92時限目 霧の刃、最終手段を使う
「いい感じになってきたぜ」
「ええ、ボス。騎士団や冒険者の馬鹿どもが魔物を狩ってくれるおかげで、こっちはレベルを上げ放題で助かりますぜ」
発生源付近で、余裕の笑みを浮かべる霧の刃の連中
そのボスの首に付けているネックレス
実は、倒した魔物から出る経験値を倍増して自分の物に出来るという貴重な物
ただ、発生源から離れることはできないので、彼らを利用して経験値を積もうとしていたのだ
「魔力も上がってきたし、そろそろ頃合いだな」
「そんじゃ、準備しますんで」
魔物大発生を止めて、男は巨大な魔法陣を書く
これは召喚術の魔法陣だが、エルトやニルが使う召喚術とは少し違う
「よし、魔力をありったけ注ぎ込め!」
ボスの言葉を合図に、霧の刃の連中は魔法陣に大量の魔力を注ぎ込む
☆
魔物を一掃し、発生源へ向かっていたディルルとオレイアスだが
「この感じは…」
「どうしたの、オレイちゃん?」
「まずいことになるかもしれんの…」
「…?」
賢者は何かを悟っていた
☆
魔力を注ぎ込んでから数分が立ち
魔法陣が黒く光り始める
「ははは!いいぞいいぞ、あともう少しだ!」
高らかに笑うボス
やがて、魔法陣からソレの手が現れ、胴体、足までが出てきた
「我を呼び出したのは、汝らか?」
炎を纏った巨大な生き物が話しかける
「そうだ!」
「人間が我を呼び出すのは千年ぶりだの…。して、汝らは我に何を望む?」
「俺たちを用なしと見捨てた奴らに地獄を見せてやりたい!」
「ふむ、我も汝と同じような境遇を味わったことがある。協力してやろう」
「感謝する!」
「では、我にその命を差し出せ」
「…は?」
「我と協力するには代償が必要なのだ」
予想していたことと違うことに戸惑っているボス
「おい!呼び出したのは巨大なただの魔物じゃねえのか!?」
「聞こえているぞ。我をただの魔物呼ばわりしたのは汝が初めてだ。我は炎魔。炎を纏い、炎に愛されし悪魔なり」
「あ、悪魔…だと…?」
悪魔は約千年前までこの世界に存在していた
だが、人間たちが力をつけ、滅ぼされるか召喚の世界で封印されるかの選択を迫られた後、一時的に存在しなくなったのだ
「さあ、汝らが我を呼び出した代償は重いぞ。地獄の業火をとくと味わうがいい!」
「い、いやだーーーーーー!!」
こんなはずではなかった!
俺たちの力をみんなに認めてもらいたかった!
必死に逃げる霧の刃の連中
だが
炎魔の手から放たれる巨大な炎の渦に飲み込まれてしまう
「ギャアアアアアアアア!!!」
「た、助けてくれーーーー!!」
悪魔の炎を身に纏い、暴れまわる
普通の炎と違い、数秒足らずで灰と化した
「何事も上手くいくと思った甘さがこれだ。全く、人間というのは思考が鈍い」
どうも、茂美坂 時治です
随時更新します




