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【8話】朝のトイレとパンツ事件

「あーよく寝た。」


朝起きて下へ降りると柚葉が朝飯の準備をしていた。


「おはよう、柚葉。」


「お、おはよう。」


「なんだ、すごい眠そうだな、昨日遅かったのか?」


「そっ、そんなことないよ。気のせいじゃない?」


「そうか?眠そうだぞ。」


「だから気のせいだってば!ほら朝ごはん食べるよ。」


まあ柚葉が気のせいだっていうなら気のせいなのだろう。


俺はそう納得して朝飯を食べる。


今日もいつものトーストに目玉焼き、そして昨日の味噌汁の残りだ。


トーストと味噌汁って組み合わせ的にどうなのとか言われそうだが、今までずっとこんな感じなので違和感はない。


「そういえばおにーちゃん、さっき美結ちゃんから電話があって、えーくん迎えに行くって言ってたよ。おにーちゃんのケータイにも連絡来てない?」


そう言われてケータイの画面を開く。


「ああ、来てるな、2件。」


2件とも美結からのメッセージで、ひとつは昨日勝手に帰って悪かったという内容、もうひとつは今日迎えに行くから待っててという内容だ。


昨日はなんで怒って先に帰ってしまったのか分からないが、どうやら反省はしているらしい。


「美結ちゃんも相変わらずだよねえ。ねーおにーちゃん。ふふふ。」


なにやら柚葉が含みのある言いまわしでからかってくる。


柚葉も昔から美結のことは知っている。


小学校と中学校が同じで、俺が何度も家に連れてきて遊んだりしていたこともあってか、いつのまにか2人ともかなり仲良くなったようだ。


「からかうなよ、別にただの幼なじみなんだから、家に迎えに来ることだっていつものことだろ。」


「はぁー、おにーちゃんは薄情者だねぇ。」


何をディスられているのかさっぱりわからん。


「ごちそうさま。」


そういって俺は食器を流し台に持っていく。


「おにーちゃん、もっとちゃんと見てあげなよ。」


「どういうことだよ。別に毎日見てるじゃないか。」


「まったくもう、そーゆーことじゃないんだよなあ。」


どういうことかさっぱりわからん。


さっきから柚葉は何を言ってるんだ。


このまま言われっぱなしじゃ面白くない。


そう思ってニヤニヤしながらこう返す。


「まあ俺は柚葉のことを誰よりもじっくり見てるけどな。」


「なっ、なに言ってんのっ!?変態っ!ま、まさか、着替えのぞいたりしてないでしょーね!?って、今そんな話してたんじゃないでしょっ!もう、はやくトイレ行ってきてよ!」


ほっぺをプクッと膨らせながらまくしたてる。


「さーあ、そりゃあどうかなあ。」


などど言いつつ柚葉の怒る顔を尻目にトイレへ向かう。


あんな可愛い顔で必死に怒ってくれたらこっちもからかいがいがあるってもんだ。


こりゃあ朝から気分のいいトイレになりそうだ。


ピンポーン。


ピンポーン。


インターホンの音でトイレの流す音がかき消された。


美結か?


急いでトイレから出て玄関の扉を開ける。


「あっ、えーくんおはよ…キャーッ!」


美結がいきなり悲鳴をあげて、慌てた様子で後ろを向く。


耳も赤くなっている。


「どうした?なにかあったか?」


美結は気持ちを落ち着かせるように大きく何度も息を吸い、ゆっくり口を開いた。


「えーくん、えっと、あの、パンツ…」


声が小さくて聞き取れない。


「え?なんて言った?」


「その…パンツ見えて…」


「え?」


「だから!パンツ見えてるって言ってんのっ!」


やってしまった。


急いでトイレを出てきたせいで、ズボンがちゃんとはけていなかった。


だらしなくズボンがずり下がり、パンツがどうぞ見てくださいとばかりにこんにちはしていた。


「わっ、悪い、トイレ行ってて。急いで出てきたから、その…ほんと悪い。」


「わ、わかったから早くはいてっ!」


そこへ騒ぎを聞いて柚葉も駆けつける。


顔がマジだ、これはやばい。


「おにーちゃん、ほんとに変態、最低っ!ごめんね美結ちゃん、大丈夫?なにもされてない?」


「わ、私は大丈夫。私もごめんね、騒いじゃって。」


「いいのいいの、この変態おにーちゃんが全部悪いんだから。あっち行こ。」


柚葉は美結を連れて部屋へ入ってしまった。


今度からはズボンをはいていることをしっかり確認して出てくることにしよう。


トイレの後の清々しい気分が一瞬で失われるのはもうごめんだ。


コンコン。


柚葉の部屋の扉をノックし、扉越しに謝罪を述べる。


「美結、さっきは悪かった。それと柚葉もすまん。」


「ほんとおにーちゃんバカなんだから。気を付けてよね。」


さっきのことがあった後なので弁解の余地もない。


「私はちょっとびっくりしちゃっただけだから。大丈夫。」


また昨日のように怒って帰ってしまうんじゃないかと思ったが、意外にもあっさり許してくれて助かった。


「あっ、やばっ、もうこんな時間!学校遅れちゃう。」


大騒ぎしている間にかなり時間が経ってしまったらしい。


柚葉が慌てて部屋から飛び出してくる。


俺は危うく扉にぶちのめされそうになるところをギリギリで回避した。


「おにーちゃん、ゆず先出る!ゆずがいないからって美結ちゃんに変なことしたら許さないからねっ!」


とだけ言いのこしてバタバタと家を出て行った。


いやいや、俺と美結は幼なじみなんだから変なことなんてするわけないだろ。


「えーくん、変なことするの?」


美結がニヤニヤしながら聞いてきた。


「絶対するかよ。」


「ふーん、しないんだ。でもさっきはほんとにビックリしたんだからね。えーくんじゃなかったら絶対許さない。」


「ああ、ごめんな、ほんと美結でよかったよ。じゃあそろそろ学校行くか。」


「うんっ、行こっか。」


ふう、今日はなんとか機嫌を損ねずに済んだみたいだ。


よかったよかった。

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