78時限目 少年、再測定する
「君のような素晴らしい人材はわが国でも欲しいものだ!どうだろうか?」
皇帝はエルトの力を目の当たりにして感動し、勧誘した
だが
「お誘いはありがたいですが、僕は乗る気にはなれません」
少年はきっぱりと断る
「そうか…。そう言うだろうなと何となく予想していたよ。無理にとは言わないが、もし興味があるならいつでも歓迎するぞ」
「ありがとうございます」
実技の授業は終わった
☆
昼休みの食堂
いつものメンバーに加えて、グレインとオリバートも同席していた
「おいおい…、そんなに硬くなるなって…。いつも通りにしてくれればいいよ」
「そう言われましても…」
国のトップ2人と同席すると、失礼な話、少し居心地が悪い
それに、周りからの視線もなんとなく痛い
姫たちは、特に変わった様子はないが、エルトやルルは場違いじゃないかと思うほどだった
☆
放課後
少年はサロアに呼び出されていた
「お話というのは?」
「単刀直入に聞こう。魔法が使えるようになったというのは本当か?」
「はい…」
「ちょっと、ここで見せてくれないか?」
学園長室という事で、被害の出ない光属性の光の玉を放つ
「おお!!本当に使えるんだな!」
そして、ガシッと肩をつかみ
「では、確かめに行くぞ!」
「ど、どこへ…?」
☆
そこは、入学式後に水晶に手を当てて、自分の魔力などを測る測定室だ
約9か月ぶりだ
もちろん、同じ人間がもう一度測ることになるのは初めてだ
そして、いつものように見守る彼女たちもいる
よほど、エルトの力がどれくらいなのか気になっていて仕方がない
「さあ、手を当ててみてくれ」
サロアに導かれ、少年は水晶に手を置き、光り始める
測定結果は、1辺3m四方の木の板に表示される
あの頃のエルトは、無属性だけ1という無残なステータスだった
今回はどうなったのか…
固唾を飲んで、結果を見る
エルト=ファイザー
魔力値:9999+
火属性:9999+
水属性:9999+
雷属性:9999+
光属性:9999+
闇属性:9999+
無属性:9999+
※魔力値の限界値は9999のため、+はそれ以上を示す
スキル:料理 レベル5
家事 レベル5
全属性耐性:レベル5
剣術:レベル5
体術:レベル5
礼儀作法:レベル4
苦痛耐性:レベル5
自然治癒力:レベル5
芸術:レベル2
etc
エルトの持つスキルの数は多すぎるので抜粋
☆
「な、なんだこれは…。夢でも見ているのか…?」
結果を見たサロアは、幻覚ではないかと思い、もう一度測定させる
しかし、結果は同じだった
「素晴らしすぎる!!こんな結果は、初めての事だ!」
リベリア魔道学園で魔力値が9999を超える者は誰一人いなかった
が、エルトがそれを可能にした
姫たちも、エルトのステータスを見て大喜び
少しばかりの余韻に浸った後、サロアは真剣な表情で
「エルト君、君は危険な人物になってしまった…」
先ほどと真逆の言葉を放つ
「僕が…危険…?」
「どういうことか掴めてないようだから説明しよう」
曰く、突如とてつもない力を持った人間が現れたとしたら
国中どころか世界中がその人間の力を利用したいと思う者もいる
多くの場合は、戦である
しかし、それとは別に一国だけに肩入れされると知れば、他国にとっては脅威のほかないのだ
最悪の場合、命を狙われることも考えられる
「と言った具合だが、いかがかな?」
「何となく、イメージは分かりましたけど、僕はそんなの全く望んでません!!」
きっぱりと主張を述べる
「それは、儂だけじゃなく、ここにいる皆さんも同じ思いだ!」
「そうだ!!私は、決してお前を政治的に利用しない!!」
「オリバート殿の言う通りだ。そんなことをしてしまえば、国同士の争いになりかねん!絶対にそうさせない!」
誓いを立てるトップたち
姫たちも同様に
「エルト。私たちも、できる限りあなたの事を守りたいの」
「それを言うなら、このルルもです」
「というか、あたしたち全員同じじゃねえか」
エルトは少しだけ笑う
「な、何だよ…」
「いえ…、前にも同じことがあったのを思い出しまして…。ありがたいお話ですが、僕は僕自身で守らないとって思います。姫様たちも、僕に頼らずに自分の力で守ってみたらどうです?」
然もありなん
姫たちは、あの事件からエルトに頼るところが多かった
むしろ、多すぎた
彼女たちは守ると公言したが、それは叶わず、少年は一回死んだ
だが、奇跡でも起こったかのように少年は息を吹き返した
そして今、エルトの恐るべきステータスを目の当たりにして、危険人物とみなされた
これ以上、エルトを危険な目に遭わせたくない!!
守りたいと言えば簡単だが、具体的にどうやって守るのか
前回は漠然としたために失敗
これから、屋敷に戻って議論を開くことで一致
当然、エルトには聞こえないようにコソコソと
どうも、茂美坂 時治です
随時更新します