くちなし
「死人って、口がないから綺麗なんだよね」
ぼそりと呟く彼女。昔から変なこと考えてるよな、
とは思っていたけれど、最近はそれに拍車がかかっているような気がする。
「いや別に、わたしはそんなことないと思うけど」
「でも、オフィーリアが話し始めたら嫌でしょう」
「すごく冷たかったです、とか?」
「オフィーリアをそんなキャラにしないでよ……」
まあ確かに。それはちょっと嫌かもしれない。
「というかさ。それ、結構なブーメランじゃない?」
ブーメランって言ってもいいのか、ちょっとグレーだけど。目の前の彼女は、友達のわたしから見ても、とても綺麗だ。黒い髪に、すらっとした手足。そして、透き通るような白い肌。というより、実際少し透き通っている。半透明ってこういうのを言うんだろうな。
「いや、だからこそ言ってるの。私、成仏とやらができるのなら、今すぐにでもそうしたいんだけれど」
「えー、まだしなくてもいいんじゃない」
わたしが寂しくなっちゃうから。
「他人事だと思って……」
「……結構自分事なんだけどな」
不思議そうな顔をする彼女は、やっぱりとても綺麗だった。
ありがとうございました。