68時限目 姫たち、検証する
翌日
学園内は、病院の火事の件で持ち切りだった
「エディール様、エルトさんは無事なんですか?」
「大丈夫よ、ベニーが助けたから」
「誰ですか、その人?」
「ウィリムベール騎士学校の生徒副会長よ」
その言葉に、会員たちは驚いた
エディールは、エルトとベニーの出会いにを話す
「なるほど、先日の魔物の件で…」
「自分も同じ立場だったら、恩を返すのは当たり前だと思います」
バァン!!
突然、何かを叩きつけるような音が教室に響く
生徒たちはビクッとなって音の方角を振り向く
「授業、始まってますよ…?」
怒った顔をしたペリーヌだ
「「「「「ご、ごめんなさい…」」」」」
姫たちもさすがに怖気づいた
☆
放課後
一行は、病院に着いた
「来たか」
「お父様、無理を言って申し訳ありません」
「気にするな」
オリバートは警備局長のルマノフ=エスティーゲンと同行していた
「お久しぶりです、姫様方」
「ルマノフ、今日はよろしくね」
早速、爆発のあった3階に向かう
☆
「どうだ?」
あらゆる場所を徹底的に捜査した結果
「第三診察室付近が爆発した箇所ですね」
第三診察室はベニーがエルトを助ける際に上った階段のすぐ左隣にある部屋だ
「そうね、少しだけど魔力も感じるわ」
「あと、一部ですが、魔法陣が書かれた跡も残ってますね」
ラディールは、散らばっていた魔法陣のかけらをつなげると大爆発だとわかった
「でも、腑に落ちないわ」
「何がですか?」
「どうして、3階と5階に魔法陣を置いていったのか」
「確かに」
「この病院に対する何かしらの理由があったってことか」
「それは何なんなんやろな?」
「そうですわね…」
うーんと悩む姫たち
と、ジルファーがまた挙手する
「それだったら、エルトさんを助けた本人に聞いてみるのも一つの手では?」
十秒ほどの沈黙
「どうしてそんな簡単なことに気がつかなかったのかしら?」
「視野を狭めすぎましたね…」
姫たちはヘレンとベニーを呼んだ
☆
エディールはさっそく、ベニーに当時の状況を聞き出した
「特に変わった様子はありませんでした…」
収穫はなかった…かに思われたが
「ただ、変わった臭いがしたんです」
「どんな臭い?」
「そうですね…、何と言いますか…、バニラのような甘い香りがしてたんです」
「甘い香り…ですか」
セドリックにそのような臭いのする薬等があるかを聞くと
「いえ、そのような物は置いていません」
王族の専属医でもある彼でも手掛かりとなる情報は持っていなかった
しかし、彼の証言のおかげで一つの可能性が浮かび上がる
「ベニーが言っていた甘い香りが残っていたということは、犯人が魔法陣を設置してからそれほど時間は経ってなかったと裏付けられるわね」
「そして、バニラのような香りの正体…。この広い空間で考えられるのは、おそらくパイプに使われる葉ではないでしょうか?」
この世界で、成人が主に嗜んでいるのがお酒とパイプだ
特にパイプの臭いはかなりのクセがあり、部屋で吸った場合、換気をして完全に臭いを打ち消すにも半日以上はかかる
男女の割合からすれば、男性が7割を占める
☆
5階を検証した結果、3階とほぼ一致していた
唯一異なっていたのが、設置されていた魔法陣が同じ大爆発なのに、術式の一部が欠けていた
その証拠に、3階とは燃え方が若干ひどくなかった
犯人が設置する時間に余裕がなかったのだろうか?
それとも、わざとだろうか?
いずれにしても、明確な事実が浮かばない
そして、残った謎が犯人は何の目的で病院を狙ったのか
☆
気付けば、日が暮れて月が顔を出していた
「お前たち、今日はありがとうな。あとはこちらに任せてくれ」
オリバートは姫たちにそう告げた
帰り道
「ラディール、魔法陣って直接手に触れないと発動しないのよね?」
「仰る通りです。ですが、あの時、それらしき人物はいなかった。ベニーはそんな人は見ましたか?」
「いえ、見てません…」
「もしかして、私たちの知らない魔法陣だったりするのではなくて?」
「それはあり得ません、あの魔法陣は私でも知っているものでした」
「じゃあ、どうやって発動させたんだ?」
「こっそりと病院に忍び込んで、魔法陣を発動させたんとちゃうか?」
「それだと、誰かに見られるはずよ」
誰にも発見されることなく、魔法陣を発動させた
必ず誰か一人はいるであろう病院の中でどうやって?
謎は深まるばかりだった
どうも、茂美坂 時治です
随時更新します




