お触れ
ここはメルヘンチック魔法王国。
まるで宝石のような魔法の王国。
地には可憐な花が咲き乱れ、
樹木は甘い果実をつける。
妖精は風に戯れ、
聖なる泉は人々の渇きを癒す。
小鳥は歌って愛を告げ、
草原では羊が草を食んでくつろぐ。
人々はそんな環境の中、のどかな生活を送っていた。
しかしある日、
「デンジャラス・テリブル・パワフル・モンスター」
と呼ばれる、恐るべき大魔獣が現れ全てが失われてしまった。
筆舌に尽くしがたい激闘の末、
「デンジャラス・テリブル・パワフル・モンスター」
は倒された。
大魔獣による危機は去ったのだ。
しかしその後の問題は山積みなのだ。
さてどうすべきかと考えた王宮は、対策を講じることになった。
そして、ある日お触れが出た。
内容は、
「この国には、賢く聡明な者しか住んではいけない。
立ち去らなければ命はない」
というものだった。
人々は驚いた。
なんとこの事態に対処できる賢者のみを残そうというのだ!
人々は抗議したが叶わず、うなだれて国を追放された。
王宮は魔法戦士軍団を擁するからだ。
しばらく経つと、新たなるお触れが出た。
内容は、
「この国には、真面目な働き者しか住んではいけない。
立ち去らなければ命はない」
というものだった。
なんと大魔獣によってもたらされた社会の混乱に対応するために、
粉骨砕身働く者しか住んではいけないというのだ。
人々は抗議したが叶わず、
表情を歪め、首を振りながら国を追放された。
人々が暗い表情をしていると、またしてもお触れが出た。
内容は、
「この国には、富裕な者しか住んではいけない。
立ち去らなければ命はない」
というものだった。
なんと財政難に対処するために、
富裕な者しか住んではいけないというのだ。
人々は抗議したが叶わず、
僅かな荷物を持ち、馬にも乗らず、
徒歩で足取りも重く国を追放された。
そしてとうとうこんなお触れが出された。
「この国には、武勇に優れた者しか住んではいけない。
立ち去らなければ命はない」
というものだった。
理由は、もしまた
「デンジャラス・テリブル・パワフル・モンスター」
が現れた時に備えるためだというのだ。
もはや人々は完全に無言で出て行った。
全ては王宮の計画通りになった。
ところがある日、
「ニュー・デラックス・クルエル・ファナティック・マサクル・ビースト」
という大巨獣が現れた。
これは
「デンジャラス・テリブル・パワフル・モンスター」
とは全く違う新しい種類の脅威だった。
しかも前回を上回る猛威を振るった。
その時、メルヘンチック魔法王国にはお触れにより
「デンジャラス・テリブル・パワフル・モンスター」
の危機に適応できた
ごくごくごくごくごくごくごくごくごく
少数の人しか残っておらず、対応できる人はいなかった。
メルヘンチック魔法王国は滅びたそうな。
おしまい。