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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある亀はひとりごちる

作者: 土広 真丘

ご覧いただきありがとうございます。

 ーーああ、やっぱり開けやがった。


 決して開けてはならないと言われた玉手箱を開け、鶴になって飛んで行った男を見送りながら、俺は嘆息した。


 竜宮城に招かれた浦島太郎。帰り際に渡された黄金の箱。

 その中に入っていたのは「時間」だ。


 海の底は異界に繋がってる。異界の竜宮と現世は時間の流れがまるで違う。

 竜宮(夢の国)に数日間いた浦島太郎は、現世(この世界)に帰れば一気に千年の歳をとる。

 お優しい乙姫様はそれを防ぐため、千年分の時間を玉手箱に閉じ込めた。だけど、元は浦島太郎の時間だから、彼から離すことはできない。

 だから姫様は、箱を浦島太郎に渡した。


「この箱を決して開けてはならない」と言い聞かせて。


 でもよぉ、そんなこと言われたら気になるよなぁ。

 開けちまうんだな、これが。そんで一気に老いちまうのさ。今まで俺が連れて行った男たちはみーんなそうだった。


 俺が誰かって?

 俺は亀だよ。浦島太郎に助けられた亀。


 俺も昔、竜宮城で数か月ほどの時を過ごした。それで地上に帰って玉手箱を開けたら、この通りの姿になっちまったってわけさ。俺は浦島太郎より竜宮にいた時間が長かったからなぁ。

 ほら、よく言うだろ。鶴は千年、亀は万年生きるってよ。


 それでよぅ、俺は寂しくなっちまってな。

 ある時ふと気付いたのさ。俺と同じ仲間を増やしちまえばいいんだってな。

 小さな亀が襲われていたら、大体優しい奴が助けてくれる。そんな奴をお礼だと言って竜宮に連れて行くんだ。

 乙姫様は誰に対しても平等に優しい。誰が来ても同じようににこにこして、同じようにもてなしてる。


 だけどなぁ、うまい具合に俺と同じくらいの時を過ごす奴がなかなか出ねぇんだよなぁ。今回の浦島太郎はいいところまで行ったんだが。

 仕方ない。また次を探すか。




 ああ、浦島太郎はどこへ飛んで行ったんだろう。

 長生きしすぎた俺たちは、もう人の道から外れちまった。

 俺たちはこれから、どうしていけばいいんだろうなぁ。


 ーーなあ、誰か教えてくれよ。

ありがとうございました。

浦島太郎は最後はおじいさんになった、煙と共に消えてしまった、などパターンはいくつかありますが、本作では鶴になったというのを採用しました。


亀は自己中心的というキャラクターで書いています。まともな思考があれば他の人間を亀にしようと思うはずがないので、一般的な道徳観や倫理観は持っていません。長い間亀として生きているうちに、人間の良心や善良さは失くしてしまったという設定です。

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