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52時限目 少年、ルルの家に行く

ヘレンの部屋は301号室

彼女の希望とあって、エルトと隣同士になった


エルトはこのまま何も起こらないといいんだけど

と内心不安だった




2日後


エルトたちはヘレンと分かれ、いつも通りに授業を聞いた


その昼休み


イアンとクルムも一緒にということで、9人が円卓で昼食をとった


「聞いたぞ、エルト。ヘレンちゃんと一緒に住むって」

「正直俺も驚いてるよ…」

「もうお二人の耳にも届いてましたか」

「貴族の情報網を侮るなよ」


ニヤッと笑うイアンだが、直後に真剣な顔をした

「お前も薄々分かってるだろうが、ヘレンちゃんは俺たちとは違う学園にいる。ましてや、生徒会長という生徒の中の頂点にいる人だ。彼女を慕う男性陣も多いと聞く。俺たちの中で、ヘレンちゃんと関わりが深いのはエルトだからな]

横からクルムが話してくる

「俺も同じことを思ってた。用心とまでは言わないが、彼らが嫌がらせ的な行動をしてくるかもしれないから注意した方がいい」


この話だけでも、エルトは2人が過去に似たような経験があったからこそ言えることなんだと思っていた


「ご忠告ありがとうございます」

「私たちと誰か一人と一緒に行動することになってるから大丈夫だと思うわ」


エディールは2人は3日前の事情を知らないようなので、あえて話した


「なるほど。となると特に注意すべきはヘレンちゃんと一緒にいる時だな」

「そうですね…、まだ始まったばかりですから何とも言えません」

「それもそうか、とりあえずは様子見か」


9人はその後、何も言わないで昼食を食べていた


それを見ていた生徒たちは異様な雰囲気だとか近づきにくいと少々恐怖を感じていたという



翌日の昼休み


エルトはルルと食堂にいた

彼女が話したいことがあるそうだ


「珍しいな、君から話があるなんて」

「急な話でごめん。放課後、私の家に来てくれない?」


突然の誘いに少年は少し戸惑った


「どういうこと…?」

「うちの家はレストランをやっているんだ。両親もエルトにお礼がしたいっていつも言ってたから」

「それはこの前のジャイアント・ホークの件か?」


ルルは頷く

「お客さんの中にも常連客がいるから、その人たちにも話したら快く受け入れてくれたんだ」

「つまり、今日は貸し切りってことか」

「うん。それに、私のお父さんは冒険者をやってるんだ。今日は仕事を休んでレストランの手伝いをしてくれてるよ。きっと、大盤振る舞いするはず」


想像するだけでよだれが出そうだった


「分かった。じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔させてもらおうかな」

「ありがとう、エルト!!」




放課後


「それじゃ、僕はここで」

「姫様方、また屋敷で」

「ええ、気を付けてね」

「エルト、たらふく食って来い!!」


姫たちにもこの話をするや快諾


道中、ルルと一緒に歩く

彼女にとっても初めての事だった


そのせいか、ルルは何も話さずただ歩く

エルトは何か話そうかと思うも、彼女の様子を見てしばらくそっとしておこうとした


途中で市場の中を歩く


「「ここだったっけ…」」


ちょうど二人の声が重なった


それは、ルルがジャイアント・ホークに連れ去られた場所

スオンがいなければ、ルルは今頃食べられていたかもしれない

エルトは想像するだけでゾッとした


これは、奇跡ではなく重なり合った偶然によって助けることができたのだ


「声、かぶっちゃったね…」

「そうだな…」


少しだけ笑う

それだけで、二人の緊張はほぐれた




「ここがお母さんが経営しているレストランであり、私の家です」

それは、赤レンガを敷き詰めた建物だった


「『星の家』か。いい名前だね」

「さ、入って入って」


入る前からいい匂いがしているのは確かだった


「お母さん、エルトを連れてきたよ」

「あら、エルト君いらっしゃい!無理言ってごめんなさいね」


ルルの母で星の家の店長、ファル=オーテルジュが明るく出迎えた


「お前がエルトか!」

鍛えられた体、少し強面な男性がキッチンから出てきた

ルルの父親 グリア=オーテルジュだ


グリアはエルトの元へ駆け寄り、ギュッと彼の手を握った

「娘を助けてくれて、本当にありがとう!!今日は俺たちがお前に恩を返す番だ。たっぷりと食べて行ってくれ!!」

エルトは彼の顔を見ると、涙を流していた

外見に似合わず、涙もろいのだ



出てきた料理は、グラタンにサラダ、メインのステーキなどなど種類が豊富だった


「こんなにたくさん…。作るの大変だったでしょうに…」

「大丈夫よ、こういうのは慣れっこから」

「ファルの作る料理は絶品だぜ!俺が保証する!」

「まあ、あなたったら!ほめ上手なんだから!」

とグリアの肩を思いっきりたたいた


4人は乾杯をして食事を始めた


「おいしい!このステーキの肉汁が口の中で噛むたびに出てきてたまらない!!」

「フフッ、エルトの顔とても幸せそう」

「そうね、来てくれた甲斐があってよかった」



話はルルが襲撃された件に


「マスターから聞いたよ。お前、ドラゴンと一緒に娘をさらったジャイアント・ホークを仕留めたって」

「ええ」

「だが、ジャイアント・ホークの皮膚はものすごく硬く、Aランク冒険者である俺でも生半可な武器では通用しないのは経験済みだ。お前はどんな武器で仕留めたんだ?」


職業柄というべきか、気になっているようだ


エルトはその武器をグリアに見せた


「これって、鉄とミスリルを合成しているのか?」

「一瞬で材料を見抜きますか…」

「これでも20年以上冒険者をやってるからな。ミスリルは武器の耐久性と鋭利性を一気に上げるのにうってつけの素材だ。だが、希少な故に喉から手が出るほど欲しがる冒険者も少なくない。お前はミスリルをどうやって手に入れた?」

「すみません。それは守秘義務なために言えません…」

「そうか…。しかし、これでジャイアント・ホークを仕留めたというなら納得だ。その武器、大事にしろよ」


グリアはそれ以上の詮索はしなかった


それからは、学園の話などで盛り上がった



「ごちそうさまでした。本当においしかったです」

「そう言ってくれて嬉しいわ。またいつでも寄って頂戴」

「今度、面白い話聞かせてくれよ!」


二人は星の家を後にした


道中


「君の両親、すごく明るい人たちだったな。正直、羨ましいよ」

「エルトの両親はどんな人だったの?」

「う~ん…、あんまり覚えてないんだけど、一言で言えば真面目…だったかな」

「そっか…」


ルルはこれ以上の言葉をかけず、二人はほどよい間隔を保ったまま屋敷へと帰っていった

どうも、茂美坂 時治です

随時更新します

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