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負け犬の逃走。
恋人がいない。
彼女ができない。
これは私にとって大きな悩みである。
世の中のカップル達に繰り返し遭遇することで悩みはどんどん肥大化していく。
仲の良い人たちが、周囲の人たちがどんどんと結婚していくのもこれに拍車をかける。
楽しそうに手を繋いで歩くカップルとすれ違った。
きゃっきゃとはしゃいでいた。
羨ましかった。
とんでもなく、羨ましかった。
プツっと頭のなかで音がした気がした。
どうして私には彼女がいないんだろう。
どうして私には彼女ができないんだろう。
どうして。どうして。どうして。
どうして?
どうして??
どうして???
歩を進める足が速くなる。
息が苦しくなる。
瞬きを忘れる。
どうして?
どうして誰も私と付き合ってくれないの?
どうして、という感情が爆発する。
心が揺らぐ。頭がふらつく。
全神経が融点を迎えそうだ。
瞳孔が開きそうだ。
彼女が欲しい。
恋人が欲しい。
なのに。
なのに。
なのに。
どうして?
どうして、私には……。
こうなってはもう何もできない。
何も考えられない。
気晴らしの日曜日の外出が台無しだ。
敗残兵のように家路に着く。
だって、外では泣けないから。