待て!全部嘘だったとしても!なんで俺たちを突き落とす必要があるんだよ!」
「あ〜それはですね〜A級の武器が隠されているこの洞窟に入るには、誰か三人がそのモンスターの巣にいることが条件なんですよ〜おかげで無事に扉が開きました〜」
「ナト!来るぞ!」
ナトは後ろに振り返ると、モンスターが突進してきていた。間一髪でモンスターをかわすとそのモンスターはクマの様な見た目をしていた。しかし、今までのモンスターとは比べ物にならないほど体が大きい。
「あ〜がんばってますね〜もっとナトさんとお話ししたかったですけど〜そろそろ行きますね!じゃあせいぜい頑張ってくださ〜い」
「おい!待て!」
ナトはヒナに向かって叫んだが、ヒナはそのまま洞窟の中へ入って行く。もうナトたちには興味がないように。
「さっきあいつが言ってたんだけどさ!熊型のモンスターを倒すには炎が効果的らしいんだけど!」
「だからあの時!ヒナは確認したんだよ!俺たちが疾風しか持っていないことを!」
熊の攻撃をなんとか避けながらエルとミラは話す。三人がここに向かっている時「疾風以外のアイテムって持ってたりしますか?」と聞いてきた。あれは単なる好奇心では無く警戒だったのだ。ナト達が炎系のアイテムを持っていないかと探っていたのだ。
ナトとエルはなんとか攻撃を交わし続けてはいるが、こんなに巨大なモンスターは初めてだった為に攻撃することができなかった。自分達の4倍の大きさはある。
「どうする二人とも!このままじゃ全員死ぬ落ち一直線だよ!」
「そうは言っても!さっきからクナイ投げてるけど全然聞いてないっぽいんだよ!」
ミラはクナイを使って闘うスタイルなので熊に近づく必要がない。だからこそ遠くから攻撃をしているのだが、熊には全く聞いている様には見えなかった。
「メイ先輩が言ってたみたいにそのクナイと一緒に疾風を使えばダメージにはなるんじゃないの!」
「へ?し...疾風ってどう使うんだっけ...?」
「そのリングに疾風のメダルを入れるんだよ!」
ミラはナトの言われた通りにメダルをセットした。すると、ミラの周りを風が包み込んだ。
そしてミラはその風を使いクナイをさっきよりも素早く熊へと投げる。
「おぉ!聞いてるっぽい!」
熊はさっきまでとは違い痛そうにしている。この世界ではプレイヤーもモンスターも、ダメージを受けても血が出る事はない。プレイヤーは自信のパーセンテージが減ってしまうが、モンスターにはそんなものは無くどれだけ体力を削ったかは分からなかった。
「これならどうだ!」
今度は風を使い熊を宙へ浮かしそのまま投げ落とした。すると熊の後ろに洞窟の様なものが見えた。
「なっなんだあれ?」
ナトは洞窟方へと駆け寄った。中を覗いてみると奥の方まで道が続いている。この中に隠れれば助かるかも知れない。後ろへ振り返り、二人に向かって叫ぼうとした。
「ナト!後ろ!」
エルがナトに向かって叫んでいた。ナトが振り返るとさっきまでエルに攻撃をしていた熊がナトの方へと突進して来ている。ナトは攻撃を交わそうとするが間に合わずそのまま洞窟の奥へと吹き飛ばされてしまった。
『ナト!』
エルとミラは叫んだがナトは洞窟の奥へと飛ばされてしまった為、返事をすることができなかった。
「どうするミラ!体力半分切っちゃったんだけど!」
エルは熊の攻撃を交わしながら、ミラに向かって叫んでいる。ナトがどうなってしまったかも分からないが自分達もかなりのピンチである事に脅え始めている。エルの体力は50%を切っていた。ミラも焦り始めていた。
ミラはほんの週秒間だけ目を瞑った。何をするのが一番最善なのかを考える為に。
「エル!俺があいつの目を狙う!そしたら一気に攻撃してくれ!」
「分かった!」
エルが熊を引きつけている間にミラが熊の目を狙う。そして熊の目を潰した瞬間に一気に攻撃するという作戦である。
「こいつを早く倒してナトの所に行かないと」
「そうだね。その為にも.....失敗はできない!」
ミラは風を使い2本のクナイ浮かし、熊の目を狙い始めた。エルとミラはここで倒すという覚悟を決めた。
洞窟の奥へと消えた友を救う為に。
B級 疾風の詳細
武器と一緒に使うことで、風を使った攻撃ができる。風を使った攻撃も可能。
A級武器 風神ほどの力はない。