表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元禄浪漫紀行  作者: 桐生甘太郎
お江戸こんなところ編
3/57

第三話 着物

今回は少し短いですが、主人公の着物の話になります。


よろしくお願いします!





所変わって、ここは着物を売る店だ。だが俺たちが居るのは、俺が予想していた日本橋の呉服(ごふく)店ではない。女の人の話では、ここは神田(かんだ)らしい。


俺たちは川に出て、土手を降りた。神田にある川なら、神田川(かんだがわ)だろうか。その土手には、たくさんの店があった。俺たちが訪れたところは、どうやら古着屋が軒を連ねる場所だったらしい。


「おお!お久しぶりですおかねさん!」


「ごぶさたして悪いね、亀さん。ところで、この人に着物をあつらえてやっておくれな。かわいそうに行き倒れててね、今髷を結い直してやったばかりなんだよ」


おかねさんがそう言うと、急に店の主人は俺を見て気の毒そうな顔をして、こう言った。


「そりゃあ大変でしたね、こちらにおいでください。着物はどんなものがよろしいでしょう?」


俺は急に親し気に話しかけられたもんだからびっくりして、恥ずかしいのでうつむき、そのままでちょっとそこらを見渡してみた。


変だな。地味な柄や色のものしかない。赤も青も緑もなく、そこにある着物はほとんどが鼠色か紺色ばかりだった。


そういえば、さっきおかねさんが「そんな派手な着物だとお咎めを受ける」と言っていたし、江戸時代って案外そういうもんだったのかも?


なんとなく探していると、紺色と鼠色の中間のような縦縞の入った灰色の着物が目に止まった。


縞々っていいよな。ちょっと幅が大きいけど、あれなら…。


俺は勇気を振り絞り、うつむいたままで少し遠くにあったその着物を指さす。


「あ、あの…あれ…」


「はいはい、こちらですね。じゃあ帯は…このあたりでどんなもんでしょう?」


俺は、目の前に灰色の古い帯を差し出された。その時、こう思ったのだ。


そうか。自分は今からリアルタイムで江戸時代の着物を着るのか、と。


なんだそれ!めちゃくちゃ興奮する!


「は…はい!それでお願いします!」


俺が元気よく答えたので、店の主人もちょっとほっとした顔をしてくれた。


「へへ、承知しました。ところで旦那、もしお困りのようでしたら、お足元も一緒に揃えた方がいいんじゃないかと思うんですがね…」


そう言われてふと自分の足を見ると、家の中から急に江戸時代に飛んできてしまったからか、俺は裸足だった。確かにこれではいけないな。


「え、でもそれじゃ…」


遠慮しておかねさんをちらっと見ると、彼女はふふんと笑ってみせる。


「今更遠慮するんじゃないよ。ねえ亀さん。この草履がいいんだけどねえ」


「ええ、ええ。じゃあこちらで。よろしいでしょうか?旦那」


俺は嬉しかったが、やっぱり申し訳ないので、おかねさんに頭を下げる。


「すみません!ありがとうございます!」


「お代は…そうだなあ、これなら二百匹(にひゃっぴき)にしときますよ、おかねさん」


え?二百匹?二百匹ってなんだ?


俺が不思議に思っておかねさんの手元を見ていると、彼女は財布らしき布包のような物の紐をくるくるとほどいて、中から小銭を取り出し、きちんと数えてから古着屋さんに渡した。


「あいよ、確かにちょうだいしました。ありがとうぞんじます」


「いえいえありがとう。ところで、今は何刻(なんどき)かねえ?」


「はー…さっきちょうど神田明神(かんだみょうじん)様の()つの鐘を聴きましたからねえ。そのくらいじゃないでしょうか?」


「まあ!もう間に合わないじゃないかい!お前さん!急いどくれ!じゃあ亀さんまた!」


「わっ!」



俺はまた引っ張られ、そのままもう暗くなってきた外を駆けて行った…。








つづく

お読み下さりまして、有難うございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ