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86時限目 少年たち、鼓舞する

数日後


オリバートは斥候から信じられない情報を耳にした


「それは、本当か…!?」

「間違いありません!!ピクスとオストリアの国境付近で魔物大発生(スタンピード)が起きました!」


魔物大発生(スタンピード)

それは、周辺の魔力が異常なほどに集まり、空間を歪ませ、本来いるはずのない魔物を無理やり形成させて、やがてその数は膨大し、生態系を破壊する恐るべき現象の一つである


以前、オレイアスは精霊が原因で魔物大発生(スタンピード)が起きたという話は娘たちから聞いていたが、今回の原因は別にあるようだ


「陛下はエルト殿が突如現れた3万のゴブリンの大群を殲滅した話は覚えていますか?」

「ああ。人為的に発生させたあの件だな。もしや…」

「おそらく、人為的に発生したのではないかと見ています。しかし、他国との協力がありながらも犯人は未だに特定できておらず、両国も応戦していますが、数はさらに増える一方です。このままでは、他国だけでなく我が国にも影響が及びかねません!陛下、早急にご決断くださいませ!!」


一刻の猶予もない


オリバートは騎士団や冒険者ギルドなどにこの事実を即刻伝え、応戦せよと命じた



もちろん、学園(ここ)にも


緊急集会が開かれ


「国王陛下から、ピクス王国とオストリア王国の国境付近で魔物大発生(スタンピード)が起きたとの連絡がありました」


さらに、一部の魔物が王都に向かっているとの情報もあるという


それを聞いた生徒たちはどよめき、中には早く帰らせてとパニックになる人もいた


そこに、学園長のサロアが大声で


「静粛に!!」

と生徒を黙らせる


「皆がパニックになるのも分かる。だが、慌てたところで何になる?今も、騎士団や冒険者たちが必死に食い止めようとしている。私たちに出来ることは、この学園から動かずに待機する。それしかない…」


そんな中、男子生徒の一人が言った


「エルトが行けばいいんじゃねえの?」


思いの外、そうだそうだと皆の声が大きくなる一方になった


「こらこら!!当の本人の意見は聞かんのか?」


全員がエルトの方へ向ける


「僕は行きませんよ」

ときっぱり断る


「何で行かねえんだよ!?」

「そうだよ、俺たちを守らねえとダメじゃねえのか!?」

屁理屈を捏ねる生徒たち


「それで僕が帰らぬ人となったら、誰がどう責任取るんです?」


その言葉に生徒は何も言えなかった

たとえエルトが強いからと戦場へ向かったとしても、無事に帰ってくる保証はどこにもないのだ


「逆に聞きますけど、あなたたちは誰かの指示でそこに向かえと言われたらすぐに行けますか?」

「それは…」


できるとは言えなかった


ルディアの件や、3万のゴブリン軍を殲滅できたのも全部エルトの力があってこそ


自分たちは、彼に頼り過ぎていたことと覚悟が足りないことに気付かされた


「でも、だからといってこのままでいいんですか?」

「…え?」

「皆さんがこの学園で主に習うのは何ですか?」


その言葉に生徒たちはハッとする


魔道

つまりは魔法を極めること


誰かに頼って生きていくんじゃない

魔法という()()を使って、自分の道を切り開いていくこと

盲目すぎて、目の前の目標がモヤモヤしたままだ


イワンがエルトに声をかける


「おい、俺たちにそれをはっきりさせたってことは…」

「ここからどうするのか、決めるのは皆さんです。このまま、ボーっと現象が収まるまで待つんですか?」

「いいわけねえだろ!!」


クルムが大声を上げて、壇上に上がる


「みんな!!今度は俺たちがこの学園、いや、王都を守る番だ!!何もできなかったでは示しがつかねえだろ?自分にできることをとことんやって、守り抜こうぜ!!」

「クルムの言う通りだ!!先生たちも、その場で立ってるままですか!?」

「言いたいことは分かるが、私たちもこのような事態は初めてだ…。どうすべきなのか分からない…」

他の教師も同様だ


「なら、皆で考えましょう」


エルトが提案をする


「この事態で大事なのは、闇雲に行動するのではなく、効率的でかつ被害を最小限に抑える作戦を考えるべきです。そのためにも、皆さんの力が必要です」

「だから、お願いだ!」

「力を貸してくれ!!」


3人が皆に頭を下げる


「3人とも、水臭いですよ」

「ウチらもおるさかい、作戦会議に参加させてえな!」

「そうだぜ!」

姫たちも彼らに同意していた


「姫様たちまで…」

「これは逃げる要素が消えましたね…」


生徒である以前に、一国の姫君でもある彼女たちの言動には逆らえない


こうして、学園独自の魔物大発生(スタンピード)対抗作戦が始まった

どうも、茂美坂 時治です

随時更新します

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