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5.決別のレモンティー(2)

1限の授業は大講堂で行われる。一番前の右端が夕璃子の定位置だった。板書がよく見えるけれど、先生とは目が合いにくい。提出予定のレポートをファイルから出していると、ふと手元に影がさした。


「今日のお昼も、モリリンとごはん?」


大崎秋奈だった。彼女は肩につかないくらいのボブヘアを邪魔そうにかき上げながら、夕璃子の弁当包みを見て言った。秋奈は子栗鼠に似ている。くるくると変わる表情や、小柄で大きな瞳が愛らしい。

夕璃子が首を横に振ると、秋奈はわざとらしく口の端を吊り上げた。


「もしかして、別れた?」


冗談めかしてにやにやと秋奈が言う。夕璃子は、ふたたび首を横に振った。


「別れるなんて。――そもそも、付き合ってないもの」

「はあ?」


秋奈は間の抜けた声を出した。


「いつも手をつないでたよね?」

「うん」

「学校終わりは必ずどちらかの家に行って」

「うん」

「お泊まりすることもたくさんあったよね?」

「――うん」

「それで、付き合ってないの?」


夕璃子は俯いた。


それこそが、慧介と離れた一番の理由だった。自分たちの関係がわからなかったのだ。でも、それを聞いたら、なにかが壊れてしまうような気がして、怖くて問うことができなかった。




そのとき、後ろでばたばたと走っていく音がした。後ろの席に座っていたのは、隣の学部の子たちで、彼女たちは獲物を見つけたとでもいうように、爛々とした目で駆けていった。その先にいたのは、東久世あやみ。


慧介から離れた、もう1つの理由がそこに居た。


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