66時限目 眼帯少女、過去を話す
2021年、最初の投稿です
「まず、どこから話していいんだろうな?」
ルルたちからの質問に少し戸惑う
姫たちも一応事情は聞いている
でも、妹を不快な思いにさせないかと不安だった
一方で、掻い摘んで話すと方向がややこしくなる可能性もある
ジェミナーは、包み隠さず話すことにした
「ジルファーは生まれつき目が見えない」
「目が…ですか」
「ルル?あたし、おかしなことを言ったか?」
「いえ、そうではなく、目が見えないとはいえ、立ち姿がとても凛々しい…」
「そのような言葉をいただくのは、生まれて初めてです」
「それだけ、ジルファーが美しいということですよ」
「見惚れているところ悪いが、話を戻してもいいか?」
「は、はい…」
「さっきの事だが、これは表向きの話だ」
「どういうことですか?」
ここからが本題とでもいうように、ジェミナーは真剣な顔をする
「これは、父上や母上といった皇族にしか知られていないことなんだけど、お前たちに言っても絶対に他言無用に出来ると信じてるが、できるか?」
「はい、絶対に他言はありません!」
「私も」
「ありがとう…。で、本当のことを言うと、ジルファーの目は呪われている」
その言葉の後、部屋はしばらく静寂に包まれる
「呪われているって…、ジェミナー様?冗談で言っているのではなく?」
「ああ、ジルファーの目は絶対に見るな。興味本位で眼帯を外したら、確実に死ぬぞ」
忠告を聞いたルルは後ずさる
「お姫様、事の発端は?」
「ここからは私がお話しします」
ジルファーがこれまでの経緯を話す
☆
ジルファーが生まれたときからの5年間は、何不自由なく幸せに暮らしていた
6歳の時、建国を祝うパーティーで事件は起こった
貴族の執事と目が合った瞬間、執事は突然口から泡を吹きだし、悶え苦しみそのまま亡くなってしまった
当初、何者かが執事が口にしていたワイングラスに毒が塗られていたのではないかと調べたが、確たる証拠はどこにも出なかった
出席者やパーティに携わった料理人たちの家なども徹底的に調べたが、そのようなものは一切なく…
結局、謎のままに終わってしまう
だが、パーティーや、あいさつ回りなどで次々と変死する者たちが続出するという奇妙な事件が相次いだ
最も奇妙なのは亡くなった者たちは全員ジルファーの目の前で死んだということだ
それも、彼女の目を見た瞬間に
これはさすがにおかしいと、皇帝 グレインは娘を医者や宮廷魔導士に診てもらった
しかし、帰ってきた言葉は
「申し訳ございません…。私でもこのような症状は初めてで…、どう対処すればよいのか…」
だった
一体、ジルファーに何が起こったのだ?
考えても、考えても、明確な答えは浮かばない
もう一つ、気がかりなことがある
他の人の目を見れば、あのような症状が出るはずだ
何故自分やニーニャ、ジェミナーには出ない?
数日間、側近や専門の医者たちとも話し合ったが、まともな答えは出るはずもなかった
唯一分かっているのは、ジルファーの目に何かしらの力が宿っているかもしれないということ
それも、何も触れず、ただ見ただけで死ぬほどの恐ろしい力
そんな類いの力など聞いたことがない
過去の文献を漁ってみても、手掛かりは全くつかめず
この数日間、ジルファーは誰にも会っていない
いや、誰も彼女に近づきたくないのだ
これ以上、あの子の目のせいにはしたくない
グレインはある決断をする
「父様、お呼びですか?」
「…ああ、お前を呼んだのは他でもない。ジルファー、これからお前はこの眼帯をつけて生活するんだ」
理由を言わずに、ただ眼帯を渡す
「お、お待ちください!それでは、私は何も見えないままで過ごせと申すのですか!?」
当然の事ながら、慌てふためく
「正直、こんなことはしたくない。だが、お前の目を見て死んだ者たちが多いのも事実。私とて、もう耐えきれないんだ!」
ありのままの事実を突きつけられ、絶望する
自分のせいで、多くの人たちが…
私は、私自身を嫌った
でも、姉様は違った
「自己嫌悪になるな。お前には、あたしがついてる!だから、前を向け!」
単純なのに、すごく重い
姉様はいつも、私を励ましてくれた
リハビリをしているときでもずっと付き添ってくれた
今でも、姉様を尊敬している
☆
「そんな…、大人の思惑で…」
「仕方のないことです。実際、この目で見てしまっているのですから…」
ルルと違って、スオンはいたって冷静だ
「ねえ、ジルファー姫。その目の呪い、解きたいと思わないの?」
「…え?」
「今のあなた、かなり無理な振舞いをしているでしょ?自分から家族に解いてほしいとか言わなかったの?」
「おい、スオン!呪いを解く方法なんてねえんだ!だからこそ、エルトに診てもらいたいと思ってたんだよ!!」
また静寂の時間が流れる
「エルトにって、ジェミナー姫?詳しく聞かせてもらえるかな?」
怒り気味に質問
「それはだな…」
ジェミナーは、姫たちとこの件について軽く議論していたことを話す
「まったく…、私の知らないところでエルトに力を貸してもらおうだなんて、無茶にも程があるんじゃない?」
「無茶じゃねえよ!スオンだって知ってるだろ、エルトの規格外な力をよ?」
「それはそうだけど、それで全て解決できる自信はあるの?」
「う…、ある…とは言え…ない」
「あ、あの…」
眼帯少女は一人取り残されていた
「先ほどから、話が見えないんですけど…?」
「そうだったな、お前にも話しておくべきだな」
☆
「なるほど、エルトさんだけが見える魔力といった不思議な力を使って、私の呪いの正体を暴こうと…」
「ああ。本当はリベリア魔道学園の創立記念日の際にある休みを使って、あたしの故郷にエルトを連れていきたかったんだけどな…」
「でも、エルトさんは…」
「分かってる」
その時だった
「なあ、あの方角って、エルトが入院している病院の近くやないか?」
フィルラーは窓の外から、黒い煙がモクモクと上がっているのに気づく
「本当ですね…。ですが、護衛たちがあそこで見張っているはずでは…?」
嫌な予感がする
姫たちは、すぐに病院へ向かった
どうも、茂美坂 時治です
明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします




