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夏のホラー参加作品

タスケテ、タスケテ、タスケテ


俺が働いている会社はブラック企業。


って言っても、残業代は満額支払われるし盆と正月の休みや有給休暇の日数も他の会社より多い。


ただ、一月の残業時間が100時間を越えるのが普通で、盆や正月の休日前日も残業で帰りが最終電車になるのが当たりまえって言うくらい忙しい。


でも、コロナのせいで倒産する会社や失業する人が沢山いる今は失業する恐れが無く、そのうちぶっ倒れるんじゃないかって思えるほど忙しいのは逆にありがたいと思う。


それに、まだ20代前半の俺が文句を言っては駄目だろう。


高校を卒業してからうちの会社に就職して50年、70手前の係長でさえ老骨に鞭打って頑張っているんだから。


うちの会社、55歳定年が普通だった時代から70歳定年制になっている。


入社日に聞かされた社長の話だと、せっかく育てた社員を50〜60歳で手放すのは勿体ないからとの理由らしい。


で、さっき言った係長が首を捻りながら手に持ったラジオを操作している。


係長、昔ながらのアナログ人間で、業務に必要な為ガラケーは所持しているけどスマホやパソコンなんて触りたくも無いって人。


だから、ニュース等の情報はスマホからの俺なんかと違ってニュース等必要な事はラジオやテレビで得ている。


「係長! どうかされたんですか?」


係長は声を掛けた俺をチラっと見てから返事を返してきた。


「ラジオから変な声が聴こえるんだよ」


「変な声?」


「ああ、これ」


係長はそう言いながらラジオのスピーカーがある面を俺に向ける。


ラジオから聴こえて来たのは、「タスケテ、タスケテ、タスケテ」って言う大きな声とその声に邪魔され聴き取り辛いが、ニュースを読み上げているらしいアナウンサーの小さな声だった。


「混線してアマチュア無線の声を拾っているんじゃないんですか?」


「うーん、そうなのかもしれないんだけど、数日前から聴こえ始めたんだが最初はもっと小さな声だったのに、段々大きな声になっているんだよ」


その時、ラジオの「タスケテ、タスケテ、タスケテ」の声が一際大きな声で「タスケテ!」と叫び、続いて「モウダメダ」と言うと不審な声は沈黙。


不審な声が聴こえなくなった時、係長が胸を抑え俺の方へ倒れ込んで来た。






係長は急性心筋梗塞で亡くなり、今俺は、あのラジオから聞こえていた「タスケテ」の声は、もしかしたら係長の心臓が助けを求める声だったのかも知れないななんて思いながら係長の葬儀会場から帰宅途中。


アホみたいな事を考えるのを止め、俺はスマホを取り出しニュースサイトのアプリをタップ。


あれ? これなんだ?


ニュースサイトの画面の片隅にタスケテの文字が小さく載っていた。











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― 新着の感想 ―
[良い点] 体の悲鳴がラジオやスマホから……。 ((( ;゜Д゜))) 体の中身のことは自分でもなかなかわからないですからね~。
[良い点] ラジオから聴こえないはずの声が聴こえる、は、ホラーの定番だけど、まさかその声だったとは! 意外な設定におぉっ!ってなりました。
[良い点] 面白かったです! ぞわぁーってなりました。主人公も係長も、大変だけれど不満が大きい訳ではないから、体の悲鳴に気付いていなかった……。主人公は間に合うかしら? 体が資本、気を付けなきゃですね…
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