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35時限目 ルルたち、少年の力を知る

エルト、本日二度目のサプライズ


エディールにキスされていた


「ちょ、お姉さま!?」

「こんなとこで何しとんねん!?」


作業している姫たちも驚いていた


それでもエディールはエルトの腕にしがみつく


「ラディールの気持ちってこんな感じなのね…」

赤い顔を俯かせながらもボソッと話す


それからちょっとだけ言い合いになり、次の授業に遅れてしまい、6人は注意された




二日後


実技の授業が行われた


毎回遅刻して罰として見学だけだったエルトにとっては初めて参加する授業だ


当然、クラスメイトもエルトとの授業を楽しみにしていた


特にルルは


「エルト、私と手合わせしてくれる?」

と積極的に誘ってくる


他の女子も負けじと

「ずるい!抜け駆けはダメよ!」

「エルト君と組むのはこの私だよ!」


エルトをめぐっての小さな争いが起こっていた


そこへその少年が止めようとする


「みんな、僕と組んでくれようとしてるのはありがたいよ。でも、だからといって、言い争いは好ましくないな。そんなことして僕が喜ぶと思う?」


その言葉に皆が黙り込む


反省したのか、ごめんなさいと皆頭を下げた


結局、エルトと組むのはルルに決まった



実技の授業は実に単純

相手に向かって魔法を放つのみ


組むのはいいと言ったが、エルトの魔力は無しに等しい

しかし、補って余りある驚異的な力を持っていることも確か


どうすればいいと悩むルル


「ルル、君が得意な魔法を放ってみてよ」


エルトは魔法の行使を促す


ルルたちも、彼の力を目の当たりにして驚いたと姫たちが言っていたのを思い出す

どういうものか見てみたい


右手に魔力を込めて


「我が体に宿る水の魔力よ 弓となりて顕現せよ 水弓(アクアボウ)


顕現した弓を構えて、エルトに一擲集中させる


放った瞬間、エルトは矢を()()()()()()()

「すごい…、これが姫様が言ってた…」


実際に見てみると、ルルが思っている以上の力だった


他のクラスメイトも今の攻撃を見て


「なんだ今の!?あんな技初めて見るぞ!?」

「エルト君、すごい!」


これには担任のペリーヌも


「素晴らしい!どうやってそのかけ離れた人間業を習得したの?」

興味津々だった


「いえ、この力は生まれつきです…」

「生まれつき…」

「そんな人、聞いたことがないぞ…」


ここにいる全員、エルトが持つ不思議な力を見るのは初めて


だが、彼が暮らしていた村はもう滅びている

加えるなら、村に関する資料はほとんど残されていないのも事実


一体、エルトは何者なのか


謎を解こうにも解けない難問だ


暗いムードの中、エルトは話を続ける


「ルル、今の魔法だけど魔力が少し乱れてたよ」

「乱れてた…?」


魔力が乱れるなんて聞いたことがない

エルトは何を語るの?


「魔力というのは精神、つまり心の状態に影響されやすい。乱れてたということは、何かしらの不安や緊張などが関係しているよ」


ルルは矢を放つ前、本当に大丈夫なのかとどこか不安な気持ちがあった


「それに、弓の形や放った時の矢の形も少しいびつだったよ」


そんな細かいところまで見ていたなんて


…でも、相当な距離があったはず


もしかして、エルトの目は視力がよすぎるの?


そう考えたとき、こんな疑問が生まれた


「その魔力の乱れって、私たちにも見えるの?」

「うーん…、僕自身魔力がほとんどないから何とも言えないんだけど、誰か試しに魔法を放ってくれないか?」

「それなら、俺がやる」


一人の男子生徒が手をあげ


「我が体に宿る火の魔力よ 鞭となりて顕現せよ 炎の鞭(フレイム・ウィップ)


魔法を行使


だが


「見えない…」

「魔力()()()()が見えない…」


ルルたちはエルトの言葉に半信半疑だった


「なあ、エルト。今の俺の魔法はどう見えた?」


少年は続けて言う


「魔力に乱れはほとんどなかったよ」

「だろ?俺も今のはいいって思ってた」


男子生徒は嬉しそうだが


「でも、魔力量が多すぎたね。もし、あのまま放ち続けたら5秒も持たないよ」

「まじかよ!?俺は敢えて魔力を多めに使ったんだけどよ、それも見抜いてしまうなんてさすがエルトだな」


男子生徒の言葉ではっきりした


エルトは本当のことを言っていた


同時に彼の新たな力が発揮した



放課後


ルルは姫たちを食堂へと呼んだ


「どうしたの?私たちをここへ呼ぶなんて」

「もしかして、エルトの事で何か?」


ラディールはすぐに感づいた


「そのエルトの事で…」

「なんや、エルトがなんかやらかしたんか?」

「いえ、そうではなくて…、皆さんのお耳にも入れていただいた方がいいと思いまして」

「もったいぶらずに早く言ってくれないか?」


ルルは、実技の授業でエルトが魔力の乱れが見えるだの魔力量が見えるだのと自分たちではありえないような不思議な目を持っていることを話した


「そんな話、聞いたことねえな…」

「私もありませんわ…。そもそも、魔力なんて目に見えない存在なんですのよ?」

「にもかかわらず、エルトには見えるっちゅうんか…」


フィルラー、ジェミナー、アデリーヌはこのような情報は初めて聞いた


だが


「そんな不思議な力を持った主人公の物語を小さいころ読んだ記憶があります」

「私もあるわ。部屋のどこかに置いてあったと思う」


バルムス姉妹は心当たりがあった


だが、あくまでも小説なので書かれていることが事実かどうかは不確定


「もう一度読んでみますか」

「そうね」


それでも、姉妹はその物語を再度読もうと決意した

どうも、茂美坂 時治です

随時更新します

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