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ゆきちゃんと私

 ゆきちゃん―――本名、宮元龍之みやもとたつゆき。5月26日生まれ、O型。身長172cm、体重59kg。好きな食べ物はイチゴ。チャームポイント、この、この……眩しいばかりの笑顔!!

「奏子? どうしたの? ボーット俺の顔なんて見ちゃって。アイス、溶けてるよ」

「え、あ!!」

「しょうがないなー。かしてみ」

 ゆきちゃんはアイスを持っているほうの私の手をとり、溶けて垂れそうになっているアイスをぺロっと舐めた。

「うん、抹茶味も悪くないね。でも、ストロベリーの方がおいしいよ。……ほら、あーん」

 ゆきちゃんは自分のストロベリー味のアイスを一口分、スプーンですくって私に食べさせてくれた。

「ね?」

「うん、おいしい」

 私、東城奏子とうじょうかなこは付き合って2ヶ月の彼氏「ゆきちゃん」にメロメロなのです。

もともとゆきちゃんは、入学したころから大人気で、入学式の日にはすでにたくさんの先輩の女の人や、私達の学年の女子に囲まれてアドレスを教えてってせがまれてました。そのとき私は、同じ中学から一緒にこの高校に入った友達と少し離れた所からその様子を眺めていたことを覚えています。一緒にいた友達は、「私達も教えてもらおうよ」って言ってたけど、内気な私は「私はいいや。ここで待ってるから行ってきなよ」って言った気がする。とにかくゆきちゃんは学校一のアイドル的存在なんです。確かに私も1年のころから、ゆきちゃんはかっこいいっていうより、かわいいって思ってました。それでも、ゆきちゃんと私は何の接点もなく、進級して2年生になって、6月の超土砂降りのあの日の放課後……。

「傘持ってきてないのに……」

 傘を持っていなくてどうしようかと昇降口で困り果てていた私。最悪なことに、放課後に先生に呼ばれていて教室に戻ったときには友達はすでに帰っていて一人だった。そんなとき急に後ろから、声をかけられた。

「一緒に入る?」

「え?」

 驚いて、後ろを振り返るとそこにはアイドルゆきちゃんが立っていました。

「(わぁ!! 宮元龍之!!)」

 驚きすぎて声も出なくて、顔をまじまじと見つめてしまいました。

「ねーねー、傘ないんでしょ? 入れてくよ」

「え、でも……」

「いいから、いいから。ね、東城さん」

「え、何で私の名前……わっ!!」

 ゆきちゃんは私の腕を取り、自分の傘の中へと入れてくれた。もう断れないと思った私は、駅まで一緒に帰ることにしました。

「東城さんて、下の名前なんてゆーの?」

「え、か、奏子……です」

「へー、かわいいね。俺の名前、龍之って言うんだけどあんまり好きじゃないんだぁ」

「そ、そうなんですか……」

「龍之っていかついじゃん? 俺、いかついキャラじゃないしさ。名前負けなんだよね」

「はは……。あの……」

「なに?」

「どうして私の名前知ってるんですか?」

「あー。さて、なんででしょう」

 ゆきちゃんはかわいい笑顔でそう言ったのを今でも覚えてる。

 それから、駅までの道のりはずっとゆきちゃんが一人で喋ってた。

「傘、入れてくれてありがとうございました」

「どういたしまして」

「それじゃあ……」

 私が改札を抜けようとした時、急に後ろから腕を引っ張られて、ゆきちゃんに抱きしめられるような形になってしまっていて……。突然の事で、何が起きたのか私にも分からなかった。

「正解は、奏子の友達に教えてもらったからです」

 ゆきちゃんは耳元で囁くように言った。

「え?」

 何のことか意味が分からなかった。

「入学式の日、奏子は遠くで俺のこと見てたでしょ? 俺、そうゆう謙虚なおしとやかな子が好きだから、奏子に一目ぼれしちゃった。奏子と一緒にいた子が俺のにアド聞きに来た時に名前教えてもらっちゃった。でも、苗字しか覚えられなかった。はは」

 顔は見てなかったけど、きっと苦笑いしてるんだろうなって私は思っていた。

「俺、奏子のこと好き」

 こんな衝撃的な告白がきっかけで、私たちは付き合うことになった。

 あれから2ヶ月、高2の夏休みも終わろうとしていた。

「奏子〜、もうすぐ夏休みも終わりだね」

「そうだね。あー、学校かぁ」

 私がため息混じりに言うと、ゆきちゃんは寂しそうな顔をしながら、私の顔を覗き込んだ。

「学校、嫌なの?」

「え、嫌じゃないけど……面倒じゃん」

「俺は学校始まれば、奏子に毎日会えるから嬉しいけどなぁ」

「ゆきちゃん……」

 ゆきちゃんの言葉に胸がきゅーんとなった。

「奏子はそれでも学校嫌い?」

「……学校楽しみ、かも」

 ゆきちゃんはずるい。いっつも私をドキドキさせて、好き度を上げさせる。この、笑顔で!! この、声で!! 

「学校始まったら、すぐ文化祭だね」

「うちのクラス、お化け屋敷だっけ?」

「うん!! あ!! 奏子、一緒に受付やろうよ!!」

「うん、いいけど。なんで?」

「一緒に係りやれば、休憩時間も合わせられるし。そうすれば一緒にまわれるよ!!」

「そうだね」

 こうして私たちは一緒に文化祭をまわることを約束した。


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