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45時限目 少年、絡まれる

「…ん」


エルトは目を覚ます


「…ここは」

「保健室ですよ」


声の主はラディール


少年は自分はベッドで寝てると気付いた


ゆっくりと体を起こし、姫の顔を見る


「…僕、どれくらい気を失ってました?」

「1時間ですね」


エルトは気づく


「あれ?皆さんは?」

辺りをきょろきょろしても見当たらない


「本当は私たちでエルトが目を覚ますまで待っていようと思っていたんですけど――――――」





遡ること1時間前


エルトが倒れて


「エルト!?どないしたんや!?」

「気を失っていますわね…」

「速く保健室に運ぼうぜ!」


姫たちはエルトを担ごうとするが


「今回はウチに面倒見させてぇな!」

「それは私も同じ気持ちですわ!」

「あたしだって!」


誰がエルトの面倒を見るのか言い争いにまで発展してしまった


「こんなことで騒ぐなんてあなたたちらしくないわね」

「全くです…」


バルムス姉妹は意外に冷静だった


「何やと!?あんたかて気にしとるやろ!?」

「フィルラー、落ち着きなさい。ここは公平にじゃんけんで決めるってのはどうかしら?」

「じゃんけん…?」

「いくら言い争っても時間の無駄よ。それだけは分かってほしいわ」


3人も自分たちの行動に気付き


「あんたの言う通りやな」

「じゃんけんなら負けませんわよ?」

「望むところだぜ」


「「「「「最初はグー、じゃんけんぽん!!」」」」」


数回のあいこの末、勝ったのはラディールだった





「そうだったんですか…」

「皆さんは悔しそうでしたが、私はエルトの面倒が見れると喜びましたけどね」


この人、かなり運がいい

それに、今更気付いたことだけど、若干サディストっぽくも感じる


「あの、もう大丈夫なので…」


エルトはガバッと起き上がろうとするが

「急に起き上がるのはかえって逆効果ですよ?ゆっくりと起き上がってください」


ラディールに注意され、言われたとおりにした




保険室を出て、姫たちと合流


姫たちはエルトの事を考えずに先走ってしまったことを謝った

少年は気にしないで下さいと慰めた


「エルト、とりあえずその物件を見るだけでもいいから一緒に行かない?」

エディールが誘い出す


「そうですね、お言葉に甘えて」


姫たちは小さくガッツポーズ


「でも、その前に市場に寄ってからでも構いませんか?」


何か買いたいものでもあるのでしょうかとラディールは考えたが、エルトは自分が住む家を見つけて、そこに過ごすことになったらオレイアスの土地で育てた野菜を市場へ卸すのがこれが最後になるかもしれないからその旨を伝えたいと言った


「なら、私たちは先に行ってて待ってるから」





放課後


エルトは姫たちと一旦別れて、市場へと向かった


その途中


「ちょっと、そこのあなた!」


後ろを振り返ると、腰に剣を携えた美少女が誰かを呼んでいた

人も多くいるので、エルトは多分人違いだと思い無視して歩き始めるが


「って、止まりなさいよ!!」


少女はエルトの腕をつかんだ


「えっと、僕に何か…?」

「あなた、リベリア魔道学園で一躍有名になったエルト=ファイザー君よね?」

「そうですけど…、あなたは?」


女性は一旦離れて


「失礼しました。私はウィリムベール騎士学校で生徒会長をしているヘレン=フェン=オストワイアーと申します」


ウィリムベール騎士学校


リベリア魔道学園とほぼ同時期に創設された学校で互いの校舎は目と鼻の先というほど近い


互いの生徒がどっちが優れているかの勝負といったいがみ合いが日常茶飯事に起きていることに両校のトップが頭を抱え、なるべくどちらとも会わないようにするのが暗黙の了解となっているらしい


そして、その学園の生徒会長を務めているこの女性


オストワイアー家は侯爵家に属する

いわば令嬢である


「それで、ヘレンさんは僕にどういったご用件でしょうか?」

「あなた、先日男爵家の別荘で生きた屍(アンデッド)をお気に入りの武器で殲滅したそうね」

「ええ、まあ…」

「どんな武器を使ったのか気になってたの。今、その武器持ってる?」


興味を示すヘレン

エルトもそれに応え、腰からお気に入り武器をヘレンに渡す


真ん中のボタンで両側から刃が出てくるところを見て、黄緑の髪の少女は驚いた


「こんな仕掛けになっているのね。これは誰かから譲り受けたの?」

「いえ、自分で作ったんです」

「作った!!?」


さらに驚きを隠せないヘレン


「…あなた、武器づくりの才能があるんじゃない?」


初めて言われた言葉だった


「でも、これがお気に入りってことは、他にも武器があるってことよね?それも持ってるの?」

「いえ、今日は持ってないんです。というか、扱いがとても難しく、滅多に使わないんです」

「どんな武器なの?」

「簡単に言えば、鎖につながった鎌ですかね…」


ヘレンはその武器を使う自分を妄想してみた


振り回すが、扱いに失敗し自分の体に刺さるイメージを想像してしまった


「怖いわ!そんな武器!」

「ですよね…」

「よく作ろうと思えたわね…」


途中、エルトはこう思った


もしかしてこの人、話題に乗っかって、盛り上がったところで僕をウィリムベール騎士学校に編入させようとしているんじゃ…

もしそうなら、きっぱりと断ろう


だが、ヘレンはそんな素振りを一切見せない

本当に武器だけを見たかったんだと確信した


「ありがとう、いいものを見させてもらったわ。長く引き留めてしまってごめんなさいね…」

「いえ…」

「また会いましょう…」


そう言って、ヘレンは本当にそのまま帰った


不思議な人だな

でも、あの人どこかで会ったようなそうでもないような…




「はぁ~~~~、やってしまったわ…」

ヘレンは家に着くなり、ベッドにダイブしてため息をついた


「やっと、彼と再会できたのに…、武器に集中して本題を忘れてしまってた…、我ながら情けないわ…」


少女はエルトと面識があるようだった

どうも、茂美坂 時治です

随時更新します

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