63時限目 国王たち、見舞いに行く
翌日
オストリア王国では
「陛下、フィルラー様からの手紙です」
側近のネルトンが現国王 バリストに手紙を渡す
「ほぉ、あいつからとは珍しいこともあるもんやな…」
その内容に目を通す
「な、何やて!?」
「どないされました?」
「エルト君が…倒れたらしい…」
「フィルラー様を助けた恩人がでっか?そら、えらいこっちゃですわ!」
「ネルトン、明日以降の公務で急を要するもんってあったか?」
「いえ、ありまへん」
「それやったら、会う者たちに事情を話してやってくれへんか?きっと、わかってくれるはずや」
「了解だす!」
「ほな、ウチも連れて行ってくれまへんか?」
王妃のシェーンも聞いていた
「エルトはんには恩がありますさかいな。ウチらにもできることがあったら、ぜひやらせてもらいたいですし」
「頼もしいな。ほな、準備して行こうか?」
「はい!」
☆
ピクス王国では
「何いいいいぃぃいいいい!!??」
国王 ボシュテルがアデリーヌから送られてきた手紙を読み、その驚きの声が謁見の間に響く
「あなた、どうされました?」
声を聞いた王妃 ラトエが駆け付ける
「え、エルト殿が…過労で倒れたという知らせだ…」
「まぁ!」
まさか、またあの子たちがやらかしたのではと不安になる
しかし、先日彼が金褒章を授かったのも耳にしていた
もう一度、手紙に目を通す
「エルト殿は、我々の想像を超えている…。自業自得と言えば聞こえは悪いが、無茶をしすぎている…」
「そうですね…。で、これからどうされるんです?」
「見舞いに行く…と言いたいところだが…まだ今日中に終わらせる仕事が残っている…。明日に行こう」
「いえ、今すぐに行くべきです」
執事のヴィルムが助言する
「しかし…」
「ここは、我々にお任せくださいませ。残っている業務も我々でも対処できるものですのでご安心ください」
「そうだな…。では、お前たちの厚意に甘えるとしよう」
すぐさま、エルトのいるバルムス王国へ向かった
☆
ワシュガ帝国では
「陛下!大変です!」
側近のテイラーが慌てた様子で皇帝 グレインに申す
「何だ?今は来客中だぞ」
「ジェミナー様からの手紙で、エルトさんが過労で倒れたとの知らせにございます!」
「何だと!?」
「エルトというと、ジェミナー様を救ってくださった恩人でございますか?」
来客のディメイン=フォン=ヒルズ伯爵も驚いていた
「大事な話だと言うのに…」
「陛下、この話はまたということで構いません。今は、恩人の事が最優先かと存じます。急ぎ、向かわれるのがよろしいかと…」
「私もディメイン伯爵の意見に賛成です」
皇后 ニーニャも急ぐべきだと助言する
そこへ
「お父様…、バルムス王国へ向かわれるのですか?」
眼帯を付けた少女が杖を突きながら謁見の間に入る
「ああ。お前も一緒に行くか?」
「はい、一度でも姉様の恩人にお会いしたいです」
皇帝一族はすぐに準備して、バルムス王国へ急いだ
☆
同じころ、スオンは里に着き、ドラゴンの長に事情を話す
「それは一大事ね…。スオン、知らせてくれてありがとう。一緒に来て!」
「ここは、俺に任せておけ」
テオンが胸を張った
「あなた、頼みましたよ!」
親子2頭は、バルムス王国へと飛んで行った
☆
2日が経った夕刻
3か国の国王たちがエルトが入院している病院に着いた
同時に顔を合わせる
「これはこれは…」
「姫君の手紙でここに来たというわけですか…」
「我々の目的は一つ…ですね」
病室に入ると、姫たちがすでに来ていた
「お父様…」
「父上…」
姫たちも久しく見る親の顔に涙が浮かぶ
「エルト殿の様子は…?」
「体力はすでに回復していますが…、何かしらの原因でまだ…」
「そうか…」
「フィルラー。ウチらにできることがあったら何でも言ってな」
「できること言うても…、目覚めるまで安静にしておくしかおまへんな…」
「それは言われんでもわかることや…。別の方法で何かないか?」
「そう言われても…」
何か恩返しがしたい
国王たちも必死だ
誰かのためにここまで必死になったんは、家族以外では初めてや
せめて…、何か…
せやけど、妙案が浮かばへん…
娘の言う通り、目覚めるまで待ってろと言うだけなんか…?
そんなの…、無駄足やないか!
必ず恩を返す!
自分の心にそう決めたはずなのに…
目の前の事に必死すぎて、周りに集中できてない…
ここで焦ってしまっては、国王としての面目が立たへん
落ち着け…
落ち着くんや…
すぅ~~~~~~…
はぁ~~~~~~…
すぅ~~~~~~…
はぁ~~~~~~…
よし、だいぶ落ち着いた…
何をしようか改めて思考を巡らせたとき
ドアのノックがした
「お待たせ、お母さんを連れてきたよ」
声の主はスオン
その隣にいるのは、他でもない人間の姿になったドラゴンの長ことディルルだ
その姿はとても美しく、この場にいる誰もが釘付けになっていた
どうも、茂美坂 時治です
随時更新します




